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閑話休題 その3 ある捕虜の独白

閑話休題。書き方を変えてみました

舞台となる世界の他の地域のちょっとしたエピソードです


私の名前はマーサ。苗字なんて立派なものはない。

そもそも苗字なんてものは母国マッサチン国では貴族以上の身分の高い人間が持つものだ。

しかし名前を聞かれればマーサ・セキと名乗っている。

セキは私が所属している冒険者ギルドのファミリーネーム。セキ冒険者ギルドのマーサという意味だ。

身長は160センチちょっと。ショートカットの青い髪に青い瞳。顔立ちは中の中。ほぼ平凡だと思う。

マッサチン国にある山村の農家の二男六女の末っ子として生を受けて今年で16年だ。

私に最初の転機が訪れたのは10歳の時に村が飢饉に襲われ危うくコケシにされかけたときだった。

ちなみにいまだ私の体の成長が悲しいぐらい止まっているのはこの時期の粗食が原因だと思っている。

村を襲った飢饉の対策として我が家がとった対策は8人いる子供のうち7人を売る事だった。

非常識だ罵られる方もいるかもしれないが私の村ではごく普通の事だ。憐れんでほしくはない。

というか我が村ではそういうときのために多くの子をもうける。

長男は家を継ぐため早々に残留が決まり次男は兵士として国防軍に志願。

長女と三女は近隣の村に嫁入りし次女は首都の神殿に見習いとして出家。

四女と五女は奉公人として比較的大きな町の商家へと引き取られていった。

これで数年は凌げる。

問題は売れ残った末っ子の私。家事は母親で充分に足りていたし、そのまま家に残ることは売られていった兄弟達に対して示しがつかなかった。

繰り返して言うが、これは貧しいながらもこの地で生きる我が村の知恵であり憐れんでもらう必要はない。それに私はまだ生きているのだ…

さて10歳の私に残された道は多くない。

村と街の間の道に放置されたあと山中で野垂れ死にか偶然に助けられ街にたどり着いてストリートチルドレンになるか…

「なんだお前は…」

道の隅っこで途方に暮れていた私を助けてくれたのは黒髪黒眼で隻眼の人間の男性魔法使いとその弟子で大きな胸とふわふわの尻尾がとてもきれいな狐人間(ワーフォックス)の女性でした。

「村の掟で捨てられた…」

それだけつぶやいてがっくりと頭を下げた私の頭の上に魔法使いはポンポンと手を置いて…

「そうか…なら俺が拾っても誰からも文句は言われないんだな?」

最初その言葉が信じられませんでした…何度も二人の顔を交互に見てニコニコ笑ってくれていて…どうやら嘘ではないと気付いたときには大声で泣いていました。

それからは男性の魔法使いと私の師である幽鬼師匠と姉弟子たまも姉さまのお世話係としての生活が始まりました。

2度目の転機は12歳のときです。

その日、小さいながら数種類の野菜を植えている畑で収穫していたとき私は野生の猪と鉢合わせになったのです。

ぶるる

猪は子連れでした。遭遇したら逃げろと師匠からも姉弟子からも注意されていたシュチュエーションです。

しかし腰が抜けていて逃げられません。

ぶもー

猪とか関係なく子を守る親は最強で最凶の敵対者なのです。

「逃げなさい!」

事態に気付いたたまも姉さまの声が聞こえます。

「ひ、光よ我が手に集え」

門前の小僧習わぬ経を読むという諺を聞いたことがありますか?

私は師匠の本をこっそり読むために覚えていた光の魔法をとっさに発動させました。

物凄い閃光が辺りを包み猪も私も気絶していました。

再び気付いたとき私はベットの中でした。

「気付いた?」

そのときのたまも姉さまの心配交じりの微笑はいまでも忘れられない思い出のひとつです。

「一人で起きれますか?師匠が待ってます・・・悪い話ではないと思いますよ?」

たまも姉さまに促され、私は師匠の部屋を訪ねました。

「たまもから聞いた。補助具なく(ライト)の呪文を使ったそうだね?」

わたしは師匠の言葉に頷くしかありませんでした。

「ふむ…才能はあったんだろうが門前の小僧習わぬ経を読むというやつか・・・」

はい私の言葉ではありません師匠のお言葉です。

意味はふだん見聞きしているといつのまにかそれを学び知ってしまう。環境が人に与える影響の大きいことの例えだそうです。

それからは師匠と姉弟子のお世話に魔法の勉強が追加されました。

それから2年。師匠と姉弟子による厳しくも優しい指導のおかげでなんとか魔法使いになることが出来ました。

「この国で魔法使いを名乗るには魔法使いギルドと冒険者ギルドに2年ほどの所属する必要だ」

そういって師匠は一巻の羊皮紙を手渡してくれました。魔法使いギルドに入会するための推薦状です。

「私からはこれを」

たまも姉さまからは姉さまが魔力を込めた樫の木の杖を頂きました。そう・・・いまも私の手元にあるこの杖です。

師匠と姉弟子に送り出され、私はマッサチン国の首都マッサチンに行きました。

師匠である幽鬼がマッサチン国でもかなり有名な魔法使いであると知ったのはこの時です。

それから2年・・・そういえば10歳で捨てられて2年ごとに何かしらのイベントに遭遇してますね。不思議なものです。

私は魔法使いギルドと冒険者ギルドに所属して修行と冒険を重ねマッサチン国の冒険者ギルドでイエローのクラス・・・下から三番目ではありますが中級冒険者になることが出来ました。

「マーサ。ちょっといい?実はいい仕事があるんだけどさー」

冒険者ギルドの待合室兼酒場でヒマを囲っていた私に声を掛けてきた人がいます。

声のした方を見るとそこには蒼黒いセミロングの髪に黒い瞳の少女リリィ・ボノレンが立っていました。

彼女は半年前に北にあるギルドから流れてきた弓兵。何度かパーティを組んで冒険している人です。

「ブームケット平原に謎の武装集団が現われて、その軍団の正体を探る強行偵察。報酬は驚くことなかれ金貨30枚で経費依頼者持ち」

パーティは6人だから一人当たり金貨5枚で経費は持ってくれる・・・二つ返事で了承しました。

ちなみに金貨一枚で一日2食のかなりいい宿に5日は泊まれる金額です。バラ色の未来です。

しかし結果はご存知の通り。

パーティは全滅し生き残った私とリリィは捕らわれの身に。

しかし…

「今すぐの開放は無理だが、彼女たちの監視下であれば自由にしてもらっていい」

ローブ姿のスケルトン魔法使いはそう言って私たちを拘束から解放。監視付きの軟禁生活の身となりました。


「なにかあったようだね」

することが体力づくりしかなく鴨居に指をかけて懸垂していた同室のリリィが外を見てつぶやきます。

「なんだろう湯気?」

見ると城の外曲輪の外でもうもうとした湯気が立ち昇っています。かなりの温度のお湯が噴出してるってことです。

「ワ国のうわさで聞く温泉というモノかもしれません」

師匠が所持していた本にあった情報を引き出します。

「お湯を張った池だっけ?」

リリィの認識はなにが微妙にズレてますが大きく間違ってもいないので訂正はしません。

温泉作るように進言したら作ってくれるだろうか…ふとそんなことを考えました。

知識で知っているのと体験で知ってるのでは雲泥の違いがあります。私は魔道を学ぶものとして知りたい…

意を決して今日の監視役である緑のドラゴンメイドさんに声を掛けました。

数日後…意見具申が通ったのかそれは立派な露天なる温泉が完成したそうです。

順番待ちですが私たちも利用できるそうです。楽しみだなぁ…

ありがとうございました

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