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ムーンシャイン・ロマンス  作者: 奥沢 一歩(ユニット:蕗字 歩の小説担当)
第一話:我、いかにして、密造者となりしか
1/45

転がる男(前編)


「よい晩だなあ」

 古代の遺跡の柱の上から声がした。


 たしかによい晩だった。振り仰げば一面の星空。針のように細い月が西の空に去り際の光を投げ掛けている。

 その月を背負って声の主はいたのだ。


「そろそろ、味見の時期だとは思わぬか?」

 銀の鈴を転がすような声だった。女、それもとびきり美貌の。

「どうかな、どうだろうかな」

 その女に気のないふうで男が答えた。

 

 倒れた石柱にもたれ、火を焚いていた。日中は汗ばむこともあるほどだが、季節はすでに秋もなかごろ。夜ともなれば否応なく冷えてくる。

 周囲は人気のない荒涼とした丘で、虫の声が耳に痛いほどだ。

 くつくつ、と焚き火の上に設置された三脚の上で、銅鍋が音を立てていた。


「おぬしの酒はうまいからなあ」

 心の底からそう思っているのだろう。

 女がごく真面目に、しかし、重さのない口調で言った。

 そのせいだろうか、言葉には真実味があった。

 

「味見ばかりしていてたら、瓶に詰めるより早くに、なくなってしまう」

 どこか、つっけんどんに男が言った。

 がさがさ、と気ぜわしく火中の薪を火かき棒でかいぐった。火の粉が舞う。

 もしかするとだが、照れているのかもしれなかった。


「飲みたいものよ」

「いますこし」

「出来を確かめようぞ」

「傑作に決まっているさ」


 とりつくしまのない男の態度に、焦れたように女が言った。


「礼ならする。先払いでも……よい」

 ふうわり、と風に舞う薄絹のように、女が石柱から飛び降りた。

 少なく見積もっても高さは八メテルはあった。大の大人四人分超の高さだ。尋常では、ない。

 下手をすると骨を折るかもしれぬ高さだった。


 けれども夜会服姿の女は躊躇なく飛び降り、また、こともなげに着地した。

 こんな時刻に、こんな荒れ果てた場所で。荒れ野に似つかわしくない、貴種の装いだった。


「ひとくち、ひとくちでよいのじゃ」

「ひとくちで済んだことなどあるまい」

「ネロ——おぬし、いじわるじゃ」


 このようなよい晩を、ワインなしですごせるものか。

 なじるように女が言った。こうして近くで聞けば、少し舌足らずで、幼子のように滑舌に甘さがあった。焚き火の投げ掛ける明かりの外にいるせいで、よくは見えないが、背丈も貴婦人と言うには、ずいぶんと小柄に見える。

「なんと言われても、だめだ」

 ネロと呼ばれた男は頑なに拒んだ。

 だが、その声には動揺のようなものがあった。


「……唇で支払おうぞ」


 だめか、と女が訊いた。

「だめだ、だめだ」とネロは言った。唇などで支払ってはいけない、という意味で。

 女が男に唇でする支払いと言ったら、もう、ひとつしかないからだ。

「やはり、だめか」

 ひどく気落ちした声が、光の輪の外から聞こえてきた。

 つまはじきにされ、輪の中にいれてもらえない子供のような声だった。

 固い静寂が落ちた。虫の声だけがしんしんと響き渡る。


「ではっ……わたしの尊厳ではどうか。その……つまり、だな」

 しばらくの沈黙の後、追い詰められたような声がした。

 

 ネロはさじで味加減を見ていた鍋の中身——屑肉のシチューを吹いた。

 熱い!

