閑話休題 その4 ソロモンの子供たちその3/3
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どうしよう
わたしの名前は藍那といいます。城塞都市ソロモンを統治しているソロモン評議会と商業ギルド代表を務めるマッシュの次女です。
ワーキャット族の15歳の女の子。濃いこげ茶の髪に尻尾。首から背中にかけての白い体毛に右がルビーレッド左がサファイアブルーの虹彩異色眼。
身長は155センチ。上から70・58・76・・・はい。発育に言及することは以降禁止します。
いまわたしは生まれ育ったソロモンを離れソロモンで生まれ育った二人の友人と一緒にいます。
一人は人間の男性でシロウくん。一人はドワーフの男性でノリスさん。二人とはいわゆる幼馴染です。
そしてわたし達がいるのは周りが海の島の中にある白露城。
わたし達の故郷である城塞都市ソロモンを数時間でほとんど被害を全く出す事なく占領した悪霊公ソウキ様が支配する城です。
わたし達は城塞都市ソロモンがソウキ様に反逆しない人質としてこの地に来ることになったのです。
「逃げようとしなければ好きにしていい。見ての通りここはいま0だからななにをしても自由だ」
ここに連れてこられたときソウキ様はそう仰いました。
しかしこの言葉はわたしにとって絶望的な言葉でした。
ソロモンの商業ギルド代表の子息といっても家は姉さんが店の有望な若手をお婿さんに迎えて代を譲られています。
なので店の手伝いをしつつ家事を習得して適齢期を迎えれば好きな人のお嫁さんになって子供を産んで育ててなどと漠然と考えてました。
それが0からの再スタート!更に運が悪いことにソウキ様の庇護下にある生物はわたしも含めて食事の必要がないのです。
まぁ飲み食いすることはできるので何かにつけ酒盛りとかは普通にやっているようですが・・・
ソウキ様の知恵袋であるスケルトン賢者アルテミスさんに相談することにしました。
「意外に遅かったですね」
ローブ姿のガイコツのアルテミスさんはカラカラと骨を鳴らします。
聞くところによるとわたしの二人の友人はとっくにアルテミスさんにアドバイスを乞いに来ているのだそうでちょっと不覚です。
「マッシュ商会の会長さんの次女でしたね。商会はお姉さんとその旦那さんが継いでいてお手伝い程度しか関わっていなかった」
アルテミスさんこちらの事情はとっくにお見通しのようで・・・
「マスターに進言しておきますのでまずは御用聞きから始めてはどうでしょう?」
「個人で注文取って実家に発注していいということですか?」
「嗜好品の注文を直接ソウキ様や妾にするのは遠慮があるようなので考えていた所なのです」
アルテミスさんの顔が確かに笑ったように見えました。
「注文書は一度閲覧させていただきますので終わったらまた来てください」
「解りました」
ぺこりと頭を下げてアルテミスさんの部屋を出ます。
さて、いまこの城にはソウキ様配下の人が27人庇護されているのがわたしを含めて3人。ソウキ様の庇護を受けていない人が5人いるそうです。
庇護されていないのはマッサチン国の人間の冒険者が二人とマッサチン国の貴族の関係者の人間が一人。そして最近人質になったギープ王国の軍人らしい獣人が二人。
とりあえずソウキ様の部下の皆さんから御用聞きです。
下着や部屋着。酒に酒のための肴。中には釣りのための道具一式や簡単な調理道具に香辛料を注文をしてきた人もいます。
なんか意外に小銭が稼げそうです。
続いて白露城に個室を持っている幹部のアルテミスさんと同室のスケルトン魔法使いさん。菜緒虎さんとにクワトロさん。
そして何かの賭けに勝って見事個室を獲得した短い銀髪の若干のつり目の紅眼のハイエルフのお姉さんの5人を回ります。
「羊皮紙とペン。インクは出来るだけ品質を良いものを。仕入れたモノの品質次第では次からもお願いする予定です。そうそう」
アルテミスさんはドンと革袋を置きました。中身を確認すると金貨が100枚ぐらいはあるかもしれません。
「マスターから当面の資金だと預かってきました」
え?金貨100枚ってうちの実家でも一年に一度あるかの大商いのレベルですよ?
