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04 料理と遺跡

いい匂いで目が覚める。

少し目を休める予定が、寝てしまったようだ。とはいえ、食事が完成していない所を見ると、まだ十数分といったところだろう。

坑道のわき道の一つに陣取っての休憩だ。ガラハドは大盾と青銅製の戦槌を手に通路を警戒し、ドリスは腰に同じく青銅製の手斧を下げて、鍋の中をかき回していた。


さて、前にも言ったがドワーフの生活領域は地下世界である。

当然、地上で生活していた前世とは生態系も文化も生活習慣も違う。

光に耐性のないドワーフ故に光を伴う火を使わない。この異世界に火という存在があるのかどうかも不明だ。少なくとも、ドワーフのとして生きて火を見たことはない。

しかし、暖を取ったり熱したりはする。

その場合に使われるのが、発熱材だ。二種類の鉱物を混ぜ合わせたもので、激しくこすり合わせると熱を持つ。使い捨てカイロをさらに高温にしたようなものだ。

熱量はその時使用する発熱材の量で左右される。溶鉱炉などを持つ工房の場合は大量に消費するそうだ。

ちなみに、素材はそこらへんで簡単に入手できるが、不純物が混じると熱量にむらが出来たり変な匂いがするため、貧乏な奴隷くらいしかそんな事はしない。

今回も、匂いに関しては目をつぶろう。


そして、食材もまた地下世界ならではだ。

小麦?米?そんなものはありません。

基本はキノコなどの菌糸類。芋によく似たものもあるがやっぱり菌糸類。まあ植物全般はキノコかカビだ。

肉はモグラを豚くらい大きくした土竜モグラか、ネズミだ。

ウヘェ。とかいうなよ。他にないんだよ。奴隷なんだから偏食じゃ生きていけないんだよ。ちなみに、土竜は家畜化された一種類だけだが、ネズミはなぜかブランド化された高級食材から、貧乏人御用達の土ネズミまで様々だ。


今、発熱材で焼いているのは丸キノコ。その傘の部分だ。乾燥させるとモソモソとした食感の疑似パンみたいな味になる。地下世界では一般的な食べ物だ。乾燥しているので汁気を吸う。その辺もパンに似ている。

蓋つきの鍋で似ているのは、シダ系の細長い植物。麺というよりは糸こんにゃくに近い。それと芋だ。土芋と呼ばれる一般的な芋で、味は里芋に近い。根菜ではなく実際には菌糸類で根に当たる。種イモにはならない。

埋めてバカにされたのは昔の思い出だ。


ついでに、肉も入っている。さっきも言った貧乏人御用達の土ネズミだ。身は細く骨ばかりだが、奴隷にすれば十分ご馳走である。

もちろん、骨から肉をこそげ落とすようなもったいないことはしない。骨ごと美味しくいただきます。ドワーフの歯と胃は特別性である。


ちなみに、調味料は鉱石です。食べられる鉱石というべきか、刺激系の物が多い。

故に、ドワーフ料理は味付けがはっきりしている。和食の料理のような味付けはほとんどない。

これも、モツ煮っぽい味付けである。具はなんだか肉じゃがだけど。

ドワーフ料理とは、素材と調味料で濃い味付けにする。つまり、酒のつまみ系料理だ。


ドワーフ社会の飲料として酒がある。

値段も味もピンからキリまで。基本的にはシダ酒(日本酒っぽい)、芋酒(焼酎)で、安くてそこら中であるのがカビビールだ。もちろん工場なんかじゃなく、各酒場が作って売っているので、味や値段も店によって違う。

緊張によってか乾き気味の喉に、水筒からカビビールを流し込む。奴隷用のビールなので水で薄められているが、すくなくとも水よりは味がある。


パンとスープの食事を胃に流し込み、人心地つく。

さて、準備完了。

これが最後の食事とならないように、気合を入れていこう。




ガラハドを先頭に、坑道を進む。

分かれ道をのぞいてみるが、落盤でふさがれており、基本的に一本道だ。用心のために以前付けた目印も確認している。

と、角を曲がったところでガラハドの足が止まる。

理由はわかる。

そこから道ができているのだ。石畳の床。舗装された道だ。


「この先だ」


オレの言葉に無言でうなずく。盾を構えつつ、さらにゆっくりと前に進む。

その先は枝分かれした坑道だ。違うのは、いくつかの道には扉が付いており、そこがなにがしかの施設だという事だ。


「ここ?」


ドリスが振り返って、一番近い扉を指さす。

オレはポケットからマテリアルを取り出すと、扉の横の壁にかかった小さなプレートに合わせて、起動ボタンを押す。

オレのマテリアルがかすかな駆動音をあげてアプリを動かすが、表示された文字は求めている文字ではなかった。


「ここはダメだ。次を探そう」


オレ達は慎重に進む。扉のない分かれ道は、大盾を構えたガラハドが用心深く覗き込み、問題がないか確認する。

扉があれば、その横のプレートにオレがマテリアルを合わせる。

そんな作業を繰り返して4つ目の扉で、マテリアルに今までとは違う文字が表示される。


「ここだ」


振り返って二人にうなずいて見せる。ガラハドもドリスも真剣な表情でうなずき返した。

腰からスコップを抜くと、ドアノブとドアの隙間に差し込む。

ピッキングなんて技術はない。力技だが、開けば十分。

数分悪戦苦闘したが、カギを壊して扉が開ける。

ガラハドと位置を入れ替えて、中にゆっくりと進んだ。


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