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夢の中

2005年、都心で庭付き、一戸建てで、築年数もさほど古くも無く、ある一家族が住んでました。

家族構成は、父、母、長男、長女の4人家族でした、父、隆は会社を経営し、母、早苗も料理教室を開くほどの腕前で、近所付き合いもよく、町内の人気者だったのになぜ? 長男は


二十一歳、 長女は、高校3年生、成績も中の上くらいだ。


1977年、 隆は、高校を卒業して運送業に就職、持ち前のやる気と、先を見る目、柔軟な思考能力で、見る見る頭角を表し、あっと言う間に企画部の責任者に抜擢された。


隆の考えた企画は、どれもこれもあたり業績は上がり、収入も破格扱いとなった、その頃、後の妻となる早苗と出会った、早苗は隆より3っ年下のこの時二十歳、隆の猛烈なアプローチ


の末翌年結婚した。


結婚後も二人は、仲つつまじく子供を儲け幸せに暮らしていたが、隆の必要以上の上昇思考で、反感を買う事もしばしばありはしたが、問題なっかた、が、やはり、一から十まで自分の思い通り


にはならず、自分の進路を考え出した。


お得意様のリストをそれとなくまとめ、優秀なスタッフに目星をつけ、自分の野望に向け準備を整え、会社をやめた。


隆が、自分の会社を立ち上げたのは、2000年有名な、お菓子メーカー事件の時効の年で、41歳やる気、気力も十分な時だ、さすが、先を見る能力、入念な段取りがあったお陰で会社


のスタートは上々な滑りだしだ。業績も予想を上回り事業拡大にのりだした。何もかもうまく行ってたが、隆の事を、疎ましく思ってる者もいた、前の会社の重役達だ、お得意様も、


スタッフも引き抜かれ前の会社は経営難に陥っていた。




二人の子供も、なに不自由無く育っていったが、長男は六歳から自閉症なままで、扱いかたが難しい、その点で夫婦で意見が合わない事も度々あった。


長女は、三歳を過ぎてから上手く自分の意見を言えないようだ、しかし、両親の言う事を良く聞き、あまり手の掛からない子供に育っていった。


ちいさい頃は、長女と同じ歳の友達と三人でよく遊んでいたが、事故でその友達が行方不明になった辺りから、この家族の運命はマイナスの方に向かい出した。


子供達の状態も良くも悪くも成らず、月日は流れて行った、  破滅へ



2005年、最近顧客が減り、新規もない、この調子だと経営に大打撃を受けかけない状態になってきた、隆はスタッフ達と連日会議を開いて、打開策を見出そうとしたが、いい案が出な


い、それもそのはず、隆はワンマンで、イエスマンしか優遇してない結果だからだ、なんの打開策も見出せないまま月日は流れ、業績は落ち、瞬く間に経営難に陥った、実は前の会社


の重役達が仕組んだもので、隆は薄々気づいていた、負ける訳にはいかず、犯罪に手を出してまで立て直そうとしたが、時すでに遅し倒産した。莫大な借金を背負い酒に溺れる日々が


続きついに犯罪に手を出す事にした、拳銃の密売だ。しかし何処で密売をすればいいのか? そうだ夜逃げしてこの家で密売しよう、この家は素人じゃわからない隠し部屋がある。







ある日突然その家族は居なくなった






「お、ヤバイ今日中に入金しないと、事務所追い出される」


 そう俺、佐島宗孝は、この事務所を借りて十年いつも金欠だ、財布を持って事務所を出ようとした時、その人は来た。


「すいません、こちら人に言えないことでも相談に乗って貰えると聞いたんですが」


 その人は、よくよく聞き耳を立てないといけないほどのか細い声で聞いてきた。


「はい、そうですけど、実際、法律に触れるような事は出来ませんよ、捕まっちゃいますからね、ハハハ」


と答えると


「調べて貰いたい家があるんですが?」


 うつむきながら聞いてきた、


「え、家ですか?私専門的な知識もないし、わからないですよ、知り合いに設計事務所を開いている人がいるから、紹介しますよ」


 その知り合いの設計事務所を開いている人というのが、俺の事務所の上の階で古くからの友人でもある、広本甲山だ、コイツはどういう訳か知らないが、俺のピンチになると何時も


