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01 孤児出身の社会階級

ドワーフ社会は氏族社会である。


ドワーフは氏族と呼ばれる一族によってまとまっている。昔の本家と分家の関係を広く枝分かれさせていったものと思えばいいだろう。血縁ではなく社会的な意味で、ひとつの地区がすべて本家と分家の関係で構築されて氏族という集団になっている。

そして、その集団の最小単位。一家というものの役割は氏族によって決められている。

氏族の中の鍛冶屋。氏族の中の農家。鍛冶屋の子は鍛冶屋になるし、農家の子は農家にしかなれない。鍛冶屋の一家が農業をすることは許されていないし、農家が鍛冶屋をすることも許されない。

名前からしてそうだ。氏を除き、ドワーフに姓はない。姓とは職業名だ。鍛冶屋のドノバン。その子は一人前になれば鍛冶屋のバジム。農家のトログ。店名も名前からとる。酒屋のビフルの店は『ビフルの酒屋』だ。『バガムの商会』の持ち主は商人のバガムだ。

それ以外にはなれないし、それ以外になる事は氏族の命令に逆らうという罪だ。

氏族社会において、それほど上位の命令というのは厳しい。


ドワーフ社会の身分は三つに分けられる。

氏族、市民、奴隷の三つだ。氏族は貴族みたいなもので各氏族の直系本家の一族。彼らには氏族の姓名を名乗る権利が与えられる。そんな彼ら氏族の家長である長が集まってドワーフの都市を統治している。

市民は、その氏族に管理される者たちだ。兵士や農民にはじまり、鍛冶屋や鉱夫。ありとあらゆる職業を持つ者たち。

そして、最後が最下層に位置する奴隷だ。

残念ながら金銭で売買される存在ではない。そんな”まとも”な存在ではない。

犯罪者とその子孫。身分の定かならざる者。つまり、ドワーフ社会から放逐された、ドワーフ社会に所属できない者達。金銭で売買される価値のない者達。

その生活は悲惨の一言に尽きる。

まず職業がない。つまり仕事がない。誰かの仕事をしたら犯罪である。結果、彼らは専門の仕事に就けない。誰もやりたがらない雑用で日々を暮らすしかない。

賃金はなく食事だけなんて仕事もザラだ。


そして、なんでこんな話をしているかわかるだろう。


孤児とは親がわからない。つまり、一族がわからない。つまり氏族がわからない。ドワーフ社会は氏族社会である以上、どの氏族かわからないという事は、ドワーフ社会に所属できないという事だ。

つまり、孤児であるオレは、奴隷階級に属するのである。




「じゃあ、お世話になりました」

「…くれぐれも、気を付けるんだよ」


心配そうにこちらを見る孤児院の園長先生に、笑顔で別れを告げる。

奇特にも孤児院なんて職業を、氏族の許可を得て運営するドワーフだ。善人だが、心労が祟りまくりだろう。市民の証拠の編み込みこそされているが、ボサボサのヒゲに、薄い髪。

15歳になったオレは孤児院を出て、かねてよりの目的のために、大博打を打つのだ。

院長には何度もあきらめるように説得されたが、このために準備を進めてきたオレは、意見を変えることはなかった。

たぶん、髪の薄さの数%は、オレのせいだ。ごめんなさい。


だが、それでもオレはこの道を進むしかないのだ。

オレの幼少時代は、読み漁った異世界転生小説を参考にして失敗の連続だった。

農業知識は地球ではない異世界の段階で終了。人生経験でスタートダッシュと思ったが、そもそもの文化が違う。ドワーフの寿命が約200~300年。成人は15~20年だけど、髭の長い(ドワーフ的表現)ドワーフからすれば二十数年なんて誤差だ。

まあ、有利な点は社交性くらいかな。


ヒューリーのメイドを侍らせて、悠々自適に暮らす。しかし、それは簡単な事ではない。

氏族にでも生まれれば、可能ではあったかもしれないが、何を血迷ったかオレが生まれたのは対極の孤児だ。金もコネもない。

さらに、ドワーフ社会では身分制度は固定化しており、身分が違うと結婚すら許されない。身分を超えたロマンスなんて、黒歴史であり美談ですらない。どうしてか聞いたら「家畜と結婚したいとか言い出したら、普通殴ってでも止めるだろ」との事だ。平等という単語は存在しないらしい。

さらに、ドワーフの懲罰制度は集団懲罰である。江戸時代とかにあった、本人が罪を犯したら家族や上司も一緒に罰せられる制度だ。

これがドワーフ社会では当たり前。と言うかこれが出来ない奴は、社会的に認められない。だから、結婚して初めて一人前。家族をもって一人前なわけだ。

孤児は家族がいない為、社会的に認められない奴隷階級になるわけだ。

奴隷同士が結婚したって意味はない。集団懲罰の対象外であり、ただの共犯だからな。

な、詰んでるだろ?

まあ、元々結婚する気もないオレからすれば、どうでもいい話だ。ロリコン辞めますか?人間やめますか?

生まれ変わったら社会がロリコンしているけどオレは、人間を辞めない!!




ドワーフでありながらロリコンではない転生者のセージには夢がある。

人造人間ヒューリーのメイドを侍らせて自堕落に暮らすという夢だ。

しかし、奴隷が長高価なヒューリーを手に入れることは不可能だ。手に入れたとしても奪われて終わりである。

夢の為に、オレは奴隷階級からの脱却をしなければならないのだ。


その為に、オレはトレジャーハンター(遺跡探索者)となった。


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