羊皮紙と鍵が示すもの ※ルビ設定変更
「ところでゾンビ鬼が落とした鍵と羊皮紙だが」
ロープに立派な杖をもったスケルトン賢者アルテミスに視線を移す。
「はい・・・どうやらお宝の地図とその鍵です」
・・・数分ほど沈黙が落ちる。
「お館様ありえません。あったとしても確実に罠です」
長い金髪を頭のてっぺんでお団子状にまとめた若干のつり目の碧眼、笹穂状の耳のウッドエルフのお姉さんこと菜緒虎が断言する。
うん。そう思う・・・
同田貫の刺さったゾンビ鬼の指し示す宝なんてどう考えても罠臭い。
「場所は?」
「リフティ海岸のさらに東にある島っぽいですね・・・」
リフティ海岸ってどこだろう?
「クワトロ殿を発見した場所から東に5キロ行ったところにある島ですマスター」
素早く察したアルテミスがすかさず説明する。あぁあそこリフティ海岸っていうんだ・・・
「行くとして船で行くのか?」
「そうなると思います」
・・・罠臭いけどなぁ・・・
「クワトロを召喚できるか?」
質問したところ目の前に身長180前後。短く刈り込まれたオレンジ色の髪に赤い瞳。やや白い肌だがガタイは立派なイケメン男が出現する。
「お呼びでしょうか?」
「まぁ座ってくれ」
クワトロの横にある椅子に視線を送ると小さく頭を下げて着席する。
「記憶はどうかね?」
「はは・・・いまだ芳しくありません」
苦笑いするクワトロの瞳をのぞき込む。たぶん嘘はないように思う。
「あの、失礼ながら・・・雰囲気が変わりましたか?」
クワトロは菜緒虎を値踏みするような目で眺める。
「ほぉ気付くかね?」
「前にお会いしたときと比べて気の張りというのでしょうか・・・」
クワトロは苦笑いする。
「この刀のお蔭で足軽という地位と菜緒虎という名前を頂戴しました」
菜緒虎は同田貫を少し持ち上げ不敵な笑みを浮かべる。
「足軽というと遙か東にあるという弓状列島に存在する伝説の戦士オオナヌシの掛けだしの職業と聞きますが?」
興奮したようにクワトロは尋ねる。それは記憶喪失は偽装と自白する知識の披露のような気がするぞ・・・
しかしこちらの世界にも日本と似たような国があるのか。でオオナヌシってなんだろう・・・
「ずいぶん詳しいな・・・記憶喪失はどのくらいのレベルなんだ?身分を隠したいだけならそう申告してくれ」
クワトロの事情に踏み込んでみる。
「いえ・・・たまたまです・・・」
「ふーん・・・ならこれ以上の情報共有は無しだ。言いたければ歓迎するぞ・・・さがれ」
さっと手を振るとクワトロは姿を消した。
「島に行くぞ」
「マスターの命令には従いますが理由をお教えください・・・」
アルテミスが静かに頭を下げる。
「クワトロの話を聞いたろ?遙か東にあるという弓状列島に足軽の系譜があると」
「はい」
菜緒虎が頷く。
「島にお宝が無くても、菜緒虎を強化できる可能性がある弓状列島へとつながる道は確保しておきたい」
「承りました」
アルテミスと菜緒虎が同時に頭を下げる。
「足軽の情報も追加しておけ」
「それは問題なく」
アルテミスが笑った・・・ように見えたのは気のせいだということにしておこう。
「海ーはー広いなーふふふんふー」
快適な船旅で思わず鼻歌が・・・
今乗っているのは5人が乗れば一杯になる小さな手漕ぎの舟である。
まぁ乗ってるのはおれとアルテミスと菜緒虎の三人だし小さな漁村で調達できる大きな舟なんてこの程度だから仕方ない。
そして舟は漕いでいない。オクトパスが機嫌よく引っ張っている。
そしてその周りを新たに召喚したのも含めて3匹のオクトパスと2匹のミズチが護衛している。
「島ヲ発見シマシタ」
上空で早期警戒していた岩鳥から思念が入ったのでオクトパスに指示して島へと進路をとる。
30分ほど移動すると島の近くまでやってくることが出来た。
「これがそうか・・・」
目の前には切り立った高さ500メートル近い崖が侵入者を拒んでいる。
「岩鳥、ミズチは島の周囲を索敵。オクトパスは舟の周囲を警戒」
応と思念が返ってくる。
「周囲異常アリマセン。全部同ジデス」
「上空異常アリマセン。山デス」
一斉に答えが返ってくる。
「入口すらないのか・・・」
「幻術で隠されてると推察します」
アルテミスからの提言。まぁそうだろ・・・
「鍵をかざしてみてはどうでしょう」
菜緒虎が提言する。
まぁそれが正解か・・・
ごそごそと懐から鍵を取り出す。
するとぺかーと鍵から光が出てとある一か所を指し示す。
「行ってくれ」
船を引いていたオクトパスに命令するとすいすいと光の指し示す場所に移動する。
ぶつかると思った瞬間、舟は崖をすり抜けた。
そこには純和風の城が静かに佇んでいた。
ありがとうございました