地下墳墓の迷宮 その後始末そして・・・
白露城に戻るといつものように天の声が聞こえてくる。
「そういえば上位召喚に切り替えた後に下位のモンスターが召喚したくなったらどうればいいんだ?」
「新規で召喚できるマップに行って召喚すれば宜しいかと」
アルテミス安定の即時回答が返ってくる。・・・そうなんだ。いちど進化させたらもう絶対に召喚できないと思ってたよ。
安心して召喚ラインを上位のモノにランクアップさせる。
次に汎用のドロップアイテム等を売り払い・・・なんかお品書きが良くなってないか?
「旦那がソョチ族の軍船を沈めたのが判ってワ国からの商隊が来たんですよ」
こちらの疑問にムーゲは答える。
こちらから使者を送ってあちらかも香良が来てるから事情を知った目敏い商人が商機を逃すことないだろうな…
と思ったら商隊はムーゲの身内だとあっさりネタばらしをされてしまった。
まぁ即断即決で即座に動けたのは褒めてもいいだろう。
店に並んでいるものでランクアップできる装備は買い替える。
宝箱にあった杖は金珠の杖といって魔法の威力を底上げしてくれる逸品だと判明した。
あとムーゲにその身内に話をつけてもらうように依頼する。
つぎに部隊編成。ブラックドラゴン3体を開放してメッスィング、レッド、ホワイトドラゴンを召還しドラゴンの種族バランスをとる。
ちなみにオークは女性だった。ふと、オークって徹底的に鍛えたらどうなるんたろうか?今まで見てきたのは高さはそこそこに際限なく縦によ横にも広がっていたが・・・
最後にドアホーに会いに行く会いに行く。
「ご無沙汰ですな」
刈り上げた黒髪に黒瞳。板海苔のような眉毛の130㎝ほどの背丈の髭もじゃドアホーは実に極めて親密な笑顔で出迎える。
「うむ。今回はな・・・これを複製できるか聞きに来た」
そういって例の地下墳墓で入手した胴鎧、籠手、具足・・・黒糸威二枚胴具足を目の前のテーブルに置く。
「これは・・・ワ国の技術で作られた防具ですな…」
ドアホーは黒糸威二枚胴具足を手に取りコンコンと叩きグルグルと手に取って見回す。
「できそうか?」
「・・・これだけのモノをお、私に預けて頂けるので?」
「複製を引き受けてくれるなら当然だな」
ドアホーの問いに即答する。
「そこまで信頼されてはやらない訳にもいけませんな。やってみましょう」
数分考えてドアホーは答える。
「ある程度の目星がついたら見釣りを持って尋ねてくれ・・・そうだ問題なければおれ達の城下に工房を用意してもいいぞ?」
「解りました。工房の必要な設備の設計図をお渡ししますのでよろしくお願いします」
ドアホーは一瞬、目を大きく見開いたがやがて深々と頭を下げる。
瓢箪から駒とはこのことだ・・・腕のいい職人ゲットである。
「あとで配下でソロモン出身の若いのを手伝いに派遣するからよろしく頼む」
ドアホーとの約束を取り付けて城に戻る。
「マスター。城下街の建設計画に認可を頂けますか?」
城に戻るなりローブに身を包んだスケルトン賢者こと・・・アルテミスが数枚の紙を持ってやってきた。
ざっと目を通す。
「上下水道の完備にこだわるのはいいが綺麗すぎるな。これでは攻められた時の障害物にならない。それと廃棄物の最終処理にスライムが使えるようになったから・・・」
スライムは生物由来のモノなら難なく分解しエネルギーと水に分解してしまう便利な掃除屋である。
しかも不眠不休で動いてくれる優秀な警備兵でもある。
「なるほど…スライムを浄化槽として数所に配置しする訳ですね・・・」
「上水は井戸の設置して下水はスライムで処理。上下水路を潜入の通路に使わせない・・・いや罠として機能させても面白いな」
おれのアドバイスにアルテミスはこくこくと頷く。
「農地で使用する予定の井戸の掘削調査を外曲輪、中曲輪でも実施し、上下水道が城内をさも張り巡らせているよう設計しましょう」
くるくると持ってきた地図を丸めながらアルテミスは頷く。
「マスター鞍馬殿が目通りを願っていますか・・・」
「うむ」
長い金髪を頭のてっぺんでお団子状にまとめた若干のつり目の碧眼、笹穂状の耳のウッドエルフの美女、菜緒虎からの報告を受け香良を召喚する。
「一度、本国に戻りたいと思います」
長いポニーテールの黒髪黒眼。背中に鳥の羽をもつ鳥人間の少女、香良は視線を合わせるなりその場で土下座する。いきなりだな…
「例の防具はいますぐに引き渡せないぞ?いましがた職人に預けてきたからな」
「いえ、それは問題ありません・・・ただ帰国の際はソウキ様にも同行していただきたくお願い申し上げます」
額を床に擦りつける勢いである。
何が彼女をここまで駆り立てるのか…というかおれへの呼称が様になってるぞ?
「理由を聞いてもいいかな?」
「某の後見として本家に口添えください」
なるほど・・・そういえば祖先の喜治は百田家に仕えていたはずだが香良はワ国の守護代岳田家が家臣で鞍馬唐栖の娘とか言ってたな…
いまに血を繋ぐことは成功しても鞍馬家のワ国での立場は微妙なものなのかもしれない。
となるとこのまま黒糸威二枚胴具足を発見したとして本国に持ち帰ったとしても岳田家に召し上げられる可能性があるのか。
この娘も色々とありそうだな。
「理由になってないぞ?」
重ねて聞く。
「実は…」
香良の口から150年前の鬼退治の顛末が語られる。
鬼退治で命からがら大陸から戻っては来た百田と弐本は傷を癒したのち鬼から奪った宝物を元手に軍を興し数年でワ国の西半分を統一。
その後、弐本を大将とする征夷が起こり数年後には東ワ国も統一。
西ワ国を百田が征戎大将軍という官職を得て統治、東ワ国を弐本が征夷大将軍という官職を得て統治することとなる。
そこから百年ぐらいで体制は中央集権制から封建制へと移行。その過程で鞍馬家は百田の分家である岳田家の家老として中央から追い出されたのだという。
ということは鞍馬家にとって召し上げられる以上の火種になる可能性もあるのか・・・
「なるほどね」
おれの意味ありげな言い回しに香良の体がビクンと揺れる。
「まぁいずれにせよ鎧を引き渡すまで暫く時間がかかる。それまで色々と話を詰めておけ・・・おきなさい」
言外に香良の帰国に合わせてワ国に同行することを匂わせる。
「よろしくお願いします」
香良は結局、最後まで額を床に付けんばかりの土下座をしたままだった。
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