詰んで・・・ません
<<保有魔力がモンスターの支配に必要な魔力を上回るまで、配下のモンスターが離反します>>
というメッセージと共に、菜緒虎とクワトロに付けたゴールドドラゴン、クップファードラゴンの第7軍のドラゴンたちが次々とおれの支配から離れる。
「ルノーさま。ソウキ軍のモンスターに異変が見られます」
斥候に出ていた兵士が陣幕内に飛び込んできて大声で報告する。
「我が策なれり」
ノールは小姓が持っていた虹色のランスをつかみ取ると、陣を出る。
「軍馬召喚」
スキルを発動させ軍馬を召喚すると華麗に飛び乗る。
「時はきた全軍突撃を開始せよ!」
と、異変が起きているおれたちを見て、ノールがドヤ顔決めてそうな気がする。
「おお、ノールさまの仰っていた通りだ」
「御告げは正しかった」
チャーシルとルーヅベルトは、クワトロに斬りかかりながら、菜緒虎たちの近くにいたゴールドドラゴン、クップファードラゴンの体色が灰白色に変わるをみて歓喜の声を上げる。
あっという間に菜緒虎が取り囲まれる。
しかし、その隙を見逃すクワトロと地獄騎士バーンではない。
クワトロの細剣が正面からチャーシルの首を、バーンのランスが背後からルーヅベルトの頭を吹っ飛ばした。
<<メリカ領の領主ルーヅベルトを討ち取りました。メリカ領が支配下に入ります>>
「な、なぜ蘇生の護符が作動しない」
辛うじてクワトロの一撃を躱したチャーシルが、頭を吹っ飛ばされてその場に崩れるルーヅベルトを見て叫ぶ。
「お館さまに従属した時点で守護する神が替わったのだよ。前の神様の加護が失われて当然だろ」
離反したゴールドドラゴンに取り囲まれていたハズの菜緒虎が、愛刀である同田貫を鞘に納めながらやってくる。
「て、転移だ!」
チャーシルは籠手を外し、指にしていたチャーシル家当主を意味する家紋を模った指輪を外す。
この指輪は、戦場から指定した場所へ瞬間的に移動するアイテム。
チャーシルは、今回の策をノールから授けられた時に、万が一のとき身を守るための物としてノールから渡されていた。
満面の笑みで顔で指輪を潰すチャーシルに、クワトロは残念そうな微笑みを浮かべる。
「チャーシル。それも対策済みだよ」
それはどうゆう意味だと叫ぶ前に、アイテムは効果を発揮し、チャーシルは指定していた自分の領地の館に瞬間移動する。
飛ばされた場所が館ではなく、瓦礫の山の上だった。
ごう
瓦礫の近くにいた白金色に輝く身体に三つの頭をもつ龍王ギドラの三つの口から、火、氷、腐食ガスのブレスが放たれチャーシルの身体を包み込む。
<<イース領の領主チャーシルを討ち取りました。イース領が支配下に入ります>>
<<イース領が支配下入りしたため本拠地との魔力路が回復しました。>>
<<魔力の供給が再開されます>>
「反乱鎮圧のための領地巡回などつまらん仕事だと思っていたが、確かに儂でなければ致命的なことになっておったな」
ギドラは満足げに頷くと思念を飛ばす。
『終わりました』
「こちらでも魔力の回復を確認したよ。ご苦労さま」
『いえ、お役に立てたようで』
ギドラからの思念に応える。
保有魔力によって配下にできるモンスターの数が上下し保有魔力を越えるとモンスターが裏切るというのは理解はしていた。
そして、真っ先に裏切るのは、召喚したばかりで忠誠心が低いモンスターであることも。
クワトロにチャーシルとルーヅベルトを菜緒虎に忠誠心の低いドラゴンを付けて北西に送り出した後、おれは一度展開した軍団を召喚したばかりの軍団に入れ替えていた。
ノールの策が成功したと見せかけるためだ。
やがて、チャーシルとルーヅベルトは何らかのアイテムの力を借りて裏切り。
魔力が遮断されることで召喚したモンスターの幾らかは離反した。
そして、亀のように陣地に閉じこもっていたアリグナク軍が動き出した。
さあ、始めようか。
ありがとうございました