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ワ寇襲来 その1

「初めまして。ワタクシ、ワ国の商人で豊後国文左衛門(ぶんごのくにぶんざえもん)と申します」

手を差し出したワ国の商人におれは笑いを堪えるのに必死だった。

信楽焼きの狸であるムーゲの潮焼けした色違いとか反則過ぎるだろ・・・

「ソウキと申します」

どちらかともなく手を差し出してガシッと握手する。

おお、タイミングバッチリだな。

「船が欲しい」

「話は聞いております。船員は如何しましょう?我々の船でも総勢二百人の船員がおりますが」

結構人数が要るんだな・・・

「最低でも何人必要か?」

「操舵士と航海士・・・艦長に水先案内人。艦長に従う船員が20名は必要ですね」

「では航海士を探しておいてくれ他はアテがある」

船の動力と海底の視界は皇帝烏賊(エンペラースクウィッド)が担当する。

船員はギープとの海戦で捕虜になり配下になった犬人(わんこ)が仲間を募ってくれることになっている。

ただ航海士はアテがなかった。(ロック)鳥で広大な視界が確保できるがそれに頼るには効率が悪い。

「では航海士を手配いたしましょう。他にありますか?」

「それは追々話そう」

ブンゴノクニの顔目が一瞬点になる。そして意味を正しく理解する。

「旅費は勉強させてもらいます」

ブンゴノクニはベコリと頭を下げる。話が早くて助かるな。

「翌朝出港となります」

「了解した」


明り取り用の窓を見るまでもなく体感で船足が落ちたのが解った。

やがて扉がノックされる。

「すみません襲撃です。多少騒がしくなりますがご了解願います」

ブンザエモンは申し訳なさそうに頭を下げる。

「手を貸そうか?」

「いえ、お客さまの手を煩わせるわけにはまいりません」

少々大げさにブンザエモンは頭を振る。

「そうか?で、敵はまたニーダ族か?」

「いえ・・・ワ寇です」

ワ寇?そういえば前期倭寇は日本人がやっていたんだっけ?

「判った。では手助けが欲しかったらいつでも言ってくれ」

「はい」

ブンザエモンは深々と頭を下げる。

ブンザエモンが退室した後、明り取り用の窓まで近づいて、召喚を試みる。

うん。船外に海中に召喚できるようだ・・・

早速、皇帝烏賊(エンペラースクウィッド)5匹と巨大な古代鮫メガロドン5匹を召喚して偵察用の一体の皇帝烏賊(エンペラースクウィッド)以外を海底に臥せる。

これで船に致命的な攻撃は阻止できるだろう。お手並み拝見だ。

敵のワ寇はこちらの朱印船の同型艦が3隻。

スルスルと相手側の船から旗があがる。

黒字に白の髑髏のエンブレム。海賊か!いや海賊か・・・

いやいやツッコミ入れるところが違うだろ。所属誇示のエンブレムが骸骨とか西洋か?

さて相手は商船を襲う海賊か・・・船を接舷させて白兵戦を仕掛け物理的に制圧して宝や奴隷になりそうな人間を拉致して余分なのは海の底といったところか・・・

「マスター進言。接近スル2番目ノ船引キ離ソウ」

偵察任務の皇帝烏賊(エンペラースクウィッド)が思念を送ってくる。

「許可する」

応と海底にいた2体の皇帝烏賊(エンペラースクウィッド)が浮上してくる。

2体の皇帝烏賊(エンペラースクウィッド)は朱印船の船底に触手を伸ばし吸盤を吸いつけていく。

巨大な烏賊にぶら下がられて2番目の船足がガクンと落ちそのまま戦線を離脱する。

果たしてこの横槍にブンザエモンは気づいただろうか・・・

さらに斬り込み隊として長い金髪を頭のてっぺんでお団子状にまとめた若干のつり目の碧眼、笹穂状の耳のウッドエルフの菜緒虎とロープ姿のスケルトンのアルテミスを召喚する。

「そのときが来たら遠慮はいらない。好きにしろ」

「御意」

「承りました」

二人は深々と頭を下げる。

ドン

船体が大きく揺れる。

接舷されたか?

