第二次ジャン港沖海戦 その2
間が空いてしましました反省であります
さてどう出るか…
と敵ジャンク船はこちらに向かって一直線に速度を上げてくる。
こちらに気が付いたのか・・・
「この船はなるべくなら損傷軽微で仕留めたい。帆を集中して攻撃。ジャンク船は動力の大半を帆に依存してるから帆を焼いてしまえば危険度は激減する」
了と返事が返ってくる。
革兜に鎖鎧。狼の毛皮で作られた籠手を装備し手にはクロスボウを携えた骸骨…死の狙撃手が武器をクロスボウから長弓に代えると矢筒から一本の矢を取り出す。
ぎり、ぎり、ぎり、ぎり
死の狙撃手の長弓が円のようにしなる・・・
はしゅ。放たれた矢は大きく大きく弧を描き…やがて、ぱん。炸裂音と同時に閃光と煙が立ち昇る。当然のことながら全く届いていない。
「距離600。北西より風力3」
「了解」
短い銀髪に若干のつり目の紅眼。笹穂状の耳に日に焼けたようにやや濃い肌のハイエルフのお姉さんはニッコリ笑うと矢筒から赤い柄の矢を数本取り出す。
え?あれだげで必要な情報全部が手に入ったのか。
「帆を狙って火を付けるだけなら十分ですよ」
ハイエルフのお姉さんはニッコリ笑う。
がすん
メガロドンが体当たりを敢行する。
どうやら追いついたようだ。
が、次の瞬間ジャンク船から数発の棘球が投下される。
どごん
水柱が上がる。もっともヒットアンドウェイで既にメガロドンはジャンク船から遠く離れているので被害はない。
「シャーク、メガロドンの体当たり以外は慎重に対応」
了と返ってくる。この船の練度は高い。警戒しなければダメだ。
ごん
シャークによる体当たり。ジャンク船か大きく船体を揺らす。
「せい」
ハイエルフのお姉さんが矢を放つ。放つ。放つ。
三本の矢が大きく弧を描いて飛んでいく。
続いて死の狙撃手が矢を放つ。放つ。放つ。放つ。
おお、一本多い。
矢が放物線を描いて落下し始めた途端に矢の先端が炎に包まれる。
後続の矢も次々に炎に包まれて落ちていく。
たたたん
ジャンク船の帆に次々と火矢が突き刺さる。
「さすがにすぐには燃えないか」
「まぁ想定内です」
さらに3本取りだしてたて続けに矢を放つ。死の狙撃手も追随するように矢を放つ。
すたたたたん
火矢が帆に突き刺さり・・・ぼんという音とともに小さいが火種となって燃え上がる。
するとスルスルとマストを駆け登る犬人の姿が。
あれを消しに行くのか?
どすん
再びシャークが体当たりを敢行する。
あ、マストを登っていた犬人が落ちた・・・
帆に点いた火が徐々に範囲を広げていく。
それに比例するようにジャンク船の船足が極端に落ちていく。
帆が完全に焼け落ちると同時にジャンク船は動きを止めた。
ひゅしししゅん
ジャンク船の方から大量の矢が飛翔してくる。
「はぁぁぁぁぁあぁっ」
菜緒虎が同田貫の鯉口を切る。
ばらららら
菜緒虎とハイエルフのお姉さんに向かって飛んで来た矢が真っ二つになって甲板に落ちる。
おれとアルテミスに飛んできた矢は種族能力でダメージを与えることなく甲板に落ちる。
「駆け行け火球」
新たに手に入れた金珠の杖を一度かざしてシャンと振る。
ぼぅ
金珠の杖の先端にバスケットボール大の火の球が生まれる。
ごう
不気味な音を立て火の球は少しづつ速度をあげながらジャンク船の船腹に直撃する。
どがごん
派手な音と同時にジャンク船の船腹に大きな穴が開く。
皇帝烏賊に好きなように揺すれと念じる。
ずるるる
海中から数本の烏賊の足が伸びて出てジャンク船の船腹に空いた穴に侵入する。
ががががが
ジャンク船が派手にシェイクされる。
そういえば爆雷積んでたな忘れてた。
皇帝烏賊に一旦止めろと念じる。