助けてくれる、  と、言うのも実は・・・・・



話はもどり、


「いえ、家の中を捜索して貰いたいんですが。」


「家の中を捜索?」


「はい」


「いやいや、家の中を捜索ったって空き家ですか?」


 家の中を捜索とは、だれか居るのか?


「実は、三ヶ月ほど前から空き家になってまして・・・」


「ほう、どうして空き家になったんですか?」

 

お、なんか面倒な事か?


「夜逃げです、ある日突然居なくなりました」


「その家に住んでた方は、何をなさってたんですか?」


「会社を経営してました、けど半年前から経営が悪化したらしくて・・・」


 うつむいたまま黙り込んだ。


「そうですか、貴方は、その家に住んでた方とどういう関係ですか?」


 近所の人か、親戚か、会社の人か、もしかして愛人か?


「めぐみちゃんの友達です」


「めぐみちゃん、娘さんですか? 奇遇ですね、僕の妹も、めぐみと言うんですよ。」


「はい」


「家族構成を聞かせて下さい」


「お父さん、お母さん、お兄ちゃん、妹」


「俺の家族と似てるな、捜索ということは、なにを探してもらいたいんですか?」


「居なくなった家族です」


「いや、家族は夜逃げしたんでしょう?」参ったな厄介だな。


「・・・・・・」


事務所のドアが開き、「おい、佐島いるか?」

 

 広本甲山だ


「今、お客さんから依頼を聞いてるんだ。」

  

良い所できてくれたな、ホッと胸を撫で下ろしていると、


「では、捜索お願いします」


と言ってその人は出て行った。


「うわ、住所もわからねぇよ、広本、丁度良い所できてくれたのはいいけどよ。」


「ややこしい、依頼か?」


「ああ、いまいち全体が掴めねぇな、夜逃げした家に、夜逃げした家族を探せとよ。」


「意味がわからんな。」


広本は辺りを見回しながら、植木鉢を見つけ


「これ何植えてるんだ。」


「なに?うちの事務所に植木鉢なんかねぇよ。」


見てみると、土が入っていり、なにか植えてるみたいだ。


「依頼者が持ってきたのか?」


広本はそぉ言うと事務所を出て行った。


「なんだ広本、用事無かったのかよ。」


時計を見ると銀行が閉まる時間が迫っていた。


慌てて、自転車に乗り、銀行に行って何とか入金できた。


その帰り道俺は、今日はさほど用事もないので自転車でブラブラしていた、事務所の反対方向の道を三十分ほど走ると、住宅街に出た、庭付き、一戸建てな家がずらりと並んでいる。


