地下墳墓の迷宮 その3
「マスター・・・壁ノ向コウ気配」
スライムが警告してきた。
隠し扉の向こうに敵。お約束と言えばお約束の展開。あるのは宝物か次の階層への階段か…
「隙間から向こうに入れるか?」
「了」
スライムが扉上部のわずかな隙間から向こうの部屋に侵入する。
すぐに敵の全容がわかる。前衛にオーク3人。後衛にホブゴブリン2人とインプの大きいのがいるな…たぶんインプの上位種・・・デーモンか。
「スライムとおれはインプの大きいのを狙う。お前たちは前衛のオークを一体づつ確実に倒せ」
「了」
返事が返ってきたところで部屋の中に突入する。
あちらとしては奇襲ができると思っていたのであろう油断がそうは問屋が卸さない。
「駆け行け火の三矢」
杖を振りかざしデーモンを指すと空中に3本の火の矢が現れる。
じゅご
三本の矢がデーモンの顔面へと殺到する。
「はいっ」
ドラゴンバトラーが三節棍を先頭左のオークの左胸に突き入れる。一瞬固まるオーク。
「せい、はっ!」
続いて香良が錫杖を振り下ろし、緑髪ショートの女僧侶が後方から鉾鈴で刺突。
シャ
左端のホブゴブリンが腰に吊っていた短弓を構えて放つ。
ガッ
矢はドラゴンバトラーの肩に命中するが、乾いた音を立てて落ちる。貫くほどの威力は無かったようだ。
「う゛おぉ」
真ん中のオークが香良めがけて棍棒を振り下ろす。肩口にヒット。
続けて右端のオークも香良めがけて棍棒を振り下ろすがこれは躱す。
「駆け行け氷の二矢」
デーモンが指で空中に模様を描くと氷の矢が二本出現しておれに向かって飛んでくる。
しゅ
氷の矢が命中するが、馬鹿めスケルトンに水系の攻撃など効かぬわ!
「駆け行け雷の三矢」
お返しの魔法の矢をデーモンに放つが、二本は刺さり一本はデーモンのかざした手の前で消える。お、レジストしたのか!
どす
天井からスライムがデーモンめがけて落下。見事に上半身に張り付く。よし。これで魔法を封じた。
「我が同胞を癒せ回復」
真ん中にいたホブゴブリンがデーモンに向かって叫ぶ。ぼぅと淡い光がデーモンを包む。
え?回復魔法使えるの?
「行くわん」
柴犬人が円匙を水平に構えてオークAに突っ込む。
ガシュ
最初は使えるのか?と思ったが・・・スコップえげつない。突いたときの刃幅が洒落にならないぐらい広い。
がん
柴犬人がスコップを蹴って更に刃を潜り込ませる。
ぎいぃ
攻撃を受けていたオークが大量の血を吐いて崩れ落ちる。
<<ワードック(柴犬人)のレベルが上がり進化の条件を満たしました。進化しますか?>>
Yを選ぶ。
ぞわっ
柴犬人の体中の筋肉がぼこぼこと膨れあがっていく。あ、これは強さと引き換えに何かを失うパターン。
鼻っ面が伸び牙も太く長く伸びていく・・・ばふんと煙に包まれ・・・
<<ワードック(柴犬人)が進化してワーウルフになりました>>
「あうぉぉぉおぉぉぉん」
ワーウルフの部屋の中を震わせる咆哮。敵は明らかにその声に畏怖し味方は気分が高揚し力がみなぎる。
「はっ」
ドラゴンバトラーの三節棍が真ん中のオークの横っ面を強かに強打する。
オークが血を吐きながら吹っ飛ぶ。
「せい」
香良が吹っ飛んで倒れていたオークに錫杖で突きを入れる。
がぁ
倒れていないオークが香良に殴り掛かる。
ガスン
オークの攻撃が香良の腕にヒット。
くぅ
香良の顔が苦痛に歪む。
「我が同胞を癒せ回復」
緑髪ショートの女僧侶がシャンと鉾鈴を鳴らすとぼぅと淡い光が香良を包む。
ナイス判断。
「駆け行け火の三矢」
杖を振って再び呪文を唱える。
ごぅ
3本の火の矢がデーモンをめがけて殺到する。
悶絶するデーモン。
「離レロ」
回復呪文を唱えたホブゴブリンがスライムに殴りかかる。しかしスライム越しにデーモンを強く叩くわけにもいかないのでどうにも半端だ。