 舌を火傷した。


「もっと、もっとだめだ!」


「な、なに……、もっとか、ああ、この鬼畜め。足元を見よる」

 きりり、と歯が軋る音がした。盛大な勘違いが両者のあいだにはあるのだが、ネロにはその齟齬を、どう説明すればいいのかわからない。

 

 途端、眼前の闇が盛り上がったようにネロには思えた。

 次の瞬間、炎を飛び越え、女が胸元に飛び込んできた。

「いいであろ、か、覚悟はしたぞ。メルロテルマの全部と引き換えとする。ただしっ、ひとくちとは言わせんぞっ、せめて心ゆくまで飲ませてもらうっ」

 ふわり、と芳醇な薫りがネロの鼻腔をくすぐった。


 極限まで磨かれ、育った土地の持つポテンシャル=テロワールを最大限まで引き出された赤ワイン——スミレの清楚な美しさ、ブラックベリーのさわやかな酸と口中にあふれる滋味。干しアンズの郷愁を誘う甘酸っぱさと、そこに加わる、かすかなリコリス——悲しい思い出の匂い。

 

 そして、トリュッフの蠱惑。


 突き放そうとしたのに、その薫りのせいでネロは、メルロテルマ——メルロを抱きしめて嗅いでしまう。

 ネロが夢に思い描き、探求し続けてきたワインの香り——それは香水ではない。


 メルロの体臭がそうなのだ。

 だから、ネロはこの危険すぎる関係をいまだに切れずにいるのだ。

 

 メルロは震えのくるような美人だった。

 白金のブロンドは緩やかに波打ち、その肌はビスクドールのよう。すっきりと通った鼻筋に、唇は桜貝。そして、その瞳は金緑石のように光の加減で色を変える。

 小柄だがすらりと伸びた体躯に、均整の取れた肢体を持っていた。

 人間離れした完璧な美貌はしかし、文字通り人界のものではない。


 夜魔の姫——それも伯爵の娘。


 それがメルロテルマ・カーサ・ラポストールなのだ。

 その高貴の生まれ、人類の天敵たる貴種の花がいま、ネロの懐中で震えながらそのすべてと引き換えに、ネロの醸した酒を欲している。


 ネロはそのことに動揺する。


 ネロ自身、正しい意味での醸造家ではない。

 醸された酒ももちろん、密造酒の域を出ない。なにしろ葡萄園すら持ってはいないのだ。

 そのネロの醸す酒ときたら、この荒れ放題の丘陵地に自生する——おそらくは、かつて栽培されていた品種が野生化したもの——を摘み集め、樽に放り込んでは遺跡の地下に溜め込み作られる、どぶろくのごとき代物なのだ。

 そのまことに素性もあやしき代物が、メルロを魅了し、あろうことか、その女性としての尊厳をネロに投げ与える覚悟までさせているのだ。


「だめかや」


 ネロの胸元にしがみつき、メルロが訊いた。拒絶されるのでは、と怯え切って震えて。

 ふー、とネロは溜め息をついた。完敗だった。


「わかった」とメルロの申し出を承諾した。


 とたんに、雪が陽光にとけるようにメルロがうれしげに笑うものだから、ネロは汗ばんだ頭を掻くしかできなくなるのだ。

 相応以上の見返りを約束させたはずなのに、なぜか敗けた気分になってネロは小さくかぶりを振る。手に布を取り、銅鍋を火から下ろす。煮すぎて焦がしては元も子もない。


 それからメルロを抱きかかえると、背後にぽっかりと口を開けた遺跡の地下壕——地下迷宮へと足を向けた。

 なにも言われずとも、メルロがその掌中に小さな灯を作ってくれた。

 不思議な緑色の燐光を放つ熱のない光源。

 月の光を集めたものだとメルロは言う。


「気に入ったヤツを、気の済むまで選べよ」


 捨て鉢な気分で、地下へと下りながらネロは言った。

 たぶん、メルロはとっておきを見抜いてしまうだろう、と思いながら。


「だが、今夜は——手加減なしでするからな。もう二度と、こんな条件では割に合わないとオマエが思い知るまで」


 嬲り尽してやる、とそっぽを向いてネロは言った。

 その様子に、くすり、とメルロは笑った。

 なにがおかしい、とネロは息巻く。


「ふふ……だってな……ほんとうのことを言うとだな。わしは、おぬしの『手加減なし』が大好きなのだ。つまりな、これはどちらに転んでも、わしにとって得にしかならぬ取引だったのだよ。ああ——今夜はなんと良い晩じゃろう。最高の酒を選んで良く、おまけに『手加減なし』のお墨付き。よかった、ほんに、人間界に出てきてよかったわい」