「如何シマショウ?マスター」

再び皇帝烏賊(エンペラースクウィッド)の思念が来る。

「3隻目はどうしている」

「接近シテイマス」

接舷完了で一気に乗り込む算段か・・・

「どうするかな?」

「お館様。これ以上は相手のメンツを気にする必要はないかと・・・」

「菜緒虎に同意しますマスター」

菜緒虎とアルテミスの意見が一致する。

船倉まで降りてこられるのは不利か。

「3隻目はそのまま鹵獲しろ。2隻目は見せしめだ沈めてしまえ。では反撃と行こうか」

了と思念が返ってくる。

こぽっ

5匹のメガロドンが海底から上がってくる。

例のBGMが鳴り響く・・・あくまでも脳内だが。

ぬぅっと背びれが海面に突き出る。

海賊船の方でもそれに気が付いたようだ。しかし対応は取っていない。まぁ見えてる範囲では全体の大きさが見えていないから当然か・・・

あ、指さして慌ててどこかに行った。

少しして銛を持った人間が何人か現れる。

数本の銛が一斉に海面へと投げ込まれるが、海面に浮かび上がってきたメガロドンの巨体には一本の銛も刺さってはいなかった。

ぬぅ。ぬぅ。ぬぅ。ぬぅ。

続けて浮かび上がる4本の背びれ。

海賊船の船員が獰猛なハンターの動きが統率されたものだと気付いたときには先頭のメガロドンの鼻っ面が海面から浮かび上がっていた。

ぐるん。メガロドンの黒い目が白く反転する。

体長15メートルに達するメガロドンの巨大な咢が船腹に喰らいつく。

ぎしゃがばん

木の砕ける船の悲鳴があがりこちらに乗り込むべく甲板にいた船員がバラバラと海に落ちる。

浮きのように漂っていた人間が魚が釣れた時のような動作で沈む。

じゅわりと海面が血に染まり、バラバラになった死体が海面に浮かんでくる。

そうそう。丸のみでは相手に対する心理的効果がないからな。

そうこうしているうちに甲板へとたどり着く。

既に甲板では海賊と商船の船員同士の戦いが繰り広げられていた。

お、魔法陣があるぞ・・・

階段を昇りきったところに召喚のための魔法陣があるのを見て笑う。

召喚の魔法陣がどういう理屈で設置されるのかイマイチ判らなかったが、気にするようなモノでもなかったので素直に魔法陣に乗って新規召喚を選ぶ。

「こ、これはスケルトン海賊」

これまたご都合主義・・・いや海域由来のモンスターか。

「これはソウキ様」

こちらを見つけたらしいブンザエモンがサーベルを片手に駆け寄ってくる。

なんとこの信楽焼きのタヌキは商人最前線に先頭に立って戦う戦士なのか!

ざわり・・・明らかに周りの空気が変わる。

明らかに敵も味方もこちらを見ている。ウッドエルフとローブ着たスケルトンがいきなり出現したらそうなるか・・・

「助太刀しよう・・・」

ブンザエモンが何かを言いだす前に3体のスレルトン海賊を召喚する。

出現したのは頭に頭巾、片手に三日月剣(シャムシール)をかまえたスケルトン。

しかしスケルトンの分岐になかったのはどういう理由なんだろうか?

とりあえず後回しだ。

「排除」

命令と同時に菜緒虎が同田貫を抜刀し走る。

「はっ」

海賊の三日月剣(シャムシール)を躱して同田貫が跳ねる。

どっ

鈍い音と共に海賊の腕が甲板に転がる。

ことさら大きな悲鳴が上がる。

スケルトン海賊がその声に反応して倒れた海賊に殺到する。

どかかどかか

突き立てられる三日月剣(シャムシール)

