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ワ国王との謁見

香良の縁切りを無事済ませたおれ達はワ国の神都キョートゥに来ていた。

城塞の大門前で岳田勝頼(たけだかつより)一行と合流したおれ達はワ国の支配者である百田一朗(ひゃくたいちろ)の城に到着する。

四角形の建物にピラミッド型の屋根を乗せた宝形造と呼ばれるる二層三階の建物に頭頂部には鳳凰の像が鎮座している二層三階の金色に輝く建物である。

「百田殿の本城は鹿苑寺か・・・」

そう日本でいうところの金閣寺である。

「ほぉソウキ殿はご存知でしたか」

「その程度の情報は仕入れていますよ」

とりあえず誤魔化しておく。というかこの世界でも鹿苑寺なんだ・・・

「ようこそソウキ殿。朕が百田一朗だ」

190近い長身に鍛えられた身体。なのに白粉に麿眉という肉があれば腹筋大崩壊な風貌の三十代前後の男が手を差し出してくる。

しかも朕とか言ってるよ・・・

「ソウキリュウイチと申します。この度はお招きいただきまして感謝いたします」

なるほどこのカッコはアレかとりあえず握手を返す。

「ふっ。どうやら騙せなかったようだな」

一郎はおれに聞こえるか聞こえないような声でつぶやき部屋の上座・・・畳で一段高い場所へと赴きどかっと腰を下ろす。

そのとき一瞬おれを見たのだがその目つきが鋭い。

「朕としては隣国であるソウキ殿とは末永く仲良くして欲しい。ところでソウキ殿は雪はご存知か?真っ白で綺麗なんだが降りすぎると大変なんだ」

意味ありげに一郎は笑う。なんだその突然の強引な話題展開は・・・ああ・・・何となくいいたい事が透けたぞ。

「わたしの故郷では雪が珍しく雪が降ると子供が庭を猛然とはしゃぎまわるんですよ」

「ほぉ。なるほどなるほど」

一郎は本当に愉快そうに笑う。どうやら当たりクジを引いたらしい。

西で鞍馬家が動いていたのなら東でも誰かが動いているということか?