 人間の恋人ほどよいものはないなっ、と満足げに笑って、首筋に顔を埋めるのだ。


「いや、メルロ、オマエ、頭の線がどこか切れてるんじゃないのか」

 ネロは夜魔の伯爵息女の正気を、本気で心配する。

 なぜ? と早くもとろんとした目つきでネロを見てメルロは言った。

「いや、もっと、こう淑女たるもの、慎みをだな」

「初めて合ったあの日、わしにどんな『手加減なし』をしたのか憶えていないのか?」

 どうしようもなくさせたのは、おぬしなのだぞ?

 少女のような姿をしたメルロのつややかな口元に妖艶な笑みが浮かび、ネロは魅了されたように言葉を失った。すでに歳数百年を生きる彼女は、わざと髪を結い上げていないのだ。未成熟であるフリをしているのだ。容姿だけは。


「それに……惚れてしもうたのだから仕方あるまい——おぬしの造った酒に」


 当然じゃろう、とメルロはこともなげに言うのだ。

 惚れたのはネロ自身にではないというところに——作品を褒められた誇りと同時に——ちくりと小さな痛みを感じるのは、なぜなのか、ネロ自身わからないから、また困ってしまうのだ。


 初めてメルロと出会ってから、じつはもう半年にもなる。

 それは、うららかな春の午後だった。


 エクストラム法王庁のお膝元、法都:エクストラムの春はことのほか美しい。

 遺跡群の間から咲き乱れるアーモンドの白い花は、法王庁の春の風物詩だ。

 そのやわらかな春の日差しのなかに、メルロは倒れ伏していた。

 フォロ・エクストラーノ——つまり、エスナ河と法王庁エクストラムを見下ろす荒れ果てた遺跡の丘の中腹で、だ。

 そのときの動揺を、ネロはいまでも鮮やかに思い出せる。

 

 美しかった。

 やつれてはいても、その美は際立っていた。

 どこかの貴族令嬢が夜盗、山賊の類いにかどわかされたのではないか、と最初ネロは思ったくらいだ。それから思いなおした。

 いや、貴族の女などと比べ物にならない。


 奇跡のようにメルロは美しかった。


 その肉体から立ち上る芳香に、ネロはたちまち魅了されてしまったのだ。

 清楚で、つつましやかなのに、蠱惑的に男を誘う貴種の蝶。

 メルロは死んでいるように見えた。

 ネロはそれを、死体かもしれないと思いながら抱き上げ、次の瞬間にはその胸元に顔を埋め、メルロの薫りを胸一杯に嗅いでしまっていた。


 変態だ——と指摘されれば弁解の余地がない。


 しかし、さまざまな現象・物質の薫りを嗅ぐことは探求であり、己の表現を広めることである、とは彼の師匠の教えだった。そうでなければ、薬物やガスを特定することもできず、したがって、鑑識も進まない。身につけた香水が事件解決の糸口にさえなる。

 だいいち、ワインを愛するものが、ちょっと世間に変人扱いされたくらいで、己が道を曲げてどうするか! それが酔った師匠の口癖だった。


 だからかどうかわからないが、ネロにとって、いわゆる「くんかくんか」は、もはや肉体に焼つけれれた癖、生理現象的・条件反射的行動なのだった。


「あ、う」

 苦しげにメルロがうめき、その透き通るような睫毛が小さく震えたとき、だからネロの胸は早鐘のように打った。

 まさか、いまの「くんかくんか」を知られてしまったのか、と。

 まさか、自分はこれからこの女性ひとに——天使のように美しい方に——変態呼ばわりされてしまうのか、と。


 実際、ネロの人生は転落の一途を辿っていた。

 年明け早々、騎士団をクビになった。

 失礼、正確を期さねばならない。聖堂騎士団予備軍——つまり従士隊を、だ。

 当時ネロは二十三歳だった。いまは二十四歳だから——もう一年近くアウトロー生活を続けていることになる。

 法王庁直属の聖堂騎士団には、大きくわけて三つの段階がある。


 まず、その頂点であり、異能力者集団である聖騎士団。これは常時、二十名ほどしか席がない。この世界:ワールズエンデ——ゾディアック大陸での異能力は、その発動に《スピンドル》と呼ばれるエネルギーが関与している。


