交渉
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港湾都市ジャンの領主マーケル・ドン・ジャクスン男爵からギープ王国からの使者が来たという連絡があった。
すぐさま張緋とススキツネを呼び出す。
「そうか」
虎人間の張緋がぞりぞりと下アゴを撫でながらつぶやく。
ちなみに既に二人はい拘束はされていない。
一度逃げ出そうとして6人のドラゴンメイドに取り囲まれてボコボコにされたのが効いたのか大人しくしていたからだ。
「一応聞いておくが、捕まって1週間。本国の対応としては早い方かね?」
「微妙なところです」
真っ黒な狐人間のススキツネが苦笑いで答える。
こちらとしてはこの二人をギープ王国に送り返してワ国へ赴き軍事同盟締結の段取りをつけたいのだ。
「立場上は拘束してジャンにお連れした方がいいのかな?将軍」
「そうだな。そうしてくれ」
張緋の了承を得たのでパチンと指を鳴らす。
するとどこからともなく赤い髪のドラゴンメイドが姿を現し二人を手際よく縛り上げていく。
ドラゴンメイドの隠密性が上ってるな・・・あ、ススキツネが前世紀に酔っぱらいお父さんの必需品である折詰みたいになった。
「では」
張緋とススキツネがドラゴンメイドによってキリキリと引っ立てられていった。
「この度は・・・」
部屋の中にいた男が恭しく手を差し出してくる。
年のころは50代後半。頭頂部はかなり寂しく髪の色は黒から銀色に変わっているのが解る配色。
目は猫のように上がっていて鼻は鷲鼻。鍛えられた体は戦士として長く鍛えられていることが分かる。
男の名前はマーケル・ドン・ジャクスン。マッサチン国から男爵位を授かり港湾都市ジャンを統治する有力者である。
「今回のギープ王国との骨折り感謝します。ジャクスン閣下」
こちらも手を差し出し握手する。
「いえいえこちらとしても頂けるものは頂いてますので」
「願わくばジャクスン閣下とは個人の繋がりを確保しておきたいところですなぁ」
含みのある言い方にマーケルは含みのある笑いで返す。
多分含みの部分を正確に理解したらしい。
パチンと指を鳴らすと赤い髪のドラゴンメイドが拘束した張緋とススキツネを連れて現れる。
「では参りましょう」
マーケルに案内されて隣室へと向かう。
隣室には左にドラゴンバトラー、兎人間だよな真ん中の人はチャイナ服バニーガールっぽいが・・・そして右に人間の見るからに文官な人がいた。
「この度は義弟がご迷惑をお掛けしました。長姉としてこの劉美深くお詫び申し上げます」
拳包礼で真ん中の兎人間の劉美・・・どうやら声からすると女性らしい人物が頭を下げる。
「ソウキ殿を海賊と間違えて攻撃など次兄としてこの関翅、末弟の不始末をお詫びします」
拳包礼でドラゴンバトラーは頭を下げる。このドラゴンバトラーは関翅というのか・・・
異種族で姉弟を名乗ってるってことは義姉弟の契りというやつかな?
「桃園結義というヤツですか」
「ほうぉ?ソウキ殿は我々のことをご存知で?」
劉美がニッコリ笑う。目は笑ってないけど・・・
「いえ、私の故国にそういう昔話がありましてね、まさか全く同じなんですか?」
「そうなのですか。いやこれは重ね重ねすみません」
関翅がにこやかにカットインしてくる。
ああ何となく性格透けたな・・・煽れば情報をポロリする。関翅さん苦労してるだろうなぁ。
「失礼。交渉を済ませましょう」
文官な人がゴホンと咳払いする。
「拘束を解いてさしあげろ」
ドラゴンメイドは静かに頭を下げると張緋とススキツネの拘束を解く。
「すまねぇ美姉ぇ翅兄ぃ」
張緋はしおらしく頭を下げる。
「ではこちらを・・・」
文官が革袋を二つ机の上に置く。
おお、最近用意したから何となくわかるぞ・・・ほぼ貨幣200枚コースだ。
吹っかけたなマーケル閣下。
「不幸な事故の回避のためにも改めて席を設けたいところですね」
「了承しました。ジャクスン閣下にはまた骨を折って頂くことになるでしょうな」
劉美とおれとは握手を交わす。
とりあえずワ国に行くぐらいの時間は稼げたようだ。
「では失礼します。ジャクスン閣下もありがとうございました」
ギープ王国のメンバーは全員拳包礼で礼をすると部屋を出て行った。
「さて」