「近々外からも多くの建設作業員が来ますからね」
言外に貴女の才覚が試されますよ?と言われたような気がしました。
「打粉と丁子油を」
長い金髪を頭のてっぺんでお団子状にまとめた若干のつり目の碧眼、種族の特徴である笹穂状の耳のウッドエルフ菜緒虎さんが刀の手入れをしながらつぶやきます。
これは、この光景はもう一幅の絵です。
「菜緒虎様。打粉と丁子油ならいくらでも本国より取り寄せますよ?」
余計な事をいうのは長いポニーテールの黒髪に黒眼の山伏装束に身を包んだ背中に鴉の羽のついてる鳥人間の少女・・・たしか鞍馬香良さん。
ワ国の使者だと聞いていますがどう見ても菜緒虎さんの追っかけです。
「ええっと藍那さん?某一度ワ国に戻りますので大陸産の高級なお茶を所望したいのですが・・・予算は銀貨50枚までで」
「そうなのですか?では藍那殿。某が銀貨50枚を都合しますので予算はそれでお願いします」
金貨1枚のお茶ですかですか・・・というか菜緒虎さん太っ腹です。
「マッサチン国西部に王侯青緑茶というお茶がありその最高品が金貨一枚の値段で取り引きされていると聞きました」
「菜緒虎様感謝いたします。それでお願いします」
そして鞍馬さん躊躇せず好意を受けるようです。図太いですね・・・
「承りました。三日ほどお待ちください」
「解りました」
二人して深々と頭を下げるのでした。
次の御用聞き相手はクワトロさん。通常の生活でも赤いマスクを決して外さない謎の人で、言葉遣いや物腰から都会暮らしの長い人間の剣士さんだと解る程度です。
「本が欲しいですね」
さらっと言いましたがかなり裕福な家の出身だということを暴露しているようなものです。
「予算とジャンルは如何しますか?」
「金貨一枚で買えるだけ小説がいいなぁ」
クワトロさんは娯楽作品をご所望です・・・読み終わったら借りれるようなものを仕入れることにしましよう決定。
次は銀髪のハイエルフのお姉さん。
「爪を手入れしたいの・・・金貨一枚で道具一式と消耗品を買えるだけ買ってきて」
おー何気に化粧関係は初めてのような気がします。
「戦闘職だから見た目とか肌の傷とか気にならないけどねー」
そういって銀髪のハイエルフのお姉さんは爪を見せてくれる。あーなんか解る・・・出来るだけイイ物用意させていただきます。はい。
次はギープ王国の軍人さん二人です。虎人間と真黒な狐人間です。
流石に捕虜なのでロングの黒髪にカチューシャ。大きな黒い瞳に額や喉といった急所や肩から手の甲にかけては硬そうな黒色の鱗のドラゴンメイドさんが立ち会ってくれます。
「豚肉。質は問わない。量が欲しい。銀貨50枚あるだけだ」
虎人間の人が身も蓋もないワイルドな注文をします。
「ではわたしはお酒をお願いします。銀貨一枚のものを10種類ほど仕入れてください。好みのモノを見つけたいので」
この狐人間飲兵衛です。間違いありません。
「あと青龍刀を模した木剣が手に入りませんか?」
「上と相談し意に添えるよう努力します」
そう言うしかありませんでした。
最後はマッサチン国の3人の女性。
他の人と同じように衣類とかお菓子などを頼んできます。他の人達と違うとすれば調理用具や食料品といったものでしょうか。
「それとさぁ・・・ある薬を仕入れて欲しいんだ。マッサチン国にあるセキの冒険者ギルドにしかないんだけど・・・」
ショートカットの青い髪に青い瞳の人間の魔法使いマーサさんが小さな二つの布袋を差し出します。
中身は丸薬。
「ギルドが個人の身体に合わせて調合してくれるアノ薬なんだけどさぁ」
ああ、アノ薬ですか・・・わたしも年頃ですし商家の娘なので存在そのものは知ってます。
避妊薬です。正確には生殖細胞不活性薬っていうんです。
なにせ異種族間でも繁殖が旺盛なので望まない子供を防ぐ意味からも必要です。
そして男性の冒険者も服用されています。こちらは妊娠というより寄生に近いのですが、体内で受精し子供が出来るということには変わりません。
たしか、その生物は殿方の精子を作るところに卵子を送り込み受精。孵った子供は血管を通って胃に到達してそこで栄養を横取りしながら成長。
生まれてくるときは中から食い破って出てくるそうです。怖いですね。
「アレも軽くしてくれるから頼みますよ」
「そうですねそれは重要ですね。なんとかしてみます」
「よろしく頼みます」
マーサさんは少し含みのある微笑を浮かべる。それは少し奥にいた蒼黒いセミロングの髪に黒い瞳の確か・・・弓兵のリリィさんやもう一人の女性も同じでした。
なんだろう?まぁ、これで取り敢えず御用聞きが終わりました。
さっそくアルテミスさんの所に戻ります。
「・・・解りました許可しましょう。貴女に頼んでよかった」
アルテミスさんはわたしの書いた注文書と手紙にざっと目を通して褒めてくれました。
「あのマッサチン国の冒険者さんの、その・・・」
「ああこの丸薬とかいうヤツですね?まぁマッサチン国には別の角度から楔を打ち込むつもりだったので良い機会です」
アルテミスさんくっくっくと笑います。どういうことなんでしょう?まぁいいかぁ・・・好奇心は猫を殺すとか言いますし。
「当面は城内で売るとして、どこで売るかも考えおいてくださいね」
「はい解りました」
シロウ君やノリスさんとも相談して取り敢えず出来ることから始めましょう。
ありがとうございました
戦闘再開となりますか。なるハズです