 法王庁の教えではヒトの《意志》と神のそれを繋げる鍵のようなものだそうだ。


 一万人に一人、発現があるかないかという希少な才能で、だから、この法都:エクストラム全域を探しても、《スピンドル》能力者は百人もいるかどうかわからない、というわけだ。

 その希少な百人のなかから、人格、家柄、戦技、乗馬、語学、礼節、忠誠、信仰心、その他もろもろの厳しすぎる選抜試験を潜り抜けた者だけが晴れて聖騎士:パラディンを名乗ることができる。

 真に天才だけが潜り抜けられる関門とはこのことだ。


 第二に聖堂騎士団。法王庁の直属騎士団は約五〇〇名から成り立つ。

 常人でもかまわない——《スピンドル》能力者である必要はないが、これもまた狭き門だ。

 戦技だけでは当然だめで、社会常識や、上級階級での礼儀作法、読み書き、語学においても最低——母国語と古典である〈エフタル〉は流暢でなければならない。

 体力試験の「二日間、プレートメイル着用のまま生活せよ」だけでも気でも狂っているのかと思うほどだ。大したことがないと思われる向きには総重量三十ギロスの体格矯正スーツを四十八時間、着用し続けることを一度、お試しねがいたい。

 こちらもまた二十のなかばまでに合格できれば秀才、と言われる。


 最後がネロの属していた従士隊——だいたい、一五〇〇人くらいはいるのだろうか。

 騎士になるための予備段階であり、毎日そのための専門的学業と試験を受けることができる階級だ。専用の宿舎もあり一日三食の食事に午後のお茶、月一回は貴族令嬢を招いての夜会——これは上流階級に馴れるための訓練だが——まであり、騎士の養成コースとすると、なかなか徹底している。


 法王庁の城壁の外には——前法王:マジェスト六世の治世によって相当に改善されたとはいえ——貧民街が広がっていることを考えれば至れり尽くせりの生活だが、じつはその資金の多くは自前で調達しなければならない。

 一応、奨学金制度、従士募金などが存在するのだがこれは公費であり、いずれ騎士となった暁に返済するか、従軍時の給金から天引きで返済しなければならない。

 もちろん日夜訓練に明け暮れる従士だから、現金収入の道は限られる。

 特殊なアルバイトの口でも見つけられない限り、実家からの仕送りがすべてだ。


 さて、すこし前に、従士は従軍しなければならないと書いた。


 わりと重要なことなので、これも簡単に説明しておこう。

 これには重要な意味がある——そう、従士は騎士とともに従軍の義務があり、これはつまり常備軍に近い性格を持つ集団でもあるのだ。

 小国家が入り乱れる法王庁周辺:イダレイア半島では、現在でも依然として国家同士の戦争では傭兵隊が主力であり、領主の率いる騎士団だけが、いわゆる正規戦力であることが多い。

 つまり、戦争で闘う者の多くは自国民ではない、雇われの兵隊さんが努めているのが現状だ。


 なぜか、と問われても、ネロは困ってしまう。


 つまり、どうして自国民が戦わないのか、という問いに対してだ。

 ひとつには、たぶんそれが王族・貴族の陣取りゲームに過ぎないことを国民が知っているから。

 もうひとつは戦争は壊したり、略奪したりしているだけで——田畑を耕したり、雑草を引き抜き害虫を追っ払ったり、種を蒔いて穀物を育てたり、果樹園や牛や羊の世話をしているわけではないから、だろう。

 つまり、だれが「兵隊さん」たちを食わせてやっているんだ、という話だ。


 そんなわけでエクストラム法王庁の、この「従士隊」というのは非常に特異で先進的な——気が狂った——制度とも言えた。

 それまで各家の騎士たちが貴族子弟や富農の三男などを受け入れて育成していた従士を、ご丁寧にも国が一括で育てようというのだから。その上、抜かりなく兵隊を育て、維持するためにかかるコストを「兵隊とその家族」に賄わせようというのだから、なかなか聖職者というのは欲の皮が張っている。