ぎぎきっ

何かを確認するかのように倒れた海賊を見ていたスケルトン海賊がバネ仕掛けの人形みたいな動きで周りを見回したのち散開する。

んんん?本当にスケルトンかあれ?何か違和感がある。

スケルトン海賊が一直線にならんで一人の海賊に突っ込んでいく。

先頭のスケルトン海賊がすっと沈んで海賊の足めがけて三日月剣(シャムシール)を繰り出す。

慌てて後ろに下がる海賊。しかし視線を切ったのを見透かしたように先頭のスレルトン海賊の背中を踏み台にして2番目のスケルトン海賊が刺突で突っ込む。

「俺を踏み台・・・違うか」

しかし次の瞬間、3番目のスケルトン海賊が1番目2番目のスケルトン海賊を踏み台にしてジャンプしていた。

ざん、どかっ

海賊の胸と頭に三日月剣(シャムシール)がめり込む。

曲芸過ぎる・・・

「はぁぁぁ」

アルテミスが唸り声をあげ黒い霧のようなものが吹き出す。久しぶりに見る嫉妬の波動。霧の直撃した海賊の身体がビクンと震え動かなくなる。

<<スケルトン賢者のレベルが上がり進化の条件を満たしました>>

<<進化しますか?>>

おお、アイテムによる特殊進化のモンスターも進化するんだ。

Yを選ぶ。

<<スケルトン賢者がリッチに進化しました>>

え?リッチって魔法使い系アンデットって魔法使い系・・・って魔法使い系は悪霊公(イビルデューク)か・・・

からら

アルテミスが持っている杖の先端にある圧縮された雄山羊の頭蓋骨がカラカラと鳴る。

「原始の(ダークネスオブプリミティブ)

かつん

アルテミスの杖が甲板を叩くと雄山羊の頭蓋骨の眼窩から黒い光が八方に放たれる。

がぁ

黒い光の直撃を受けた海賊の何人かが胸を掻き毟って倒れる。

抵抗に失敗した人間を即死させる広範囲攻撃魔法か・・・

「はっ」

菜緒虎の咆哮と同時に繰り出された同田貫が海賊の頸をはねる。

返す刀で背後に迫っていた海賊の腹を払って斬る。海賊は鮮血と内臓が噴出してこと切れる。

「まさかこの俺が引きずり出されるとはなぁ」

身長は2メートル弱。剃り上げたであろう禿頭。頭から顔面にかけて彫られた入れ墨。

日に焼けた筋骨隆々の上半身。珠の大きさが30センチの数珠を首から下げている。

ボロボロのズボンを腰のところで荒縄で縛り、肩には2メートル近くあるトゲトゲの金棒が担がれていた。

「我は赤海入道政康(せきかいにゅうどうまさやす)なりイザ尋常に勝負」

「ソウキ軍の菜緒虎いざ参る」

菜緒虎は同田貫を正眼に構えた。


新モンスター

名前 スケルトン海賊

種族 ゴーレム

分類 ゴーレム

性別 不明

性格 ニュートラル-ロウ

STR:5 INT:1 DEX:8 VIT:8 AGI:6 LUK :1 

体力12/12魔力1/1

能力:状態異常以外の攻撃ダメージ低下

状態異常の無効化

魔法:なし

特殊能力:なし

装備:頭巾、三日月剣(シャムシール)

備考:スケルトンはその弱さから雑魚モンスターという認識がある。

スケルトン海賊。正確にはボーンゴーレムはその常識を逆手に取って骨を材料にして作られた魔法生物(ゴーレム)

スケルトンと勘違いした冒険者は命という対価を払わされることになる。

スケルトン海賊はその外見から操船技術に優れている。

※性格・能力値はレベル1のときの平均でありレベルによって変動します。


名前 リッチ

種族 スケルトン

分類 アンデット

性別 不明

性格 イビル-ロウ

STR:2 INT:15 DEX:4 VIT:4 AGI:5 LUK :8 

体力5/5魔力14/14

能力:リバース(一撃死しない限り攻撃後の体力全回復)

状態異常以外のダメージ軽減

状態異常系ダメージ無効化

魔法:原始の闇(範囲内の敵を低確率で即死させる)

特殊能力:なし

装備:ローブ・雄山羊の杖

備考:リッチは魔術や神術の深淵を覗いた者が行きつく先の一つだと言われる。

高レベルの魔導士・僧侶が秘術やアイテムによって転生するか

ユニークモンスタースケルトン賢者をレベル50にまで育てることで進化することが確認された。

※性格・能力値はレベル1のときの平均でありレベルによって変動します。


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