相手に降伏勧告するにはどうすればいいんだっけ・・・
とりあえずクワトロを召喚する。
「相手はギープ王国の軍属だと思うが、降伏勧告はどうしたらいい?」
「勝敗に関係なく白旗を掲示することで戦闘が停止します。その後、白旗を掲げた方が相手に軍使を派遣し交渉となります」
なるほど…白旗を上げる=降伏じゃないんだ。さてどうするか…
「マスター白旗です」
アルテミスが指さす先を見ると、なるほどジャンク船からするすると白い旗が上がっている。
皇帝烏賊にジャンク船から離れるように命じ、シャークやメガロドンにジャンク船の周りを回遊するように命じる。
・・・うわぁあまり気持ちのいい風景じゃないなぁ。
ほどなくジャンク船の甲板に白い学ランっぽい服を着た黒い狐人が姿を現す。
右胸には金色のモールが下がっている。あれはいわゆる参謀飾緒ってやつだよな…こりゃまた凄そうなのが出てきた。
「一時停戦の時間を使ってギープの遭難者を回収しろ・・・あ、ニーダ族はイイや」
了と返ってくる。
ジャンク船から黒い狐人と漕ぎ手の犬人を乗せた小舟が降りてきてこちらに近づいてくる。
黒い狐人の面構えはかなり飄々としていた。
「停戦に応じていただき感謝します。わたくしススキツネと申します」
「こちらこそ総軍大将のソウキと申します」
黒い狐人のススキツネの目が点になる。
ハッタリ効かせた服装で乗り込んだら敵の総大将が出てきたでゴザルの巻というやつだ。
「こちらとしてはお前さんたちの全面降伏か海の藻屑しか認めない。こちらとしてはそちらを条件付きで助けてやる義理がないからな」
向こうが交渉してくる前にすっぱりと斬り伏せる。
なんともいえない沈黙が降りる。
「こちからから人質として数人引き渡します。人質は後日身代金と交換ということで如何でしょう?」
ススキツネは顔色を変えることなく切り出す。
「困ったな…こちらにはそちらが差し出す人質にいくらの価値があるか判らない」
足元を見られるんで交渉したくありませんと暗に主張する。
「マスター。虎人と3人の犬人を回収しました」
マーマンから思念が入る。虎人間というと筋骨隆々で腰に大きな青龍刀を吊ってた奴か。
「いま部下から連絡が入った。虎人間と3人の犬人を回収したそうだ」
「張緋将軍が!」
ススキツネが思わず叫ぶ。
「うん。人質の一人は決まったようだね」
ススキツネはしまったという顔をしたが後の祭りである。
やがておれ達の前に一人の虎人間と3人の犬人が連れてこられる。
虎人間と3人の犬人は長い時間海に漂っていたせいかすっかり体力を消耗した顔をしていた。
「張緋将軍・・・ご無事でしたか」
ススキツネの言葉で身元バレしていることに気付き張緋は顔をしかめる。
「あなたの身分なんてこの参謀殿に効かなくても簡単に割れたのだ許してやってほしい」
おれの取り成しに張緋の顔はますます複雑なものになる。
「そうそう。港湾都市ジャンの太守殿とはちょっとした縁があってな。人質解放交渉には彼に間に入って貰おうと思うのだかどうか?」
とりあえず揺さぶってみる。ギープ王国としてみれば間にマッサチン国が入るのは何かと都合が悪いかもしれないが・・・
「解りました…上部と相談ののちマーケル・ドン・ジャクスン殿を仲介として交渉させていただきます」
ススキツネはぺこりと頭を下げる。
「あなたも人質だよ相談は他の人間にお願いしてもらいたいな」
張緋とススキツネの顔が面白いぐらい愕然としたものになった。
ありがとうございました
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さて閑話休題はどうしよう…