その住宅街を、さらに一時間位ブラブラしてると、日も暮れだし玄関先に明かりが灯り出した。


「まさか玄関先に明かりが灯が付いてない家じゃねぇよな。」


そんなにうまくいく筈もないと思い、走っていると玄関先に植木鉢を置いてある家を見つけた、さっき事務所にあった


植木鉢にそっくりだ、そして灯も付いてない。


「この家か?入ってみるか、けど近所の人に通報されても面倒だし、そんな事言ってたらは入れないし」


どうするか考えていると、携帯が鳴った。


広本からだ、さっきろくに話もせずに別れたのでメシの誘いだと思い、携帯に出るやいなや、


「いつもの焼き鳥屋か?」


すると広本が、


「今どこに居る?なんか変だぞ」


広本はまた事務所に来て、それを見ていた。


「おお、さっきの夜逃げした家さがしてたんだ、多分ここだと思うんだよな、わからんけど、で何が変なのよ。」


「住所も分からないのに、家分かるのか?」


広本はそれを見ながら聞いて来た。


「ああ、この時間に電気も付いてないし、住んでる気配ないしな」


そんなにうまい事、行かないかと思いながら,喋り終わらないうちに広本が、


「見える範囲に植木鉢あるか?」


「あるけどどうした?」


まさかな、そんなにうまい事あるわけないな。


「お前出るとき、植木鉢いくつだった?」


「一個だけどどうした?」


「植木鉢二つになってるぞ」


「なんで?」


「お前すぐ帰って来い。」


声を荒げて広本が言った、ふだんあまり、声を荒げない広本が言うと何かあると直感できた。


「わっかたすぐ帰る。」


携帯を切り塀から少し中の様子を伺ってから事務所に戻ろうとした、


「ん、だれかいるのか?」


人影らしきものが、いや見ていない映像がダイレクトに頭に入ってきたような感覚だ、その瞬間よろけて転んでしまい玄関先の植木鉢を倒してしまった、


中の土は半分ほどこぼれてしまい、その土を手で拾い鉢の中に戻そうとした時何かが出てきた、


「なんだこれは、ガラス? おはじきか? なんで植木鉢の中におはじきがあるんだ。」


 おはじきに触ると悪寒が走ったが、それをポケットに入れて事務所に戻った。


事務所に着くと、広本が俺を待っていた。


「佐島、おまえ大丈夫か? 何ともないか、その後ろの子は誰だ?」


 俺の後ろに指をさしながら広本はいった。


「子供?そんなのしらねえよ。」

 

さっきから悪寒はしている、そう言われてみれば、後ろに何らかの気配は多少感じる、何度も後ろを見たが、やはり何も居ない、広本は何かを悟っ


たのか、子供の事にはそれ以上触れなかった、そのまま俺は広本に誘われるまま、いつもの焼き鳥屋に向かった。いつも繁盛して安い店で今日も満席だ、二人でカウンターに座り、


「大将、ビール2本と適当に見繕って。」


広本が注文した、口には出さないが、俺の後ろが気になるらしい、すぐビールがきた、コップに注ぎ、言葉に出さず乾杯し、飲み出した。



「確かにあの家はちょっとおかしいな。雰囲気が違う、住宅街なのに違う空間のようだ、広本お前何か感づいたのか?」


広本は、焼き鳥に手を出し、口の前まで持っていき、そのまま思わせぶりな口調で俺に聞いてきた。


「その家を見たのは初めてか?」 


「ああそうだ。」


「住所も分からないのによく目星付けられるな。それとも、見えない力で引き寄せられたか?」


「おい、気持ち悪い事言うなよ、お前だって何か感じたんだろ。」


「・・・・・」


広本は何も言わず口に焼き鳥を押し込め、雑踏の中何かを感じてる、俺の後ろが気になるようだ、気持ち悪いのでそれには触れず、広本の都合のいい日に、あの家を捜索しようと、


ダメもとで誘ってみた。すると、


「明後日ならあいているが、それでいいか?」


「いい、いいよ。また俺のわがままに付き合わせる事になってすまんな。この刺青だって。」


俺の右腕と、広本の左腕には刺青が彫られている。三ヶ月前、依頼を受けて彫師の所に探りを入れた事があった。その依頼の内容は、彫師の所に出入りしているヤクザが組の拳銃をど


こかに横流しし、そのヤクザの周辺を探れという依頼だ。ただ彫師に話を聞きにいくと怪しまれるので、刺青を彫ってもらう事にした。彫ってもらいながらそのヤクザの周辺に探り