ああ、そういえば百田に付き従って大陸に渡っていていま話にまったく出ていない家があったな…確か乾野健(いぬいのけん)の一族。

鞍馬家が西の守護代である岳田の家臣に収まっていたのなら乾野家か東の守護代である弐本家の家臣に収まってる可能性がある。

そして鞍馬家がギープ王国の陰謀に関わっていたように乾野家がギープ王国の陰謀に関わっている可能性・・・いや可能性ではなく確定か。

そしておそらく東ワ国から間者が入り込んでいるレベルにあるらしい。

「残念ながら昔話のレベルでわたしは実際に雪を見たことがないのです。一度は見てみたいですな雪」

「はっはっは。なるほどなるほど。朕に時間があれば案内して差し上げるのじゃが、いや残念残念」

一郎の口調はものすごく不自然である。大根なんて目じゃないレベルだ。

「そういえば、ソウキ殿は黒糸威二枚胴具足(くろいとおどしにまいどうぐそく)の複製技術をお持ちとか?よければ朕にも譲ってはもらえないか?」

おれがキッと勝頼を見ると勝頼はサッと視線を逸らす。

勝頼のヤツ耐え切れずゲロっか自慢して漏らしたな…

「判りました。手配しておきます」

「そうかそうか楽しみにしているぞよ」

現物があるのだからそちらでコピーすれば?とは言わなかった。

おそらく取り引きにかこつけて今後も密に連絡しましょうということなのだろう。

一郎はパンパンと手を叩く。

すっと部屋を仕切っていた襖が開き、紅い髪に丸い眼鏡をかけた黒い瞳の如何にも小姓っぽい少年が手にお盆を持って現れる。お盆には紫色の布に包まれた何かが置かれている。

「鎧の手付け金を受け取ってくれ」

女中が紫色の布をほどく。現れたのは帯で封印された小判の束がひとつ。

おれは布に3つの桃を意匠化した百田家の家紋があるのを確認してから小判をふたたび布で包み懐に入れる。

「ソウキ殿。岳田家家臣の香坂雅忠(こうさかまさただ)と当家家臣の伊志田三成(いしだみつなり)を外交官として受け入れて欲しい」

小判を運んできた小姓が頭を下げる。なるほど彼が伊志田三成か。

「承りました」

「これで謁見は終わりたい。本日は楽しかった」

おれの返事を待って一郎は宣言する。

一言でおれと岳田は深く頭を下げた。


「さて香坂殿。都で一番の武器屋を紹介してはもらえないだろうか?」

「はぁ…構いませんが・・・」

ということで雅の案内でやって来たのがこの丙州屋だった。

刀や槍。胴鎧に派手な飾りの兜。ワ国は永く大きな戦いが無かったため都の武器屋には実用より装飾に力を入れていたものが多かった。

「鞘が螺鈿細工の塊とか」

虹色光沢でキラキラ輝く刀を手に取りそっと抜いてみる。

刀身の柄の近くに彫られた憤怒の仁王像に天に昇る炎を現している刃紋。

切れ味はイイのだろうが耐久性は低そうだ。

「お館さま」

金髪ウッドエルフの菜緒虎が目をキラキラさせながら雲の上に愛という字を前立にあしらった兜を持ってくる。

戦国武将の直江兼続の兜だな・・・愛の文字はキンキラの黄金で雲は白金の明るい白と中々に極彩色な置物である。

「マスター」

スケルトンのアルテミスが豪華絢爛な極楽鳥が刺繍された金襴織物の法衣を持ってくる。

なんだろう女の子している・・・ような気がする。

「うん?」

ふと店の隅っこにぽつんと寂しそうに置かれている一振りの剣を見つける。

肉厚の両刃の直剣で握りまで一体化したかなり無骨な剣である。そうこれは・・・

「店主。これはもしかして太古の儀式用剣のレプリカか?」

狐っぽい顔の店主がホクホク顔で揉み手をしながら飛んでくるが、剣を見るなりげんなりとなる。

「天叢雲剣です。レプリカだとは思いますが無名の古墳からの出土品なので」

なるほど形状から天叢雲剣と推測されるが出土品なのでレプリカと断定するのもなんだしという商品か。

「なぜか人気が無く他の出土品は売れたのですがこれだけ売れ残りまして」

なるほど値札が何度か雑に書き換えられているな・・・しかしこの値段なら好事家が買っても不思議ではないのだが・・・

「マスターこれこれ」

銀髪ハイエルフのリペッチオが黒地に紅い梅の花を散らした漆塗りの絶対実戦に使えない豪奢な和弓を持ってくる。

明らかに珍品を競って持ってきてるだろ。

「よし。武器組はネタ武器を一点だけ認めるぞ」

おおっと収納した者も含め武器組の配下全員から思念が返ってきた。


「こちらが請求書になります」

狐っぽい顔の店主が大福帳を差し出す。

「うわ、話は聞いております。ワ国貨幣以外にも大陸貨幣や大陸の逸品など色々とよろしくお願い出来ればと」

なるほど今後ともお客様以上の取り引きをヨロシクどうぞという訳か・・・

「今後ともよろしく」

封を切ってない小判を渡しながら店主とがっちり握手すると店主は早速大福帳に何やら書き込む。

「お館さま・・・」

下忍カンゾウが頭を下げて小さく折りたたまれて封をされた紙を差し出す。

海賊の赤海入道政康(せきかいにゅうどうまさやす)の拠点を発見。

ギープ王国で張緋が逮捕され死刑判決。劉美と関翅がこのことに抗議して故郷に蟄居。

「カンゾウ。手紙をしたためる。ギープ王国の劉美の元に飛んでもらう事になるか」

「はっ」

「だがその前に赤海入道政康の拠点占領だな・・・うまくいけばワ国までの距離が大きく短縮できるかもしれない」

ワ国もそうだがギープ王国も大波乱の予感である・・・

ありがとうございます

ブックマークされた方が増えました御礼申し上げます

1話挟んでギープ王国編の予定です

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