ニーダの黒石
寝落ち冷房で夏風邪ひきました。皆さんもお気を付けください
「さて・・・名前があれば聞こうか」
降伏したため海賊砦のに引っ立てられたオーガに対し尋問が開始される。
「黙秘する」
オーガにしては立派な態度である。まぁこの世界のオーガは立派なのかもしれない。どこまで通せるかは知らないが。
「その意気や良し。奈緒虎」
パンと手を叩くのと同時に長い金髪を頭のてっぺんでお団子状にまとめた若干のつり目の碧眼、笹穂状の耳をもつウッドエルフの菜緒虎が姿を現す。
そして同時にオーガの隣の床にポッカリと穴が開く。
「その穴には掃除のためのスライムが居てな。菜緒虎漬けて差し上げろ」
「はっ」
菜緒虎はオーガを縛っている縄を掴んで持ち上げるとそのまま穴の中にオーガを降ろす。
ぬぽっ
オーガが粘質的な何かに落とされる音がして・・・
「ぬぁおぉおぉうあっ」
なんとも色気のない悶え声が響く。
「強制はしないから、気が変わったら声をかけてくれ。菜緒虎。ドアホーを呼んでくれ」
「お呼びだとか」
刈り上げた黒髪に黒瞳。板海苔のような眉毛の130㎝ほどの背丈の髭もじゃ筋肉ダルマ、ドアホーが姿を現す。
「商人に聞く前にこれが何か解るかと、あとは鎧の進捗状況だな。追加注文を増やしてばかりで申し訳ないが」
「鎧の制作は順調です。それと」
ドアホーはおれの手からニーダを溶かす過程で生成された黒い石を受け取る。
「反転石ですな・・・呪いの類はないようです。力を解放した場合、属性が反転します」
「グッドがイービルにイービルがグッドに変化するのか?ニュートラルなおれにメリットがあるとは思えないのだが」
ドアホーから黒い属性石を返してもらう。
「この石で属性が変わることで種族そのものが変化するモンスターがいると聞いたことがあります」
ドアホー何気に面白そうな情報を持っているな・・・
となると悪魔系とエルフ系で実験する必要があるな。幸いというか石はあと五個ある。
「どういうモンスターが対象になるのか、そういう情報があれば喜んで買うのでよろしく頼む」
「承りました」
ドアホーは頭を下げて出ていく。
「気は変わったか?」
スライム漬けになっているオーガに声をかけるがオーガの目はまだ強い光を宿していた。
「菜緒虎。わたしは召喚陣でデーモンを召喚してくるので適当に心を折っておくように」
「はっ」
菜緒虎が軽く頭を下げるのを見ておれは砦の最上階にある魔法陣に向かう。
「マスター」
砦占領後に新設したリーブラの為の社を丹念に掃除していた緑髪ショートの娘ジャンヌが深々と頭を下げる。
「邪魔するぞ」
一言断ってから魔法陣に乗りデーモンを召喚する。本当はインプで実験するほうがいいのだろうがまぁ仕方がない。
「マスター。よろしく頼むぜ」
身長は150センチほど。肌の色は濃い藍色をしており背中には蝙蝠の羽。赤目に瞳の色は虹色。肩まで伸びた銀髪にピンと尖った耳。頭に子ヤギのような小さな角をもつ少年。デーモンがペコリと頭を下げる。
「早速だが」
ニーダから採取された黒い石をデーモンに投げ渡す。
「アイテムですか?」
「装備してみろ」
「はっ」
デーモンは恭しく頭を下げる。
<<黒石のスペシャルパワーを解放しますか>>
Yを選択する。
どろろろろろろろ。ドラムロールが鳴る。
ぼん
間抜けな音とともにデーモンが煙に包まれる。
<<デーモンが特殊進化し、アークエンジェルになりました>>
身長は170センチほど。肌の色は透き通ったような肌色をしており背中には天使の羽。金色の髪に瞳の色は青い色。
召喚したデーモンは少年だったはずだが胸鎧越しでもはっきりとわかる女性の胸に腰も括れている。属性や種族だけでなく性別までも反転しているようだ。
「御子よ。お側にお仕え出来ること、嬉しく思います」
アークエンジェルが優雅に頭を下げる。
「御子はよせ。マスターでいい」
「はっマスター」
ゆっくりと頭を上げるアークエンジェルの笑顔がまぶしい。
「マスターその方は?」
ジャンヌは目を大きく見開いたまま尋ねる。
「アークエンジェル・・・デーモンと対となる存在だな」
それを聞いたジャンヌはその場で深々と土下座する。
「レディ。頭を上げてください。わたくしは神の眷属ではありません。光の精霊です」
ジャンヌの心を読んだのかアークエンジェルはにっこりと笑ってジャンヌに頭を上げるよう促す。
天使というのは神からのメッセンジャーとかそういったものだと思っていたが、そうかそういえばこの世界に神という存在は既にいなかったな。
いるのは女神の名を冠してはいるがリーブラをふくめた三人の神の見習いだ。
「ついてこい」
アークエンジェルは頭を下げる。
評定所に戻るとオーガが床に這いつくばって土下座をしていた。
どうやら菜緒虎が心を折ることに成功したようだ。
「さて話を聞こうか」
「ははっ。この太史、知り得る限りのことをお話しします」
オーガは土下座したまま話し始める。
まず予想通りニーダ族を生贄の羊にした国内の引き締め。
これは最悪ニーダ族をギープ王国が主体となって滅亡させることも視野に入れている。
