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閑話休題 その4 ソロモンの子供たちその2/3

オレの名前はノリス。城塞都市ソロモンを統治しているソロモン評議会と武器ギルドの代表を務めているオルテガの四男だ。

ドワーフ族の男で18歳。黒いパイナップルヘッドの髪型に灰色眼。

身長は160センチとドワーフにしては高く体のほうは奥行きがあまりないので人間族に間違われることも多い。

14の頃から親父の武器造りの手伝いをしている。

もっとも親父の跡は一番上の兄貴が継ぐことになってるのでそこで一生下働きするか武器以外の鍛冶に道を見つけるか街を出るしかない。

いまオレはソロモンで生まれ育った二人の友人と一緒にいる。

一人は人間の男でシロウ。一人はワーキャットの女性で藍那。二人は幼馴染だ。

そしてオレ達がいるのは周りが海の島の中にある白露城。

オレ達の城塞都市ソロモンを数時間でほとんど被害を全く出す事なく占領した悪霊公(イビルデューク)ソウキ様が支配する城だ。

そう。オレ達は城塞都市ソロモンがソウキ様に反逆しない人質としてこの地に来ることになったのだ。

「逃げようとしなければ好きにしていい。見ての通りここはいま0だからななにをしても自由だ」

ここに連れてこられたときソウキ様はそういった。

チャンスである。

「鍛冶師としてこの地に工房を開きたい」

ソウキ様の知恵袋であるスケルトン賢者アルテミスさんに相談することにした。

「ノリス君は確かソロモンの武器ギルドで修行されていたのでしたね」

流石知恵袋のアルテミスさん。オレの情報は既に頭に入っているらしい。

「いきなり独り立ちという訳にもいかないでしょう。懇意にしている鍛冶師さんがいますから彼がここに来たときに君を紹介しましょう」

有難い申し出だと思う。

「近く城下で色々な建物の建設が始まります。釘や鋸といった生産道具の需要もでてくるのでそれまで技術を高めてください」

ガイコツだけどアルテミスさんは笑っていたように見えた。


翌日、アルテミスさんから紹介したい人物が来たので会いに行くようにと連絡があった。早いな…

「君がノリス君か?」

刈り上げた黒髪に黒瞳。板海苔のような眉毛の130㎝ほどの背丈の髭のドワーフが声を掛けてきた。

「ドアホーさんですか?」

「ああそうだ」

ドアホーさんがニカッと笑う。

「話はソウキ殿から聞いとるよ。それとこの地に仮の工房を作ってもらうことになった」

「どういうことでしょう?」

「お前さんを鍛える代わりに店番としてこき使ってやるけぇのぉ」

渡りに船である。4年の下積みがあるといっても基礎が固まった程度。造れるものはハサミとかナイフぐらい。

それでも腕を鈍らせる訳にはいかなかったので工房が開きたいと無茶を承知で頼み込んだのだが、アルテミスさんはそれ以上に意図を汲んでくれたようだ。

なにしろ習った以上のモノを作るには長い年月と研鑽を必要とするから。

「コークスや鉄鉱石といった材料以外でお前さんの作業に必要な物をリストアップしておいてくれ」

ドアホーさん・・・いや、ドアホー師匠に言われ即座に製鉄した玉鋼たまはがねや既存の鉄に脱炭・吸炭を施すための火床ほど)吹差吹子ふきさしふいご

焼き入れするための水桶に鍛錬するための金敷に鎚に矢床(やっとこ)といったものをあげる。

「ふむふむ解った。手配してもらうようにしよう」

メモ帳らしきものを取りだし、おそらくはオレのリクエストしたものを書き込むとドアホー師匠はくるりと背を向ける。

「そうそう。工房の準備が出来たらお前さんの腕前披露も兼ねて渾身の武器にも使えるシャベルを作ってくれ。大きさは1メートル50センチだ」

なんというか不思議なリクエストだ。武器にも使えるということはアレンジ能力もみたいという事か?

それから2日後、再びドアホー師匠が白露城にやって来た。

「来てくれ」

ドアホー師匠が来いと手招きする。もしかして工房できたんですか?

あわててドアホー師匠の後を追う。

招かれたのは乾小天守(いぬいこてんしゅ)の近くの内曲輪に建てられた掘っ建て小屋。

二日で建てたものにしては見てくれはいい。

「言われたモノは揃えました。建物は材料が揃い次第改築の予定です」

緑っぽい金髪に若干のつり目の金色の瞳、笹穂状の耳のハイエルフのお兄さんは申し訳なさそうにいう。

「構わんよ。こいつに教える予定の技術漏えいさえ防げればいいんだからのぉ」

ドアホー師匠はポンポンとオレの頭を叩く。

なんかすごいこと言ってる・・・

「そうですか。では何かあればご相談ください。ノリス君。頑張れよ」

緑っぽい金髪のハイエルフのお兄さんが小さく手を振る。なんかモチベーションが上がってきた・・・

ドアホー師匠が小屋の扉を開けて中に入る。オレも慌てて後に続く。

外見は掘っ立て小屋だったが中は意外とまともだった。

火床ほど)吹差吹子ふきさしふいご。焼き入れするための水桶。鍛錬するための金敷に鎚が・・・って金敷と鎚は見覚えがってオレのじゃねぇか!

