港湾都市ジャン ※ルビ設定変更
※前回進化したモンスターの図鑑が無かったので追加しました。04/13
※ギープ→魏府に変更
港湾都市ジャン。
それがおれの目の前にある都市の名前だ。
城壁はないが、代わりに建っている建物の壁がどれもそれなりに高い。
材質は切り出された石。ということはこれが城壁の代わりだという事。
しかし港にあるのは中規模な帆船が数隻と港の規模に合っていない。というか街そのものにあまり活気がみられない。どういうことだ?
「こちらへどうぞ・・・」
鎧を着た兵士に先導され小高い丘に建つ館に案内される。
館というよりは砦だな・・・物見用の高い塔があるし警報用の半鐘も見える。壁には矢を射るための穴もある。
「お初にお目にかかります。わたくし辺境にて魔法使いとして召喚術師として研鑽を積んでおりますソウキと申します」
大きな大理石の円卓が設置された部屋の上座に座っていた男に対し深々と頭を下げる。
年のころは50代後半。頭頂部はかなり寂しくその色は黒から銀色に変わっている。
目は猫のように上がっていて鼻は鷲鼻。鍛えられた体は戦士として長く鍛えられていることが分かる。
おれがローブを着たスケルトンという異形なのに男の態度に恐れも蔑みも感じられない。
異種族に対する偏見が無いのかそういう態度を露骨に見せれば災厄をもたらすことを知っているのか・・・
「この度は我が町の危機を救っていただき、この地を預かる領主としてこのマーケル・ドン・ジャクスン御礼申し上げる」
マーケルはわざわざ立ち上がって頭を下げる。
「いえ、あなた達に助勢したのは偶然です。お気になさらないでください」
建前だがここは謙遜しておく。
マーケルが席を勧めたので座る。
続いて同じローブに身を包むスケルトン賢者のアルテミスがおれの右の席に座る。
そして長い金髪を頭のてっぺんでお団子状にまとめた若干のつり目の碧眼、笹穂状の耳のウッドエルフの美女で足軽の菜緒虎がおれの左の席に座る。
この会談を折衝した赤毛の青年は座らず後ろに立っていた。
この扱いにどういう態度を見せるかである程度は底が見えるだろう・・・
「正直、魏府王国の力をバックに沿岸を荒らしまわるニーダ族の横暴には手を焼いていたのです」
マーケルはまったく態度を変えることなく話を切り出す。
そしてマーケルの側に控える数人の文官・武官ともに態度に変化はない。
少なくとも領主を名乗る男以外もそういう偏見は持ち合わせていない様だ。
「失礼ですがマーケル様は貴族ですか?」
「はい。マッサチン国から男爵位をそれがなにか?」
「いえ、ここから西に行った所にある村がオークをリーダーとした一団に襲われていましたので」
それを聞いたマーケルが顔色を変える。領内二か所で異種族の部隊の侵略を受けているのに守りの一手。親分は援軍の一つも寄こさない。
うーむ。どういう勢力図の場所に放り込まれているんだ?
「どちらの状況も把握されていたのですか。実は我が領地はマッサチンと魏府の軍事ストレスを発散する演習場なのです」
マーケルが話し始める。
現在この地では人類が治めるマッサチン国と亜人類が治める魏府王国との間では10年という限定的な不可侵条約が締結されている最中だという。
これは魏府王国がその領土の東海上にある弓状列島国家ワ国との間で関係が悪化した状態にあり魏府王国は後顧の憂いを断つための限定的な処置。
しかしワ国との間で戦端が開かれることなく2年が経っている。
この状況下で魏府王国のなかでも血の気が多い部族を中心に欲求不満が高まってきていた。
それを解決するため魏府王国はこの塩田地をマッサチン国に譲る代わりにマッサチン国から適度な部隊を派遣させ魏府王国の欲求不満のはけ口をやらされているという。
マッサチン国としても塩の安定的な確保は望むことであり、10年の間に本国と塩田の間に防衛拠点を構築できると算段を付けてこの提案に乗ったのだ。
魏府王国はマッサチン国がマーケルの領地との間に拠点なり砦を作っているのを察知すれば血の気の多いのを送って妨害。
ついでにマーケルの領地を西から船で攻めれば援軍は阻止できるし艦隊の練度も鍛えられる・・・
まぁニーダ族の蒲鉾船を5隻すべて轟沈させたので戦力ダウンは確実だろうけど。
「それで、何をお望みですか?」
