鉱山都市ソロモン攻防戦・・・その戦後処理のあれこれ
「はぁ?」
降伏勧告を受け入れたソロモン評議会の代表ガイアは目を点にした。
無論評議会を構成するガイア以外の武器、防具、2つの商人の4つのギルドの代表の顔もまた同じように点になっている。
こちらが提示した降伏にあたっての条件は・・・
・税収の3%の上納。
・軍事力の大幅な縮小。(軍事力はこちらが提供する)
・内政に口出しはしないが定期的な報告は必要。
これは現在支配している地域すべてに等しく課せられている条件でもある。
これに城塞都市ソロモンでは以下の条件が付く。
・必要な時に必要な労働力の提供(賃金は支払われる)
これはおれたちの拠点である白鷺城の中曲輪、外曲輪の開発を開始するにあたり人手を補修する必要があったからだ。
召喚したモンスターで土方という意見もあったが、ドラゴンメイドのような例外はあるものの召喚したモンスターの大半は戦闘に特化してるぶん汎用性に欠けているので早々に諦めた。
「これだけでよろしいのですか?」
鉱山都市ソロモンの現ギルド評議会代表であるガイアが恐る恐る尋ねてくる。
「いまは戦時だからな。背後に下手な火種は作りたくない」
「もしかして我がソロモンを落としたのも・・・」
「ギープとマッサチンを相手に戦争始めた時に後ろでチョロチョロされたら鬱陶しいだろ」
この答えにガイアは納得したように小さく頷く。
「ただ、当分は諸君らの忠誠が計れないから身内を人質として差し出してくれ。我が白露城に逗留してもらう」
言外におれたちの情報収集のチャンスがあるよと匂わせる。
「評議会全員の人質が必要でしょうか?」
「一人でもいいぞ?それでおれの歓心が得られると思うならな」
カラカラと笑ってみせる。
そのあとソロモン評議会からは3人。
鉱山ギルドの代表で評議会代表のガイアから三男のシロウ。商業ギルドの代表で名前をマッシュというワーキャットからは次女の藍那。
武器ギルドの代表で名前をオルテガというドワーフからは四男のノリスが人質として送られてきた。
本拠地白露城に帰還したおれをいつもの声が迎える。。
そしてホブゴブリン・ヘルハウンド・メッスィングドラゴン・死の狙撃手を召喚リストに登録。失ったゾンビを召還する。
レッドドラゴンの補充は見送り。
ムーゲを呼び出して売却と武器防具の購入を済ませる。
ついでにドロップした武器を鑑定してもらう。大熊猫の戦斧・・・なんだこれは
「アルテミス、クワトロ召喚」
簡易召喚でローブを着たスケルトン、アルテミスと短く刈り込まれたオレンジ色の髪に赤い瞳。浅く日に焼けた肌をもつ仮面の青年クワトロを呼び出す。
「マーズ、アース、藍那を呼べ」
思念を送るとロングの緑髪に大きな緑色の瞳。額や喉といった急所や肩から手の甲にかけては硬そうな緑色の鱗。
背中には大きな蝙蝠の翼があるがそれ以外は普通に人の風貌をしたメイド服のドラゴンメイドの女性が三人の少年少女を連れてやってくる。
先頭にいたのは人間のマーズ。ソロモン評議会と鉱山ギルドの代表ガイアの三男。栗色の髪に茶色い目で風貌はガイアそっくり。
鍛えているらしく16歳にしてはがっしりとした体格だ。
右にいるのはドワーフのノリス。ソロモン評議会所属で武器ギルド代表オルテガの四男。パイナップルヘッドの黒髪に灰色眼。ドワーフにしては前後に太くない体である。
そして左にいるのはワーキャットの藍那。ソロモン評議会所属で商業ギルド代表マッシュの次女。
トラ美が茶虎なら彼女はシャム。前面が人間で背面が猫というのは変わらないが乳はかなり小振り。尻尾はピンとしている。
「君たちを歓迎する。もし仮に諸君らが故郷を追われたとしてもおれの名において保護しよう。また己の力でその立場を固める事を期待する」
「宜しくお願いします」
代表してシロウが深々と頭を下げる。
「ラン・バウラ子爵のご息女をここに」
暫くするとロングの茶髪に大きな茶色い瞳。茶色い鱗のドラゴンメイドの女性が一人のタテロール金髪でタレ目気味な灰色眼の少女を引っ立ててくる。
少女の容姿は綺麗というよりはかわいい系。出るところは出て引き締めるところは引き締めているが騎士にしては全体的に華奢な印象しかない。
「ラン・バウラ子爵のご息女とお伺いしているが間違いありませんかな?」
問いかけに対し少女はぷぃと横を向いて答えることを拒否する。
「マッサチン国の関係者でないというなら、ハイオークが持っていた戦斧を添えてギープ王国に身柄を引き渡すことになるが宜しいか?」
そういった途端少女の足がガクガクと震えだす。
