御前試合 その3
ごめんなさい。八男って、それはないでしょう!にハマっていました
つぎは…たぶん閑話休題「七夕記念。星に願いを」だと思います
「無茶をしないでください」
緑髪ショートの女僧侶がハイエルフのお姉さんの焼けただれた手に手をかざす。
「我が女神の慈悲を回復」
ハイエルフのお姉さんの手が淡い光に包まれる。
「うむ。ありかとう」
治療されて元通りになった手をぐっぱっしながらハイエルフのお姉さんはにかっと笑う。
<<僧侶のレベルが上がり進化の条件を満たしました>>
<<進化しますか?>>
Yを選ぶ。
しゃん
腰に吊っていた鉾鈴が涼しい音を鳴らし女僧侶の身体が光りに包まれる。
光りが消えるとそれまで身を包んでいた巫女服の袴の色が明るい赤色から濃い赤色に変化した以外は以前のように胸当てに鉢金、籠手。
腰には鉾鈴といういでたちの緑髪ショートの女性が立っていた。
<<僧侶が祓魔士に進化しました>>
祓魔士ねぇ…
「では大将を前に」
鞍馬香良が声高らかに告げる。
「菜緒虎」
「御意」
「香坂雅」
「御意」
二人が対峙して二人同時に深く頭を下げる。。
「ひとつ聞いても宜しいでしょうか?」
「なんでしょうか香坂殿」
菜緒虎は香良に合図を出さないよう視線を送ってから尋ねる。
「あの回復術を行使された方がぴかーって光って雰囲気が変わったような気がするのですが…」
香坂は突然光って雰囲気が変わった女僧侶改め祓魔士を見ながら訪ねる。
「ああ、あれですか…あれはお館さまが言うには進化というものらしい」
「進化?」
「生物的に上位種…そうですね、我が軍では犬人がワーウルフになったような変化が起きます」
香坂の視線がウキウキと楽しそうにしているワーウルフに向かう。
犬と狼が遠い先祖と知っていても犬人がワーウルフに進化と言われても信じられないかもしれない。
「ちなみに某もここに来る途中に海賊に襲撃され、撃退した際に足軽から侍大将になりました」
香坂の顔が真っ青になり滝のような汗を流しながら菜緒虎の顔をそして全身をみる。
ぎりぎりと頸が勝頼の方に顔を向けると、勝頼は右手の親指を立ててそのまま下に向ける。
香坂の顔色が青から白になる。菜緒虎が進化したという報告書は最近過ぎて岳田家には上がっていなかったのだろう。
「あ、あの宜しいですか?」
二人のやりとりを聞いていた香良が恐る恐る聞いてくる。
「進化については、後日詳しく説明しましょう。では」
菜緒虎は同田貫に手を掛け体勢を低く沈める。
「あわわ」
顔色が回復しないまま香坂は慌てて樫の木を構える。
「でははじめ」
香良が大きく手を振り下ろす。
すっ
菜緒虎が一歩踏み込むと香坂は一歩下がる。
「ていやっ」
一転。香坂が樫の木を大きく振りおろす。
じゃらり
樫の木の先端から中間にかけて鎖と棘の付いた分銅が飛び出して菜緒虎に襲いかかる。
仕込み杖ならぬ仕込みフレイルか?
キン
鯉口を切る音が響く。
最初から菜緒虎に香坂の攻撃を避けるつもりは無かった。
樫の木から飛び出した鎖と分銅は僅かに樫の木の先端を付けたまま菜緒虎のはるか後方へと飛んでいく。
「わ、わたしの乳切木がちぎれた!」
駄洒落か!
ちゃ
菜緒虎の姿が一瞬ぶれ香坂の後ろにまで駆け抜けていた。
きん
「ええっと?」
「大変なことになるよ?」
少し振り振り返り菜緒虎は苦笑いする。
ということはあれですか?居合お約束の展開ですか?
ぴっ
ぴぴぴぴぴひっ
香坂の胴鎧に細かい筋が走る。
ばらら
たちまちのうちに香坂は生まれたままの姿になる。
おお、意外に慎ましいち、げぇふんげぇふん。
「ひゃぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ」
実に乙女らしい悲鳴をあげながらあっという間に近くの低木の影へと駆けこむ。
「勝者、菜緒虎!」
香良が宣言する。
「いやいや流石ですな」
勝頼がぱんぱんと拍手をしながらこちらにやってくる。
「お眼鏡にかかりましたか?」
「報告書に書かれていても本当にドラゴンを召喚されてはね…詰みですよ」
ぽんぽんとメッスィングドラゴンの身体を触りながら勝頼は笑った。
おれ達はいま鞍馬家に唯一残された百田家領にある所領であるイーガにある鞍馬家の菩提寺である初月寺に向かう途上にあった。
道案内として同行しているのは…
「それで進化とは何ですか?」
香坂が尋ねる。手に筆と大福帳を持っているのがなんだか可笑しい。
「進化とは…」
モンスターが戦闘やスキルを使うと経験値というものが溜まる。
経験値をどれだけ溜めたのか?という目安がレベル。
このレベルが一定の数字以上になって能力を満たせば上位モンスターへ進化するという事を説明する。
「剣術や杖術を教える師匠が弟子の技の習熟度に応じて評価して師範代だ師範だと言えばいいかな?」
「なるほど…」
香坂は頷いて大福帳に書き込む。
「ところで香坂殿は本職は学者とか研究者なのかね?」
香坂は大きく頷く。文武両道というやつか。
「あと平癒…ええっと回復の威力が高かったようですね?個人の資質ですか?」
「信仰してる神様の力だといったハズだが?」
「ああそう言えば…ちなみに、いえリーブラ様でしたね。異教徒でも改宗すれば恩恵を受けられますか?」
「それは解らない」
再び香坂は大きく頷いて大福帳に書き込む。
「ソウキ様の軍団に所属すれば目に見えた進化は可能ですか?」
そう問われて考える。
我が軍で召喚に因らない配下で主力になっているのはクワトロ・トラ美・香良の三人。そういえばこの三人はまだ進化していないな…優先事項だ。
「ご指摘ありがとう。こちらでも調べてみるよ」
「そうなのですか…ではこちらからも研究のための人材を派遣させてください。あ、そろそろ初月寺の門前町ですね」
香坂は馬車の車窓から見た風景でそれと気付いたらしい。間もなく目的の場所に到着することを告げるのであった。
☆ ☆ ☆
モンスター図鑑
名前 祓魔士
種族 人間
分類 人間
性別 男 女
性格 グッド-ロウ
STR:5 INT:10 DEX:8 VIT:6 AGI:8 LUK :10
体力16/16 魔力9/9
能力:なし
魔法:中回復(指定する個体の体力を中回復する)
特殊能力:死者浄化(一定の確率で指定する45度の範囲内のアンデットを消滅させる)
悪魔退散(一定の確率で種族または分類が悪魔の生物一体を逃走させる)
装備:鎚矛・硬皮鎧・スモールシールド
備考:神への信仰が認められ回復という奇跡と死者に安らぎを与え悪魔の動きを封じることが出来る。
僧侶がレベル30になることで進化することが確認された。
※性格・能力値はレベル1のときの平均でありレベルによって変動します。
ありがとうございました