 坊主丸儲け、とはよく言ったものだ。


 ちなみに、このゾディアック大陸の一般的な戦記で「騎士団一千騎」と描かれた場合、そこに従軍した槍持ち、つまり従士は員数に含まれていないことが多い。騎士団一千騎には、二千から三千の随伴歩兵が「歩かずに走って」お供するのが世間の相場だ。槍を担いで。防具は胸当ひとつで。

 しかも、装備もエクストラムの従士隊では「歩兵さんの自前」だ。

 売店で売っているのを買うのだ。戦時までに槍と胸当が揃えられないと退団だ。

 そして、ネロは富農の三男坊だった。


         ※


「オマエ、騎士になれ」

 父親に衝撃的命令を受けたのは、ネロ、十八の秋だった。

「は?」

 ネロは親父の頭を疑った。


 真面目な農夫だった。財産はあり、それなりの農耕地も持っていた。葡萄園があり、この地を治める領主からワイン製造の免状も代々、戴いてきた。つまり、ネロの一家は領主お墨付きのワイン醸造家だったのだ。経営も悪くなかった。

 ただ、この如才ない親父のたったひとつの欠点は、ヒトを見る目がなかったことだ。


「兄さんが帰ってきたからな。その……二番目の兄さん……つまりダリルとジョゼに農地をわけるとオマエの分が出ないんだ」

「いや、親父、ジョゼ兄はともかく、ダリル兄は——悪いけど農家はできないよ」


 ダリルは放蕩癖があり、家の金を持ち出して飛び出し、劇作家になるとかいって出ていったあと、三年して夢破れ、出戻ってきたばかりだった。


「すまん」


 どうやら、親父のなかでは決定事項らしかった。

 長男を優遇するのは、この時代の慣例ではあったのだ。

 ネロは農家が嫌いではなかった。富農であり、生活に余裕があったということももちろんある。だが、それだけでは、決してなかった。

 醸造にネロは興味があり、また天稟の才があった。

 ワインは奥深く、その醸造は神秘的でさえあった。

 ただの果汁が、どうしてこんな素晴らしい芳香と、えもいえぬ酔い心地を獲得するのか——その秘密を解き明かしたかった。ネロは他の農地をすべて次男であるジョゼに渡してでもいいから、この葡萄園と醸造蔵だけは譲り受けたかった。

 だのに、だ。

「オマエ、騎士道物語ロマンス好きだったろう?」

 幼い頃のネロの嗜好を持ち出して親父は言ったのだ。

「うそん」

 その三文字だけがネロに許された反論だった。


         ※


 それから、法王庁に出向き、五年間、ネロは従士隊に所属した。

 もともと読み書きができ、〈エフタル〉も基礎を学んでいたから、学業的な面でネロは他の従士たちに対してスタートで勝っていた。

 なにより研究熱心だった。それはワイン醸造の基礎をずっと研究してきたからだ。

 錬金術をその根底とする錬金学的知識を従士隊の特別コースで専攻し、教授には「才能がある」と太鼓判を押された。


 むしろ苦戦したのは戦技のほうだ。

 体力的には農作業で培った肉体がどれほどの荒事に耐えられるのか、その土台としての肉体の強さを知ったが、戦技は技術でもある。これがなかなかくせ者だった。

 学業面ではトップクラスだが、戦技となると中間の辺りを抜けられない。

 だから、この五年間はほとんど戦技の獲得に努めたようなものだ。

 前年、戦技絡みで惜しくも選考から外れ、今年こそはと期待をかけた年だった。


「来年は——仕送りできない?」


 そんな手紙が送られてきた。実家のワイン蔵が腐蔵を出したのだ。

 三分の一は神さまのもの、もう三分の一は病と虫に、最後の三分の一だけがワインになる——醸造家たちに伝わる教訓話は冗談とはちがう。それほどにワイン造りはハイリスクな、一種の賭事——デカダンスだった。

