第二回戦略会議 ※ルビ設定変更
アクセスが1000を超えたようですありがとうございます
閑話休題は・・・やっぱりあれだよね・・・
「二回戦略会議」
そう宣言して思わず笑ってしまう。一回目からさほど時間は経っていないのに早くも第二回だからだ。
あれ?本当につい最近の話か?
なにしろ食う寝るは必要のないアンデットだから時間の進み方がかなり曖昧なのだ・・・まぁどうでもいいか。
さて今回は打つ手によって敵味方に分かれる勢力が決まるので後回しは出来ない案件でもある。
まず北西にマッサチン国。人類の支配する国。敵対する意思はないとマーケルが親書をしたためそれをもった人間が本国に向かっている。
つぎに北に魏府王国。亜人類が支配する国。問答無用で主力をふたつぶっ潰しているので敵対止む無しの勢力。
三つめは東北のワ国。岐阜王国と真っ向から敵対しているということしか解らない国。
理想はマッサチン国の動きをけん制しつつワ国と組んで魏府王国を攻めることだ。
と考えたところで自分がかなり増長していることに気付いた。
連戦連勝で強力な個体を兵として使役しているとはいえ、いまはまだ兵の数も支配している地域も少ない単なる田舎のゴロツキ集団だ。
「おれとしてはワ国と同調して魏府王国を攻めたい。すでに喧嘩を吹っかけているからな。マッサチン国は魏府王国とケリがつくまでは事を構えない」
「問題ないと思いますマスター。しかしギープと本館的に事を構える前にマッサチン国との国境まで戦線を引き上げておくべきだと思います」
スケルトン賢者ことアルテミスが提言する。
「戦線におれがいなくても配下のモンスターを駐留させることは可能か?」
「解りません。マスターがランクアップすればもしかすると・・・」
アルテミスは深々と頭を下げる。
「現状、我々の軍団は接続された地域には一瞬で移動できますのでいたずらに多方面へと作戦を展開しなければ・・・」
菜緒虎が指摘する。
「最悪を想定した方がいい」
菜緒虎の考えを即座に否定しておく。こういう事は都合のいい方に転がらない方が多い。
「申し訳ありません」
「構わない」
頭を下げる菜緒虎に気にするなと手を振る。
とりあえず現在の国境線がどのようになっているのか調査して戦線を北に押し上げつつマーケルにはマッサチン国本国との仲介を取ってもらうか・・・
「そうだ・・・タヌキじゃないムーゲを呼んでくれ」
念じると再び商人ムーゲが現れる。
「お呼びだそうで・・・」
「情報を金で買いたい」
ムーゲの眉毛がびくりと跳ねる。
まず我々の欲しい情報に対して銀貨2枚。有用ならボーナスをつける。
つぎに我々に対して売りたい情報があり興味が引かれるものには銀貨1枚。有用であればボーナスをつける。
これを踏まえ
・このあたり一帯の勢力図が欲しい。特にマッサチン国の国境線情報は高く買う。
・モンスターの分布図が欲しい。ドラゴンの生息は特に高く買う。
・迷宮の情報があれば欲しい。
・建築資材の価格調査。
ついでに建築に詳しい職人や土建に携わることのできる人間の口利きと輸送船の手配も依頼する。
「輸送船は・・・ニーダ族による海賊対策をする必要がありますが?」
「護衛についてはこちらが手配する。すでに一度に5隻沈めてやった」
ムーゲの心配に対し言外に調子に乗ると解ってるよね?と釘を刺しておく。
「そうだ。ムーゲ殿はワ国に少しでもコネはあるかい?」
「ワ国ですか?」
ムーゲはふむと考えるような仕草を見せるので、おれは黙って金貨を一枚ムーゲに投げてよこす。
「私の伯父がかの地で商人として店を開いております。あとで紹介状を書いておきましょう。ただワ国行の船は手配できません」
ムーゲはとても現金な笑顔で答える。
「それに関してはこちらで手を打つ」
「それは本当ですか?であれば私からお願いしたいことが・・・」
一転、ムーゲは縋るような目でこちらを見る。
「お互い良い商売をしようじゃないですか」
とても良い笑顔で返せないのが残念だった。
「菜緒虎。ワ国に向かい繋ぎをつけてくれ。同田貫がワ国伝来の逸品ならその持ち主が異国の亜人類であっても無下には扱われないだろ」
ムーゲが退室したところで机の上に袋をひとつ置いて紐を解く。
「好きに使って構わない」
中から出てきたのは豆粒大の銀塊や金塊。ワ国と手持ちの貨幣価値との差が判らないので地金を渡す。これなら下手に足元を見られることもないだろう。
「承りました・・・」
菜緒虎は静かに頭を下げる。
「そういえば、オークが落とした禍々しい彫刻のされた戦槌があったろ」
「小悪魔の涙という銘の戦槌でした。配下の者に装備できる者がおりませんでしたので倉庫送りにしています」
「そうか」
まぁ職限定かドワーフかオークの専用だろうな・・・
「さて・・・」
席を立ち評定之間を出る。
アルテミスと菜緒虎もそれに続いて評定之間を出る。
中曲輪へ続く門を出たところで簡易召喚で人型の部下をすべてを召喚する。
「簡単に説明しておく。ここが我らの拠点だ」
おーと声が上がる。ふとクワトロの姿が目に入る。・・・なんかクワトロの目が怖いことになっているんだが・・・
「この地が我らの最終防衛ラインとなる訳だが、ご覧のように空き地だ」
ザワザワ・・・ザワザワ・・・
「障害物としていろいろ設置するつもりだが、諸兄らの住居もそういう障害物の一つだと思って欲しい・・・調整には立ち会うが中曲輪での自由な線引きを許可する」
歓声が上がる。
「マスター」
クワトロが決意した顔で片膝を付く。
「我が忠誠を受け取ってください。わたくしキャスパー・レム・マッサチンは故国マッサチンより受けたこの地を発見せよという命令の失敗で第3皇子の地位を失い故国を失いました」
空気が一瞬固まる。
「そうか・・・いずれ対マッサチンの手札として動いてもらうこともあるかもしれないが、
クワトロがここで座る席はクワトロの力で用意しろよ?」
「ありがとうございます」
クワトロは深々と頭を下げる。このあと正体を隠すための仮面をつけた紅い鎧の仮面戦士が戦場を駆けることになる。
ありがとうございます
ブックマークの方が増えました
御礼申し上げます