「ハッ」
短弓を放ったホブゴブリンがワーウルフに向かって短弓を放つ。
ガスッ
ワーウルフの胸板に矢が刺さる。
「ふん」
ワーウルフが鼻息一つ放つと刺さっていた矢がむりむりと押し出される。
「がうぅ」
ワーウルフの長い腕が短弓を持ったホブゴブリンの顔面を殴ると見せかけ勢いを付けた裏拳でオークの延髄をぶん殴る。
「せぃ」
香良が錫杖でオークを叩く。叩く。叩く。
「はいっ」
ドラゴンバトラーが三節棍でオークを叩く・・・がオークはこれを棍棒を立てて防ぐ。
ドラゴンバトラーが意地悪く笑う。
がこ
三節棍の二番目の棍が巻き付くように方向を変え三番目の棍がオークの肩口を激しく叩く。
「離レロ」
ホブゴブリンがスライムを引き剥がそうと手をかける。
うーん不正解。蛭を引き剥がすように火を近づけないと・・・
ずぷりとホブゴブリンの腕がスライムに飲み込まれる。
きゃ
悲鳴にも近い声で叫んでホブゴブリンは腕を引き剥がそうとするがそれはたふせん逆効果・・・あ、ホブゴブリンが飲まれてく・・・
「駆け行け氷の三矢」
杖の先に3つの氷の矢が出現しオークに殺到する。
「ぷぎゅ」
オークが倒れる。残り3。
しゅ
ホブゴブリンが香良めがけて短弓を放つ。
「あぅ」
矢が香良の右肩を貫く。
「我が同胞を癒せ回復」
緑髪ショートの女僧侶がシャンと鉾鈴を鳴らすとぼぅと淡い光が香良を包む。
帰ったら香良の装備は見直しだな。脆すぎる。
「がうっ」
ワーウルフが小さな助走からジャンプして短弓を持っていたホブゴブリンに向かって飛び蹴りを放つ。
「せいっ」
続いてドラゴンバトラーが間合いを詰め倒れたホブゴブリンめがけ三節棍を上段から振り下ろす。
「やあぁ」
香良がスライムに飲み込まれつつあるホブゴブリンの胴をスライムの方に向けて激しく打つ。
ずぽっ
ホブゴブリンの体の半分がスライムに埋まる。
よく見るとデーモンがスライムに全身を積み込まれていてピクピクと痙攣していた。
そして動かなくなった途端デーモンの体がじゅわっと溶ける。
なんかスライムの体の中に何か残った・・・
「うぉりゃ!」
ワーウルフが倒れていたホブゴブリンの顔面に拳を叩き込む。連打。連打。連打。
ホブゴブリンが動かなくなる。
残ったホブゴブリンもゆっくりスライムに飲み込まれていった。
「ぺっ」
スライムがデーモン消滅と共に現れた一対のものを吐き出す。
これは籠手に長い3本の爪状の刃を取り付けた・・・クローナックルだね。
「ほい」
クローナックルをワーウルフに投げて寄越す。
ジャキン
ワーウルフはクローナックルを装備し何度か振ると膝を折って感謝の姿勢をとる。
「ご主人様」
ドラゴンバトラーが恭しく頭を下げ部屋の隅を指さす。
ギリギリと音を立てながら床が動いているのが見える。どうやら更に地下へと続くようだ・・・
新たなモンスター
名前 ワーウルフ
種族 ワーウルフ
分類 亜人間
性別 男 女
性格 ニュートラル-ニュートラル
STR:15 INT:5 DEX:9 VIT:15 AGI:12 LUK :6
体力20/20 魔力5/5
能力:暗視(夜間の能力低下の無効)
魔法:なし
特殊能力:超回復(月の満ち欠けによって変動)
ハウンドボイス(味方ステータスの一時的な上昇と敵ステータスの一時的な低下)
装備:皮鎧
備考:月の満ち欠けによってその脅威度が変わる狼人間。満月の夜に敵として遭遇したのなら覚悟した方がいい。
その狩猟本能から警備員として活動する者も多い。
ワードックをレベル20まで育てることで進化することが確認できた。
※性格・能力値はレベル1のときの平均でありレベルによって変動します。
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