 やり直しはきかない。やり直そうにも、原材料の葡萄は翌年になるまで手に入らない。

 すべてが一発勝負。だから、新酒の出来栄えを農民たちは祝うのだ。


 その蔵が腐蔵を出してしまった(ここでの腐蔵は、雑菌が混入し繁殖=ブショネしたほどの意で)。


 木樽の管理がおろそかだったのか、醸造途中でよからぬものが混入したのだ。あろうことか、蔵の樽のほとんどで、とても売り物にはならないワインが出来てしまったのだ。

 腑抜けたダリルの顔が脳裏を過った。

 怠け者にワイン農家は務まらない。

 ワインはなにより、その人間の働きだけを視ているからだ。

 と、いうことはこの従士隊にとどまっていられるのは今年一杯、少ない貯蓄をやりくりしても来年の春までだろうとネロは頭で算盤を弾いた。

 それでも親父を恨む気にはなれなかった。

 少なくとも五年間、少なくない仕送りをしてくれたのだ。

 ただ、平均的な騎士昇格にかかる年数が十年だということをわかっていなかっただけなのだ。


 晩秋の朱の柊騎士賞、年明けの青の六花騎士賞と選抜試験は、ネロの期限までに、あと二回チャンスをくれる。春まで粘れれば、白の扁桃騎士賞を受けることも不可能ではない。

 やるしかないか、とネロも覚悟を決めた。

 その直後だった。高熱と悪寒でネロは倒れた。みるみる痩せ細り、医者にも匙を投げられた。このままでは選抜試験どころか、アルバイトさえこなせない。高熱は一月にもおよんだ。自分はこのまま死ぬのだろうとネロは思った。

 初雪の降った朝、唐突に熱は去った。

 そして、ネロはその才能を開花させていた。

 そう——《スピンドル》だ。


 その発現を伝えたときの戦技教官の驚愕した顔が忘れられない。

 統計学的な話だけを言えば、《スピンドル》能力者、いわゆる能力者スピナーは、貴族階級に集中していた。

 これはやはり青き血、高貴の血にその要素があるものだと認知されており、さらに発現は十代に限られる。

 これは、すでに定説であった。


 そこにきてどこの馬の骨とも知れぬ農夫のせがれ、それも薹の立った——が《スピンドル》を発現させたのだ。


 これは、事件だった。

 もしかしたら、史上初、農民出身の聖騎士が誕生するかもしれなかった。

 

 折りも折り、今年の頭、聖騎士への登用試験に合格した弱冠十八歳の少年騎士、希代の天才と謳われるバラージェ家の御曹司に続いての新星誕生か、と騒がれたものである。

 

 もっとも、御曹司のほうは昨年の草摺賞(六月)で騎士団入りし、その翌年、つまり今年頭の六花賞での挑戦で聖騎士という異例のスピード。ネロはともかく騎士団へ入らなければならないのだから格が違った。

 

 だが、不思議なことに自分よりずっと年下の大先輩と、ネロは顔見知りだった。

 まだ、従士だった御曹司がネロと同じ錬金学コースを専攻していたからだ。

 

 アシュレダウ、と御曹司は名乗った。

 従士という身分のなかでは、世俗の階級は一切関係がなくなる——そういう建前が従士隊には存在する。

 むろん、それはただの建前で、実際には貴族子弟というだけで、なにかと優遇される。

 金銭の余裕はもちろんだが、戦技教官からの指導も偏重気味だし、なによりキツイのは練金学などの貴重な薬品や鉱物、機材などを彼らが独占してしまうことだ。


 平民や下層階級出身の従士たちは、彼ら貴族子弟がやっている実験を見学することは許されるが、実験に参加することは許されない。実践という、もっとも大事な経験のチャンスを奪われているのだ。

 その日も、先に子分を実験教室に潜り込ませておいた貴族たちが機材を独占してしまった。

 小金で餌付けされた平民従士が数名、腰ぎんちゃくになっているのは通例だった。

 そこにアシュレダウが割って入った。


「バラージェ家のアシュレダウです。どうか、機材と薬剤を一式、お貸し願いたい」


 少女のように美しい、優男然とした外見からは考えられないほどはつらつとした声が、背筋を伸ばしたアシュレダウの口から響き渡った。

 