マーケルはおれが交渉を持ち掛けてきた意図を尋ねる。
まぁ拠点に建築物資を運ぶためにできれば港湾施設は無傷で手に入れたかっただけなんだけど。
「その前に聞きたいことが・・・これだけ大規模な港湾施設がありながら寂れているのはなぜでしょう?」
最初に街に入った時の違和感の理由を尋ねる。
「ここから東と南は謎の障壁のため航行することが出来ません。北はワ国との貿易で財を築いていましたが、ワ国と魏府王国との関係が悪化した10年前から貿易港としての立ち行かなくなりました」
ああ、なるほど魏府王国としてもこの港湾都市は維持ばかりに金がかかるから美味しくないんだ・・・
「とある場所に建築資源を運ぶため、港湾施設をそれなりの期間借り受けたい。むろんそれなりの使用料は払う」
どかっと円卓の上に麻袋を置き、口を開いて中の銀貨を見せる。
いきなり金貨を見せるようなことはしない。
「何をお求めですか?」
「我々に忠誠を誓えとは言わない。が、当分は本国に正直な報告はして欲しくないな・・・それと襲われているところを我々が解放し占領している西の村の所有はどうする?」
とりあえず揺すっておく。この地を無傷で手駒にできるならそれに越したことはない。
「返還していただければありがたいのですが・・・こちらに取り引きできるだけの駒がありません」
なかなか素直である。
「この地点での拠点として暫く駐留することを認めて頂きたい。難民は・・・」
「では難民はこちらで引き受けます」
マーケルは小さく頭を下げる。
「ありがとうございます。村もいずれしかるべき時に返還いたしましょう」
「ありがとうございます。他に何かありますでしょうか?」
「ではこの街の商人と鍛冶師に紹介状をお願いします」
「それはお安い御用です」
マーケルはにっこりと笑った。
マーケルとの会談が終わってジャンを出ると目の前が暗転し拠点である城の評定之間に移動していた。
頭の中に声が響いてくる。
<<召喚できるウッドエルフの上位モンスターハイエルフが召喚できるようになりました。ウッドエルフの召喚を廃止しますか?>>
<<召喚できるオクトパスの上位モンスターエンペラースクウィッドが召喚できるようになりました。オクトパスの召喚を廃止しますか?>>
<<召喚できるスケルトン戦士の上位モンスター死騎士が召喚できるようになりました。スケルトン戦士の召喚を廃止しますか?>>
すべてYを選ぶ。
<<港湾都市ジャンの商人が面会を求めてきました。会いますか>>
会う事にする。
「ムーゲと申します」
タヌキ。そうどこから見ても信楽焼きのタヌキと言って差し支えない容姿の人間が現れた。
「不要なアイテムを引き取ってくれ。売るものは何か?」
「はい」
ムーゲはお品書きと書かれた用紙を差し出す。
装備を買い替えたのは以下の通り
緑っぽい金髪のハイエルフ兄さん 和弓・皮鎧・細剣・鉢金・狼の籠手
赤っぽい金髪のウッドエルフ兄さん 長弓・皮鎧・細剣・鉢金
銀髪のウッドエルフ姉さん 長弓・皮鎧・細剣・鉢金
アーリエル(マーメイド) 三又の銛 胸当て
死騎士 ロングソート・ランス・白鱗のドラゴンシールド・全身鎧
トロール 鎚矛・胸当て
ジャイアント バルディッシュ・胸当て
リザードマン 蒼い肌の男 三又の銛・胸当て
リザードマン 茶色い肌の女 三又の銛・胸当て
一般人 赤毛の青年 ショートソード・皮鎧
一般人 緑髪ショートの娘。 鎚矛・皮鎧
一般人 黒髪ロングの少女 短剣・皮鎧
ゴブリン 斧・皮鎧
巨人族の装備を売っていたのは驚いた。
そして今回、ゴブリンも一人召喚しておいたので追記しておく。
-☆-☆-☆-
名前 ゴブリン
種族 ゴブリン
分類 亜人間
性別 男・女
性格 イビル-カオス
STR:2 INT:1 DEX:2 VIT:2 AGI:4 LUK :1
体力5/5 魔力1/1
能力:なし
魔法:なし
特殊能力:なし
装備:石斧
備考:鈍い緑色の皮膚に潰れたような顔とギョロリとした瞳。地域によっては子鬼と呼ばれる亜人。
力も知識も低くいが繁殖力は強くたまに徒党を組んで村を襲う厄介な隣人。
※性格・能力値はレベル1のときの平均でありレベルによって変動します。
ありがとうございます
ブックマークされた方が6人に増えました
重ねて御礼申し上げます
そろそろ1000アクセス行きそうです