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06 戦利品とジェネレーター

稼働機を解体して持ち運びやすいパーツに分ける。

さすがに稼働機を一体分丸ごと持ち運ぶのは大変だ。光弾を放つ砲身と、マテリアルを内蔵する基盤部分を回収する。重くて堅いだけのフレーム部分や脚部は放置だ。


多少乱暴に解体して20分。一番貴重なマテリアルはズタ袋に入れて背負ったが、残りはまとめて置いて、帰りに回収だ。

二人の後を追って部屋に入ると、ドリス達は壁にかかっていたたペストリーのいくつかを外してか小さく巻いていた。


ドワーフ文明において、タペストリーや刺繍細工は重要な品だ。ドワーフの住居が掘っただけの洞窟であるため、基本は壁や床はむき出しの土である。

そこで生活する者からすれば、土の壁では味気ないと思うわけだ。しかし、洞窟内に壁を作るほどの財力も権力もないとすれば、見栄えよく飾ろうという事になる。

それ故に、今も昔もドワーフの部屋は大小さまざまなタペストリーや刺繍で飾られる。

それを縫うのはドワーフの女性の仕事であり、すべてのドワーフの女性に許された特権でもある。きれいに刺繍ができる事は、料理上手と並ぶ良妻賢母の代名詞だ。

もちろん、そこには細かい規則がある。誰でも縫ってよい刺繍や、氏族にしか許されない刺繍などだ。

これらをドワーフの女性は常識として小さいころから学ばせられる。

男のオレ達には永遠にわからない分野だ。


「どうだ?」

「安物ばかりよ。一応、系図は見つかったけど、典型的な普通の家ね」


古くからドワーフには自分の先祖や自分たちをタペストリーに刺繍して、代々大事に伝えていく文化がある。家系図みたいなものだ。由緒ある名家ともなれば巨大なものとなり、その価値は跳ね上がる。現在も残るドワーフの先祖のものなら、その家が大金を払って買い取るだろうし、名声や家柄を求める成り上がりなら、子孫の絶えたタペストリーに自分たちを追記させ、子孫を自称しようとしたりもする。

そうでなくとも、旧時代のタペストリーは通常より高値で売れる事がある。今は失われた刺繍方法などで綴られている可能性があるからだ。

その為にはじっくり調べる必要があるのだが、さすがにそこまでしている時間はない。

見栄えの良いものや保存の良いものをドリスが回収してくれている。


ガラハドは所在なげに周囲を見回しているが、仕方ない。お前の仕事は戦闘だからな。

二人をそのままに、オレは見つけた台所へ向かう。

食料品は当然残っているわけがない。食器類もモノによっては良い値で売れるが、普通の個人住宅に高級品がある可能性は低い。

オレの狙いは台所用品だ。

もはや腐敗しつくして原型をなくした食品置き場を無視して、一角に置かれた装置に目をやる。

一見家庭用ビールサーバーのように見えるが、そうではない。

確認のためにコックをひねると、そこから水が流れ落ちる。手ですくって口を付けてみるが、新鮮で冷たい水だ。これは、水を貯める装置ではなく”水を作り出す”装置だ。


旧時代の奇跡ともいえる遺物『ジェネレーター』。無から有を生み出す奇跡の一品である。構造としては、この中にマテリアル(装置の大きさからして小型)があり、そのマテリアルのエネルギーを利用して作り出す。

一般的に普及している水のジェネレーターの他に、食品や衣類、果てはオレの求める人造人間ヒューリーに至るまで、ありとあらゆるものを作るタイプがあるらしい。

もっとも、その構造はいまだに解明されず、ジェネレーターの複製ができたという話は聞かない。その為、旧時代では一般的なこれも、貴重な遺物だ。

一応、マテリアルのエネルギーも有限なので、無限に作り続けられるわけではないらしい。マテリアルの充電期間もあるし、この規模のジェネレーターなら一日バケツ一杯程度だ。

それも、純正であればの話で、状態によっては性能が落ちる。もっとも、使える段階で十分なお宝だ。


ジェネレーターを手に戻ると、ドリスがタペストリーをまとめて背負っている所だ。オレの姿を見ると、準備完了といわんばかりにうなずく。


「稼働するジェネレーターを見つけた。これで十分な額になるはずだ」


オレの言葉に、ドリスとガラハドの表情に笑みが生まれる。

少なくとも、ここまで危険な目にあった価値は十分にあったという事だ。


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