を入れた。一人では探りきれず広本に応援をたのんだ。


「おい、俺は設計事務所の代表だぞ、刺青入れてどうすんだ。」


「刺青でなくタトゥーと思えばいいじゃないか、今流行りだし、たのむよ。」


いやいやだった広本も刺青が彫られていく内にその刺青を気に入ってきた。結局この依頼は、どこに横流ししているか突き止める前にそのヤクザは何者かに消されてしまった。



明後日になり俺と広本はその家に向かった。家に着き立地条件を見てみると角地で裏に川が流れていた。塀の外から敷地の中を見ていたがそれでは埒があかないので門から入る事にし


た。玄関までのアプローチをゆっくりと進み只ならぬ雰囲気の中玄関に着いた。取っ手に手を掛け回してみると、回った、そのまま俺達は家の中に入り捜索を開始した。一階も二階も


不自然な所も見付けられなかったが、キッチンは一般家庭にはにつかわぬほどスペースを取っていた一旦外に出る事にした。外にでると近所のおばさんらしき人が、寄ってきて、


「不動産の方かしら? 家を調べているのですか?」


とっさに俺は、


「はいそうです、評価価格を付ける為、調べてました、奥さん何かこの家で知ってる事があったら教えてください。」


聞き方によっては警察や探偵と勘ぐられるのを覚悟してきいてみた。


「う〜ん、そうねぇ夜逃げしたみたいよ、三ヶ月くらい前から。」


「ご近所付き合いや、夫婦仲はどうでした?」


「よかったわよ旦那さんは社長さんだし、奥さんは家で料理教室開いていたし、よく家族で出かけてたわよ。」


「料理教室? だからキッチンにあんだけのスペース取ってたのか。」


「けど変なのよねぇ、居ないはずなのに物音がするの。ここら辺じゃ幽霊屋敷っていわれてるの。」


「有難う御座いました。また何か有ったらお願いします。」


お礼をいい、その奥さんは俺達の前から姿を消した。作戦を立て直そうと思い近くの喫茶店に入った。広本はさっきから何やら考え込んで思い立ったかのように、


「わかった、キッチンの下だ。」


「キッチンの下?」


「ああ、恐らくキッチンの下に隠し部屋がある。」


「なんで?」


「料理教室を開いていたんだろ、食材の貯蔵スペースもかなり必要なはずだ。それに裏はすぐ川だ。」


「なるほど、夜逃げしたと見せかけてそこで暮らしてたのか? その可能性はあるな。」


俺達は、日が暮れてからまたその家に向かった、裏の川から見てみると木は生い茂り、夜にそこから進入しようと思えば出来ない事も無い。俺と広本は顔を見合わせ確信したかのよう


に門から家の中に入った。先ほどとは明らかに雰囲気が違った。誰か居る? そう感じ俺達はキッチンに向かった。


「どこだ、どこかに地下へ行く入り口があるはずだ。佐島、ここら辺入念に調べて見ろ。」


広本に言われ調べて見た。やはり広本は頼もしい。なかなか見つからない焦りも出てきた、その時キッチンの入り口で気配がした、見て見ると高校生くらいの女の子が立っていた、


その女の子は俺達を見て、いや俺達で無いものを見てビックリしてたかもしれない。とっさに広本は女の子に飛びつき口を押さえ問い出した。


「この家の子供か? 俺達は物取りじゃねぇ、危害を加えるつもりもねぇ、騒がないと誓えるならこの手を離すが誓えるか?」


女の子は首を縦に振り、暴れる様子も無く広本の言う事を聞いた。だが何かに怯えている様子でもあった。広本が聞いた。


「このキッチンの下に隠し部屋が有るだろう、夜逃げしたと見せかけてここに住んでたのか?家族もそこに居るだろう?」


女の子はその問いに答える事も無く俺を、俺の後ろをみているようだ。ガタン、音がした方を見ると今度は青年が立っている。ビンゴ、やはりキッチンだ。俺はその青年に問いただし