「マスター・・・この方はラン・バウラ子爵のご息女によく似ていますが、偽物です」
クワトロが気の毒そうな声で進言してくる。
息女をギープ王国の有力者に献上すると見せかけての身代わり・・・体が華奢なのも当然か。
「どちらの陣営に送っても使い道がないのか・・・」
マッサチン国のラン・バウラ子爵に送りつけた場合は本物はいますで交渉にならない。
ギープ王国のハイオークの関係者に送った場合も早々に交渉道具としての価値を失って奴隷以下だな。
「かといって我々の手駒とするにも今のところ価値はないんだよな・・・」
これを聞いて少女はガクガクと震えはじめる。
「まぁマッサチン国との交渉の足掛かりにはなるか・・・」
「では?」
「ソロモンのメンバーと同じ扱いだ。身分は保障するが自分の席は自分で用意しろ」
少女は腰か抜けたようにその場でへたりこむ。
「名前は?」
「マーベル。姓はありません・・・」
マーベルはそれだけ言うと嗚咽を漏らしはじめた。
「親方さま。菜緒虎、ただいま戻りました。それとワ国からの使者をお連れしました」
菜緒虎から帰還の報告が届く。
「うむ。鶴之間で会おう」
鶴之間は広さ150畳。この白露城でもっとも広い部屋である。
ずかずかと菜緒虎と使者の横を通り鶴之間の最奥、一段高くなったところまで行きドカっと座る。
その後ろにアルテミスが続き左斜め下の位置に座る。
「菜緒虎よ此度の任務ご苦労」
声をかけると長い金髪を頭のてっぺんでお団子状にまとめた若干のつり目の碧眼、笹穂状の耳のウッドエルフの美女が頭を上げる。
「勿体ないお言葉です」
菜緒虎はそういって再び頭を下げる。
「ワ国の方。お初にお目にかかる。この城の主であるソウキリュウイチという」
菜緒虎の隣にいた長いポニーテールの黒髪黒眼の・・・って背中に鳥の羽がついてるな。頭に輪っかが付いてないところを見ると天使ではなく鳥人間か?
頭襟、結袈裟、鈴懸、手甲に脚半・・・いわゆる修験道の山伏装束に身を包んだ少女が床に両手拳を付けて頭を下げる。
「お初にお目にかかります。某ワ国の守護代岳田家が家臣、鞍馬唐栖の娘で香良と申します」
菜緒虎はそれなりの伝手を掴んできたようだ。
「此度、某が菜緒虎殿と共にこの地に来たのは、ソウキ殿の提案が信に足るかこの目で確かめに参りました」
頭を下げたまま香良は口上を述べる。かなり清々しいな・・・
「では今後暫く我が軍に帯同すると?」
「お許しいただけるなら」
相変わらず頭を下げたまま香良は答える。
「いいでしょう・・・許可します」
パンパンと手を叩くとショートカットの赤髪に糸目の瞳の紅い鱗のドラゴンメイドの女性が姿を現す。
「香良殿を西の丸の化粧櫓にご案内だ。香良殿。この者を付けますので何でもお申し付けください」
「ありがとうございます」
香良は今一度深々と頭を下げると立ち上がり部屋を出ていく。
「簡易召喚」
叫ぶと同時に配下のモンスターが召喚される。
第一軍
メッスィングドラゴン・菜緒虎・死騎士・クワトロ・ジャイアント・ホブゴブリン
第二軍
ブラックドラゴンβ・緑っぽい金髪のハイエルフのお兄さん・赤毛の青年剣士・ゾンビ・ヘルハウンド
第三軍
ブラックドラゴンγ・赤っぽい金髪のハイエルフ兄さん・黒髪ロングの盗賊少女・蒼いリザードマン・インプ
第四軍
ブラックドラゴンθ・銀色短髪ハイエルフのお姉さん・緑髪ショートの女僧侶・ドラゴンメイド・死の狙撃手
第五軍
レッドドラゴンα・アルテミス・ドワーフ娘・黒髪ショートの女僧侶・トラ美
本陣
主人公・ジャイアント・柴犬人・コカトリス
遊撃
岩鳥6匹・吸血バット3匹
水軍
オクトパス3匹・エンペラースクウィッド・ミズチ×2匹・シャーク
内政
アーリエル(マーメード)・スケルトン魔法使い・ドラゴンメイド5人
ここに鞍馬香良やソロモンの3人組とマーベルが入って全軍になる。
「数は少ない・・・しかし」
香良が絶句する。
「鞍馬殿は暫く本陣付きでお願いした」
「はっ」
香良は片膝を付いて首を垂れる。インパクト強かったか?
いまにも忠誠を誓ってきそうなんだが。
まぁいいか・・・では今回の軍団編成の本来の目的を行使する。
「ジャイアントよ前へ」
「あ゛い」
本陣付きのジャイアントがずいっと一歩前に出る。
「ソロモン攻略のときの功績を称えて悪韋と名乗れ」
「忠誠誓い゛ます」
ジャイアント改め悪韋は地に頭を擦りつけるようにして平伏するのであった。
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