 貴族子弟たちは一様に顔を見合わせたが、ややあってアシュレダウの要求通り、機材と薬剤一式を渡した。バラージェ家と言えば、第十一次十字軍の英雄である聖騎士:グレスナウを輩出した超名門である。当時まだ枢機卿であり、のちに法王となったマジェスト六世とも親交が厚いという話だった。

 

 アシュレダウは、そのグレスナウの一人息子だった。

 アシュレダウは機材一式の礼を丁寧に述べると、それを平民サイドの机の上に据えさせた。それから言った。

「さっそくはじめましょう」と。

 だが、平民サイドの反応は冷ややかだった。

 ひとつににはこの従士隊内部のパワーバランス、お家事情をわきまえぬお坊ちゃまに対する冷笑、それから貴族のお情けにすがるような真似ができるか、という反抗心だった。

 子供っぽい理屈だが、無理もない。従士隊の平均年齢は十代後半なのだ。


 だれかが、それを声に出した。人垣の後ろから。

「平等なんて建前なんですよ、お坊ちゃま。それに、貴族さまがたの実験を見せていただけるだけで、わたしら満足なんですから! 爆発したときも貴族さまが盾になってくださるもんで!」


 どっと起こった嘲笑を、アシュレダウは目をつむって静かに聞き流した。

 それから笑いが止むのを待ってから、静かに言った。

 

「それもまた、建前でしょうに?」と。

 目の前に欲するものがあって、手を伸ばせば届くのに、貴族のお情けだという理由であなた方はそのチャンスをみすみす逃してしまえるのですか、と。

 あなた方は、ちっぽけな自尊心と、いま本当に自分が成さねば成らないことを秤にかけて、それでも自尊心を選ぶのですか、と。


 建前で人生を棒に振ってしまってよいのですか、と。


 発作的な笑いがネロの口をついたのは、このときだった。

「まいった、こりゃ、完全にオレらの負けだわ」

 コイツ、本物だ、と席に着きながらネロは思った。本物の英雄の血筋だ、と認めて。

 

 ニコリ、とアシュレダウが笑い、席に着いてから握手を求めてきた。

 

 貴族側から農夫に握手を求めることなど、考えられなかった時代のことだ。

 最前列にいたネロが席に着いたことで、風向きがガラリと変わった。

 それで、ネロはアシュレダウを個人的な知己としたのだ。


 アシュレダウはわずか一年で従士隊を卒業し、騎士として出世コースに乗ったが、まああれほどの英傑なら当然だろうな、とネロは感心するばかりで嫉妬心さえ抱かなかった。

 だが、雲上の人物としか思えなかったアシュレダウと、ネロも《スピンドル》能力者となれば、条件は同じはずだ。


 同じ場所で肩を並べて戦える日が来るかもしれない、とネロは甘い夢を見たのだ。


 アシュレダウの配属先は聖遺物管理課——聖遺物の管理・保管だけではなく、奪還や、そしてときには聖人の認定に出向くことさえある——は、一種の特殊捜査官、エリート中のエリートであった。

 美貌の少年騎士:アシュレダウとともに錬金学的知識を用いてことの真偽に迫る捜査官姿の自分を夢想して、ネロは胸の昂ぶりを押さえられなくなった。

 なにやら歌劇の主人公のごときではないか。


 甘かった。


 結論から言うとネロは女性絡みのスキャンダルと、そこから発展した傷害事件の首謀者として騎士登用試験直後——結果発表前に退団を命じられたのである。

 同志——従士隊内部の人間に《スピンドル》能力で、ケガを負わせた可能性を指摘された。

 例のアシュレダウとの一件以来、ネロは貴族階級に目をつけられていて、そこに来ての《スピンドル》能力発現だ。


 やっかみを買ったのだ。


 実際は十対一の袋だたきに遭いかけたのだ。正当防衛だった。

 だが陰謀だ、謀略だというネロの主張は聞き入れられることはなかった。

 