た。しかしその青年は俺を見ようとはしなかった。変だ何か変だ、俺は夢の中ような感覚にとらわれていた。広本が俺に話し掛ける。


「佐島、おい佐島大丈夫か?お前らもう家族は居ないのか? 佐島どうなんだ。」


「ああ、あと父親と母親がいるはずだ。」


頭がクラクラしてる中答えた。するとキッチンの下から父親らしきのが現れた。広本がその人に話しかけようとしたが止めた。その人の右手には拳銃が握り締められていた。


俺は誰に言うとでも無く、何故ここに居るのか? その拳銃はどうした、母親は?聞いて見た。父親らしき人が喋りだした。


「私達はここで、拳銃の密売をしています、犯罪だという事は分かっています。でも、これしか無かった。夜逃げを装いここで暮らすしかなっかった。ここから離れられなかった。」


言ってる事が解らない。夜逃げを装う? ここから離れられない? どういう事だ。俺はまた聞いて見た。


「奥さんは、奥さんはどうしたんだ? 隠し部屋にいるのか?」


父親が、キッチンの片隅にあるストッカーを指した途端子供達は泣き崩れた。


「この中か?この中にいるのか。」


そのストッカーは丁度人が横になって、入れるぐらいの大きさだ。そのストッカーを開けて見ると女性の死体が入っていた。胸の辺りが赤い、凶器は刃物か拳銃かなど考えていると、


「殺した、私が拳銃で胸を撃ちました。しょうが無かった、どうにもならなかった。」


「何故殺したんだ、夫婦仲だってよかったと近所の人が言ってたのに、この子たちの未来だってめちゃくちゃじゃないか。」


俺はいつになく感情があらわになり父親に詰め寄った。  なんだろう、まるで自分の事のように・・・


「経営が傾き私は、必死に業績を上げようと頑張った。しかしスタッフ達と、連日連夜会議をしたがワンマン経営で人材を育成する事をしておらずいい打開策は出なっかった。私一人


の力ではどうにもいかず夜逃げすると決めた。しかし早苗は、この家を夢にまで見たこのキッチンから離れる事ができず、地下の隠し部屋で生活する事に決めました。


 事業の再建をしたい私は、手っ取り早く金になる犯罪に手をだしました。一代であれほどの会社にするには涙ぐましい努力をし裏社会とも付き合い家族にも不自由なくやってこれた


のに、あの時私は有頂天になってた、そんな時少しずつ業績は落ちだした。 その訳は前の会社の重役達だ、さすが海千山千でやってきた人達だ、勢いだけで上り詰めた私を引きずり


降ろす事など猫の手を煩わすより簡単だろう。裏社会とも付き合いがあったので拳銃の密売に手を出した。組の人間と共謀して組の拳銃を横流し最初はうまい事行ってました。


しかし、すぐ金のトラブルで私は組の人間を殺してしまいました。」


拳銃、組の人間を殺した? まさかこの人このあいだの依頼で探していた人か?   奥さんはなぜ?


「どうして奥さんを・・・」


「早苗は私が拳銃の密売をしている事に反対してました、犯罪を犯している私の事が嫌だったみたいです。そして私は早苗を殺してしまいました。私と子供達は地下室、早苗はストッ


カーの中、早苗を置いてこの家を離れる事なんてできません。なぜなら早苗はストッカーから出てキッチンに立つからです。」


「????????ストッカーから出てキッチンに立つてそんなホラー映画みたいな話ある訳無いでしょう。からかってるんですか、それとも地下にしばらくいたから頭がおかしく


なったんですか?」


おれは息を荒立て喰ってかかる様に言い放った。常識で考えればそんな事は無い、この人はきっとおかしくなったんだ。自分に言い聞かせる様に。  父親は俺に向かい、


「それならあなたの後ろにいる子は誰です?」


おれは凍てついた、広本にも言われた、やはり誰かいるのか? そうだ子供達も俺の後ろを気にしてる、何故だどうして、いつ? あの時から調子がおかしい、そうだ初めてこの家を 

見つけたときだ、この家から帰ってから俺は夢の中にいるようだ。なぜ植木鉢の中におはじきが?  おはじき? 俺はおはじきを持ってきた、そのおはじきに何かあるのか?