「当分はノリスがシャベルを打つためだけの場所だからのぉ」

「師匠は?」

「ソウキ様から鎧の発注を受けたからな。いまから暫くは材料の調達じゃ」

さり気なく師匠と呼んでみたがドアホー師匠は眉をピクリとも動かさなかった。そう呼ばれることに抵抗はないらしい。

「とりあえず師匠らしいところを見せてやろう。火床ほど)に火を入れろ」

オレは火床ほど)に火を入れて吹差吹子ふきさしふいごを操作する。

それを見たドアホー師匠は部屋の隅にあった袋からなにやらドサドサと取り出す。

取り出されたモノ・・・これ鉄鉱石とかじゃない。なんというか爬虫類の鱗の欠片?

「ソウキ様の配下にドラゴンがいるじゃろ?」

出てきたのはドラゴンの鱗の欠片だっだ。

なんでもドラゴンの鱗の綺麗な1枚ものは入手が困難だが傷の入った鱗はあっという間に抜け落ちるので入手しやすいのだという。

もっともドラゴンを配下にしているソウキ様だからという但し書きが付くらしい。

ドアホー師匠は矢床(やっとこ)で数枚のドラゴンの鱗を掴むと火床ほど)の上に置き吹差吹子ふきさしふいごを操作し始める。

「はぁ~暫しも休まず鞭うつ響き~」

なんかいろいろ間違っているような歌詞を歌いながらドアホー師匠はドラゴンの鱗の塊を打ち始める。

あれ?槌が歌に合わせて光ってるような…

それに歌詞こそあれだけどこれって。

「師匠。もしかして魔法ですか?」

「気付いたか。筋はいいようじゃの」

師匠は矢床(やっとこ)で挟んだドラゴンの鱗の塊を見せる。

「槌の呪紋。呪紋に魔力を込めるための祝詞の原理。そして鍛冶師としての基礎があればドラゴンの鱗も鉄と同じように打てる」

「オレにも出来ますか?」

「真面目に修行すれば牙や角といったものも加工できるようになるぞ」

「ま、本当ですか!?」

思わず叫んでしまう。モンスターのドロップアイテムが加工できるのは鍛冶師でも1ランク上の存在である。

「祝詞の韻と律は教えるから自分で理解して編め。祝詞を編んだらこの塊を鍛えてシャベルを作れ。注文主はソウキ様配下の狼人間(ワーウルフ)さんだこれを第二の試験としよう」

ドアホー師匠の指導が始まった。


トンテンカン。トンテンカン。槌打つ響き。祝詞の原則は何とか理解したけど鼻歌で紡ぐのがやっと。

ただ鼻歌程度であっても師匠が均した地金を重ねて鍛えることは出来ていた。

「いいだろ」

オレが鍛えていたシャベルの刃を眺めた師匠がOKを出した。

「ありがとうございます」

自然と頭が下がる。

「いまから鍛冶研ぎを行う。よく見ておくように」

師匠は研ぎ石を取り出すとシャベルのエッジ部分を研ぎ始める。

今回、武器にもなるシャベルということで造り込みのときに刃鉄を仕込んでいたのだ。

(めい)を切ったあと柄と握りを装着し納品じゃな。責任もって届けてきなさい」

「銘を切るって」

「シャベルとはいっても責任の所在はハッキリしておかないとのぉ」

習作といっても他人にモノを納める以上は責任を持ちなさいと言われ目から鱗である。

シャベルにオレの銘を切り、柄と握りを取り付ける。

「ワーウルフさんは乾小天守(いぬいこてんしゅ)にいるので届けてきなさい」

師匠に見送られてオレは小屋を出て乾小天守(いぬいこてんしゅ)の前に向かう。

そこには幼馴染のシロウとワーウルフのうーさんが待っていた。

「うーさんお待たせしました」

シャベルの握りの寸法や重心を測るあいだに仲良くなったうーさんにオレは出来立てのシャベルを手渡す。

「おう」

うーさんはシャベルを受け取ると二度三度ブンブンと振る。

「シャベルはな?」

そこからうーさんのシャベル武器術講座が始まる。

シャベルは突く叩く斬る(というよりは断つ)薙ぎ払う事が可能な道具だとうーさんは力説していたけどこうしてみると納得である。

それから1時間ほどの講習。簡単に言うと槍術と棍術の使えそうなところを選りすぐった武器術だということが解る。

「ツルハシやハンマーは武器としての説明は要らんよな?」

シロウとオレはこくこくと頭を縦に振る。

「ですがシャベルほどの万能性は感じられません」

シロウの爆弾発言にもうーさんは物凄く嬉しそうに笑う。

「型を見せておく。気に入ったらいつでも習いに来てくれ」

うーさんは大きく息を吸うと息を止め、そこからブンとシャベルを振り下ろす。

そこから目の前の丸太に向かって突き。払い。突き突き。叩き。

丸太がみるみる抉れ削れていく。ああエッジの刃を斧として使ってるんだ・・・

「ふう・・・いい出来のシャベルだ」

丸太を不格好なオブジェに変えたうーさんはズボンのポケットから小袋を取り出してオレに向かって投げる。

袋の中は3枚の銀貨と50枚の銅貨。依頼の額よりちょっひり色がついている。

「毎度ありがとうございました」

オレは可能な限りの営業スマイルを作ってこの場を立ち去る。

あっ、またどうぞって言えばよかったかな?

後日、うーさんから名指しでツルハシの注文が入った。

オレの鍛冶師としての一歩が始まったのである。

ありがとうございました

なんちゃってなところも多々あるかもしれませんがご容赦のほどを

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