革袋の一つを取り上げ中身を確認する・・・やはり金貨でした。
「またお願いしますよ」
そのまま取り上げた革袋だけを懐に納めるとマーケルは満面の笑みを浮かべる。
「承りました」
このオヤジ結構なタヌキだ・・・
「ようこそいらっしゃいました」
タヌキ。そうどこから見ても信楽焼きのタヌキと言って差し支えない容姿のムーゲがぺこりと頭を下げる。
「大型船が欲しい」
「ワ国にでも行かれますか?」
いきなりの切り出しなのにムーゲには即座に用途を見抜かれる。
「ギープ王国ともワ国とも違う設計思想の船が欲しいがとりあえずはワ国の船が欲しいな中古でいい」
「ワ国というとご朱印船ですね・・・今夕ワ国から船が来るので当たってみましょう。しかしギープ王国ともワ国とも違う設計思想の船というのは興味がありますね」
タヌキもといムーゲの目が光る。残念だが知ってる程度で設計図とか引けない・・・
「そうか、ならまた来よう。交渉したいこともあるからな」
「承りました。ではその時に依頼のあった情報の最新版を提供できるよう準備いたします」
「では後ほど」
ムーゲの店を後にしてそのまま港湾都市ジャンを出る。目指すはネーゼの村。
「こ、これはようこそいらっしゃいました」
転がるようにネーゼが出てきた。
ネーゼ痩せた?
「事前に連絡していただければ」
「村に用があったわけではないからな」
言いたいことの意味を察したらしくネーゼの身が小さくなる。
「で、依頼したものはジャイアントの防具はどれぐらい進捗したのかね?」
「はっ、あとは装飾を・・・」
「飾るつもりはないのだから今すぐ持ってこい」
「は、ははっ」
ネーゼは転がるように村に入っていく。
ネーゼが戻ってくる前に悪韋とトラ美を召喚する。
悪韋は体長4メートルを超える黒髪黒瞳の人型のジャイアントである。人間族をそのままスケールアップした感じてあり醜悪な感じはしない。
一方トラ美は猫人間である。身長は約150センチ。前半分は人間で後ろ半分は猫。毛並みは茶虎。耳は猫耳。お尻には尻尾が揺れている。
乳がかなりデカい。
「用事があるなら好きにしていいぞ」
何故召喚されたのか理解してなくて頭に?をたくさん浮かべているトラ美にそう声を掛ける。
「ありがとうございますにゃ」
猫耳をピクピクさせながらトラ美は村へと入っていく。
「おれはどうして?」
名前を付けた頃よりかなり流暢な言葉で悪韋は尋ねてくる。
劇的ではないにせよ名付けによる良い影響は出ているように感じる。
「悪韋の鎧を注文していた。装飾が出来てないとかいうからすぐに持って来いと命じたところだ」
「感謝します」
右手の拳を左胸に当てて悪韋は頭を下げる。
「お待たせしました」
ネーゼが孫のドテと一緒に大きな箱を持って戻ってくる。
悪韋に目で合図をすると悪韋は大きな箱を器用に開ける。
緑色を基調にした胸鎧とスカートっぽい腰鎧。棘のついた丸い右肩鎧に長方形の盾を付けた左肩鎧。ああザ〇だこれ・・・
悪韋はいそいそと装備する。
ドイツ軍ヘルメットのような角付きの兜を被り最後にバルディッシュを腰に吊る。なかなかどうしてカッコイイじゃないの。
「鎖鎧を下に着込めばさらに防御力が上がるな。ネーゼよくやったそなたの忠誠たしかに受け取った」
「は、ありがとうございます・・・」
ネーゼは頭下げる。
「それで、もし売るとしたら売値はいくらぐらいになるのだ?」
「は?そうですね・・・売るなら金貨20~25枚といったところでしょうか?」
ネーゼは少し考えて答える
部分鎧とはいえ4メート級のデカさだからなそんなものか・・・
先程受け取った布袋から金貨を取り出すとネーゼの手に30枚乗っける。
「前払いだとっておけ」
「あ、はっありがとうございます」
ネーゼは深々と頭を下げる。
「ますたー。ただいま戻りました」
トラ美が何やらおおきなズタ袋を抱えて戻ってくる。
たぶんこの村にあったトラ美の私物が入っているんだろうなぁ。
「トラ美殿。おれが持とう」
悪韋はひょいとトラ美のズタ袋を持ち上げる。うん紳士的だ・・・
「ではネーゼ頼むぞ」
トラ美と悪韋を収納するとおれは港湾都市ジャンに戻ることにした。
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