 

「もう時間です」


なにが時間なんだ、まだ解らない事は山ほどある、この父親から色々聞き出さなければいけない気がした。考えが全てまとまらない内に腹が熱くなった。



俺は腹を撃たれて倒れ込んだ、薄れいく意識の中で走馬灯のようにいままでの記憶がよみがえった、


「もう死ぬんだ、親孝行もろくに出来ず、母さんゴメン」


 広本が俺を抱えそのまま気を失った



体の自由がきかず、目をゆっくり開けると何かの機材に囲まれている、体のあちこちから管が繋がり、声を出そうとした時、俺の手を握り締めてる人がいる、俺が意識を取り戻してる


事にまだ気づいてない


「先生、佐島さんが意識を取り戻したようです、お母さん息子さんが、」


看護師さんが気づいた、母は懸命に俺の名前を呼んでいる


「宗孝、お母さんだよ、わかるかい」


、母は泣きながら俺の名前を呼んでいる、なにやら慌ただしいが、時間の感覚が無い、一分が一時間にも感じられ、一時間が一分にも感じられる


、どうやら病院のICUに居る様だ


「どうやら峠は越したようですね、もう大丈夫です、一般病棟に移しましょう。」


先生が機材の計器や瞳孔、心拍数などを見て判断し、その日の内に病室に移された。



一般病棟の病室は6人部屋で、移されてから、少しづつ体の自由も効き、体の調子を取り戻してくると、あの日の事を思い出した、


「俺は、一体どいう経緯で今ここに居るのだろう、広本は?あの家族はどうなった?」


 声も出るようになってきたので母にその事を聞いてみた。


「母さん、広本はどうした?」


いきなり確信をついた、死んでいたら俺の責任だ、親御さんに申し訳ない、たのむ、生きててくれと念じた。


「広本くん?」


母は不思議そうな顔をしてずっと俺の顔を覗きこんでいた、


「ああ、小学校の時からいつも一緒にいて、俺の事務所の上の階に設計事務所を開いてるヤツだよ。」


なんだよ、母さん年くって物忘れひどくなったのか? あれ、まてよ母さん


六十代なのに若くないか?


「何言ってるの、あんたまだ大学生よ、事務所ってなに、車で衝突したのよ、事故の障害で記憶がおかしくなってるの?」


母は俺が想定外の話をするのでびっくりしていた。


「いや、俺、腹を拳銃で撃たれて担ぎこまれたんだろ?」


パジャマを開いて腹をだすと撃たれた痕がない、右腕を見ても龍の刺青もない、なにがなんだか、分からずパニックになり始


めていた。



もしかして、俺は死んで、魂がほかの人に移ったのか? いや違う、目の前に居るのは母さんだし、俺の名前も合っている、ん、さっき母さん大学生っていってたけど、三十半ばだよ


俺は、


「母さん、今何年?」


「1,992年、あんた21歳だよ、1年間も意識が戻らなかったんだよ、奇跡ってあるもんだねぇ、母さん嬉しいよ」


訳がわからず言葉が出てこない、母は色々この1年間の事や、俺が子供の頃の話をしてくるが、俺はなま返事しかできず、自問自答していた。


夜になり母は家に帰り、消灯時間になり横になっても、まだ考えていたが、ウトウトと眠りにつこうとした時だれかが病室に入ってきた、


「看護師の見回りか、だれかナースコールでもしたか?」


など考えていると、その人は俺のベットの横についた、


「佐島さん、私です。」


「だれ?」


「めぐみちゃんの友達です。」


「あ、依頼の件ですか?ヘマこいちゃってすいません。」

 

