06 真犯人
アレキシスから得た情報は貴重だ、ゲーム時代には気づかなかった上、シャーリーも孤立していたことが原因で噂話や勢力図に関る情報を持っていなかった。
「さ~て、情報源が出てきたところでやっと乙女ゲームらしくなってきたわ」
あのあと、アレキシスは森の中、二人で楽しく藁人形を殴り、今度は丑の刻にやろうと約束して分かれた。学院ではよくある、女子生徒達の一般的な交友だ。まあ、相手の性別は考えないとして・・・外見だけなら女なのだからセーフだ。
藁人形でストレスを発散している間、アレキシスは面白いことを思い出してくれたし。
『そう言えば、さっき話したおばさん、なんか髪の色がピンクだった気がするわ』
『ありがとう、これからはピンク頭に気をつけないといけませんね』
はい、真犯人はアリス母、マティルダに決定。
外見的な特徴はもちろん、彼女には動機がある。可愛い娘がかつての宿敵の娘と同じ学院で同じ学年とくれば早々に手を打ってくるのも頷ける。なによりお母様のときと手口が同じだ。
一度使った手口を二度使うなんて馬鹿もいたものだ。毎回足が付かないように手段を変えるのは虐めの常識だろうに。
だが、となると迂闊にアレキシスみたいな呪使いの誘いに乗って祝福使いと対立するのはまずい。最悪の場合被害が拡大するか、あるいはこの身体の末路がより悲惨なものになるかもしれない。
忘れてはいけないことだが、これはもうゲームではないのだ。なにが起きても不思議ではない。
ここはやっぱりアリスと一度腹を割って話す必要がある。なんとか和解することさえできれば、その後で学院を去っても追い討ちをかけられることはないだろう。そしてアリスを国王に売る。国王は姪に会えてハッピー、アリスは旦那付きで王位継承権を得てハッピー、フット家も没落を回避してハッピー。
これって、万々歳じゃないの!?
そうと決まればまずはお菓子とお茶を仕入れて、アリスのところに行きましょう。
警戒されないように売店で売ってるもので且、第三者が包装したものが良いだろう。毒入りだと警戒されてはまずい。
お菓子とお茶を買って、よし!と思った瞬間足が止る。
さて、なんて言って会いに行こう?
突然シャーリーがお茶しない?と言って部屋を訪ねるのは不自然と通り越して危険な感じすらする。
それにシャーリーだって過去にはアリスとの関係を修復しようとしているのだ。今更自分が策もなく突っ込んでも警戒されるだけだ。
(ああ、アリスを利用して国王の前で手柄を立てられるのに、手が出せないなんて。口惜しい!!)
それでも、和解できることに越したことはない。なんとかチャンスができればいいのだが、自力では無理そうだ。
そう、自力では・・・
なら他人の力でアリスに近づけばいい。
ゲームではアリスには計六人の彼氏候補がいる。この六人はシナリオ上、絶対にアリスとなんらかの面識がある。
最初はその内の三人が攻略可能で後の三人のルートは特定条件をクリアすることで解放される。後者の方だと少しクセがあるので今は前者を利用しよう。
確か、初期から攻略できるのは:アルフレッド、エドワード、ジュリアンの三人だ。
アルフレッド・アーサー・リオンハルトは留学中の隣国の第二王子。金髪碧眼のTHE王子様だ。
エドワード・パーソンズは近衛騎士団長の息子で自身も騎士を目指している。
ジュリアン・ロバーツは三人の中では比較的軟派なタイプで平民の生まれだ。母親は名のある舞台女優で貴族の男性との恋の末にジュリアンを産んだ。
この三人の中からアリスへと続き道を切り開くのが妥当だろう。それにしても男を踏み台にするか、益々悪役っぽくなってきた。
ジュリアン・ロバーツのお母様の名前はもちろん・・・