またそして少しでも我々がギープ王国に侵攻した場合は即座に軍を南部へと侵攻させる準備を整えていること。
その数は約三千。
「三千か・・・まぁ密集していればドラゴンのブレスで薙ぎ払えるし分散していれば簡単に食い破れるだろ」
「我が軍には広範囲の即死攻撃ができるものが何人かいますし大丈夫かと」
おれと菜緒虎の会話に太史は大きく目を開いてパクパクと口を開く。
「ギープ王国を欺くための偽情報かもしれないぞ?お前の証言が信じてもらえるかどうかは謎だがな。適当な所に放置してこい」
「はっ」
菜緒虎は小さく頭を下げると太史の首根っこを掴んで評定所を出ていく。
「ハンゾウ」
情報部門の長を呼ぶ。
「お呼びでしょうか?」
不意に天井から声がする。
天井を見ると仙人のような杖を持つ背の低い髭と眉毛が顔の大半を覆う作務衣姿の老人がぶら下がっていた。
すたっ
ハンゾウはほとんど音もたてず床へと降り立つ。
「予想通りだったな。予定通りギープ王国内での情報戦を展開するように」
「了解しました」
ハンゾウは小さく頭を下げると煙とともに姿を消す。
物語の忍者っぽくていい。
「おぅ」
アークエンジェルが感嘆の声をあげる。
次に緑っぽい金髪のハイエルフのお兄さんを呼び出す。
「お呼びでしょうか?」
「実験だ付き合え」
ニーダから採取された黒い石を緑っぽい金髪のハイエルフのお兄さんに投げ渡す。
「アイテムですか・・・如何様な効果が?」
緑っぽい金髪のハイエルフのお兄さんは訝しげな顔をする。
「属性、種族、性別が反転するかもしれないアイテムだ。ちなみにデーモンの少年がこうなった」
おれは後ろに控えていたアークエンジェルを見る。
「ほう。ちなみにマスターは私がどのような種族に・・・いえ失礼しました」
緑っぽい金髪のハイエルフのお兄さんはすぅっと目を細める。
<<黒石のスペシャルパワーを解放しますか>>
Yを選択する。
どろろろろろろろ。ドラムロールが鳴る。
ぼん
間抜けな音とともに緑っぽい金髪のハイエルフのお兄さんが煙に包まれる。
<<ハイエルフが特殊進化し、ダークエルフになりました>>
予想通りだハイエルフはダークエルフに・・・
そこには体格が激変し装備がぶかぶかになった緑っぽい銀髪に黄色い瞳。艶のある黒い肌のちびっ娘ダークエルフがいた。
「おおぅ。マスターの仰るとおり種族と性別とついでに年齢も変化したようでありますな。ただ和弓を筆頭に装備が使い物になりませんな」
ちびっ娘ダークエルフにぱっと笑う。
「迷惑をかけたな・・・これまでの功も併せヘウロパの名をやろう」
「おお、感謝いたしますな。名に恥じぬよう一層の忠誠を誓いますな」
ちびっ娘ダークエルフのヘウロパは頭を下げた。
☆ ☆ ☆
新規モンスター
名前 騎士
種族 人間
分類 人間
性別 男 女
性格 ニュートラル-ニュートラル
STR:25 INT:10 DEX:20 VIT:15 AGI:20 LUK :4
体力40/40魔力15/15
能力:精神統一(能力と体力が一時的に大きく向上する)
魔法:なし
特殊能力:軍馬の召喚
装備:ロングソード・ランス・全身鎧・大盾
備考:剣士が剣術・盾術に加え騎馬上戦闘の技術も修得した。
王侯貴族忠誠を誓い与えられる名誉職としての騎士とは違う。また、任意に軍馬を召喚することができる。
軍馬を使った突進による一撃は想像を絶する破壊力をもたらす。
剣士がレベル40になることで進化することが確認された。
※性格・能力値はレベル1のときの平均でありレベルによって変動します。
名前 アークエンジェル
種族 天使
分類 天使族
性別 男・女
性格 グッド-ロウ
STR:6 INT:10 DEX:8 VIT:9 AGI:5 LUK :3
体力15/15魔力9/9
能力:飛行(地形効果無視)
魔法ダメージ減少
魔法:雷槍(電)
特殊能力:畏怖(短時間対象相手の能力を下げる)
装備:短弓・胸鎧・短槍
備考:人に喜びを与えることに見出す光の精霊。身長は170センチほどで背中には白い鳥のような羽をもつ。
****をレベル**にまで育てることで進化することが確認された。
名前 ダークエルフ
種族 エルフ
分類 亜人間
性別 男・女
性格 イビル-ロウ
STR:18 INT:20 DEX:15 VIT:10 AGI:12 LUK :10
体力18/18魔力15/15
能力:夜間の命中率と回避率アップ。
飛行モンスターへの攻撃力増加
魔法:土嵐矢(土)
特殊能力:大地の恵み(2ターンに1度。周囲の味方の体力を回復させる)
装備:ショートソード・皮鎧・和弓
備考:エルフ族が神に背いて肌が黒くなったのがダークエルフという神話がある。
しかし今では遠い先祖が森と洞窟・昼と夜に生活圏を分けたあと生息環境に応じて容姿が変化したものだと考えられている。
弓の扱いに優れているのはハイエルフと同じであり飛行系モンスターにとっては天敵である。
ハイエルフに黒石を使用することで進化することが確認された。
※性格・能力値はレベル1のときの平均でありレベルによって変動します。
ありがとうございました