 いや、これは夢か、現実か・・・ その人は俺の心を見透かしたように、


「現実です。」


「いや、俺は三十半ばなはずなのに、まだ21歳ですよ、もうなにがなんだか、わかりませんよ。」


「これから起こる事です。」


「これから起こる事ってどう言うことです、あなたは一体何者なんだ?」


「めぐみちゃんの友達です、あなたの妹の。そして忘れる事の出来ない。」


「どう言うことだ。」




 スーと気を失うような感覚がした










 


15年前、俺が6歳、めぐみが3歳、めぐみの友達3歳と、よく遊んでいたママゴトや、かくれんぼ、鬼ごっこ、小さい子供というのは、時々面白い事をする、植木鉢の中に何かの種を蒔い


たといい、水を掛けていた何日も掛けていたが、芽は出なかった、一体何の種を蒔いていたのか?


川で遊んだこともあった、釣りをしたり、石を投げたり、その内川の中に入るようになった、雨が降った翌日も川に行き3人で遊んだ。


「お兄ちゃん、今日は川に入っちゃ危ないよ、やめよう。」


めぐみ達が言うのも聞かず、


「隊長のお兄ちゃんについて来い、大丈夫だ。」


3人で川の中に入った、やはり昨日雨が降ったせいで水嵩がましている、後ろを見ると何とか二人は付いて来ている、もう少しで、向こう岸という所で、めぐみの友達が足を滑らせ流さ


れた。


「めぐみちゃん、お兄ちゃん助けて。」


 叫びながらめぐみの友達は流されていった、俺は怖くなり、めぐみに、友達とは今日遊んでないと口止めをし家に帰った、夜になり友達の母親から電話があったが、俺は白を切った


、とんでもないことをしたと思い、そのまま眠りに付いた、一ヶ月位して、神隠しという事になった、それから広本甲山が現れた。


広本甲山とは馬が合い直ぐ打ち解けた、俺の考えている事も分かり助言などしてくれてまさに人生のパートナーと思える程だった




「広本、広本甲山は何所にいる?アイツが居てくれたら、」


「ここに居ます。」


「居ないじゃないか。」その人は俺を指差した。


「あなたです。」


「意味が分からん、分かるように言え。」


イライラしながら聞いた


「あなたは、あの事件のあと自閉症になり、これ以上心を傷つけないために、もう一人の人格、広本甲山を創りあげた。」


「待ってくれ、俺は二十歳から一年間昏睡状態でこの前目覚めたばかりだ、けど34歳までの記憶もある、夢か?」


「これから起こる事です。」


「広本甲山がもう一人の人格ならこの先どうなる?」


「記憶の通りです、また私に会います。」


「じゃあ、あの家の出来事は、やっぱり拳銃で撃たれるのか?」


「はい」


「でも助かるんだよな、だれか病院に運んでくれるんだよな?」


「・・・・・」


「広本、やっぱり広本はいるんだあの時,広本に抱えられて・・・・・」




 いや広本はいない、もう一つの俺の人格だ、なにもかも、もう一つの記憶が蘇って来たあの時俺は一人だ・・・


あの時俺は・・・・自殺しようとしたんだ、自分で拳銃を腹にあて引き金を引いた、俺が拳銃の密売をしてたんだ、トラブルが起きてもう死ぬしかない、けど死に切れず家の外に出た


「俺の記憶では死んでないけど、その時が来たら死ぬのか?」


その人に問い掛けてみた、


「あの記憶はあなたが生きてれば・・・・」 




 それだけを言いその人は、おはじきが種の、植木鉢を置いて、そのまま病室から出て行った、


「やっぱり、あの家族うちの家族に似ている、もしかして、もう一つの人格が俺の中にあり、あの家族は俺の家族か?もう一つの人格の記憶か?」


この一年間看病してくれたという母、違うあれは俺の母親じゃねぇ、あの時死んだめぐみの友達の母親だ。



俺はこれからどう生きていけばいいのか解らず頭が重くなり、そのまま眠りについた、そう、二度と覚めない眠り、なぜなら俺もあの時川で、溺れて死んでたから・・・・・






















































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