 探索者ギルド——スパイラルベインへの登録とさらに刻印を受け、放り出されたのは元旦だった。

 さんざん門の前で怒鳴ったり喚いたりしたが聞き入れられず、管理官に付き添われ、しょぼくれて、しんしんと雪の降る坂道を下っていったのを憶えている。


 スパイラルベインは“螺旋監獄”の別名を持つ組織・施設だ。

 パラディンやほかの重役に着く能力者ほど強力ではないか、あるいは人格的、素行的に問題があるため役職に着くことができなかった者たちを管理する組織とその基部となる施設を表し、その元締めは他ならぬ法王庁だ。


 管理されない能力者の異能は、たとえそれが飛び抜けていなくとも、一般社会にとって充分な脅威となる。また、さまざまな事情で社会からはじき出された異能者を放置しておけば、犯罪の温床となりかねない。

 ゆえに、法王庁から下げ渡される表沙汰にできない種類の仕事を斡旋し、その見返りを金銭で支払うことで社会に適応可能な存在とする、というのがスパイラルベインの存在意義だ。

 管理された犯罪結社、とでも言えばわかりやすいだろうか? 現在、エクストラム市中で十数名の登録がある。

 つまり、裏方の汚れ仕事を請け負うなんでも屋、それがスパイラルベインなのだ。

 依頼の遂行に関連するさまざまな特権——密売、密輸、密造、恐喝にちょっとした暴力――さまざまな軽犯罪の黙認を得る替わりに一生消えない刻印を背中に穿たれる。

 死ぬまで足抜け不可の奴隷契約だ。

 届け出なし、許可なしで月一度の出頭義務を怠ると背中の刻印が顎門となり、オマエを噛み殺す、と脅された。


 とりあえず、市中には住めない、とネロは思った。

 顔見知りが多すぎる。生き恥をさらしているところを見られたくない。

 だが、貧民街は怖すぎる。追い剥ぎや強盗に遭い、得体の知れない雑炊と引き換えに男の貞操を奪われる姿がまざまざと脳裏を過った。いやだ、だめだ。

 どこか女のところに転がり込んでヒモになるのがイチバンなのだが、そこまでの度胸がネロにはない。

 しかたなく、かねてから密造の拠点に使っていたフォロ・エクストラーノの遺跡群を、寝床に決めた。密造酒はネロのふたつあるアルバイト口のひとつだった。

 寒さと惨めさで震えながら泣いた。

 鼻水が止まらなかった。

 オレの人生はどうなっているんだ、と神に恨みごとを言った。


 一月、二月はひどすぎて思い出したくもない。

 すこし寒さが和らぎ、アウトロー生活にも馴れ、ひとつふたつと裏方仕事をこなした三月——まだ、まだ生きている、と思った。

 そこに、四月の陽光を伴ってメルロが現われたのだ。


 無防備な姿で、横たわって。


 ついにオレは幻覚を見るようになったのだ、とネロの口元からおかしな感じのうふふ笑いが漏れたとて、それは仕方のないことだったはずだ。

 女日照りで、餓えすぎて、こんな願望・淫望丸出しの恥ずべき幻覚を見てしまっているのだ、そうだ、そうにちがいない。

「おねがい、ひとくち、ひとくちだけ、飲ませてください」

 可憐な少女:メルロは、ネロの壊れそうな理性が起させる挙動不審をものともせず、身体をあずけたまま懇願した。


 飲ませますとも、と「飲む」と言えばそれはワインのことであるとしか思いつかないネロは革袋のワインを取り出し、メルロに直接、飲ませてやった。


 ああ、というメルロのため息は官能のそれに他ならなかった。

「おいし」

 そう言うと、メルロはもうひとくち、もうひとくちと飲んだ。

 そしてついに大きな革袋ひとつ分、飲み干してしまった。


 思えばこのとき、ネロは「ちょっとへんだな」とくらいは思うべきだった。


 事態は実は大変におかしかったのだが。


 だが、ネロ自作の赤ワインを飲み下すたび、その白い喉がこくりこくりと波打ち、蒼白だった頬がバラ色に染まり、官能のため息をくり返し胸元にすがりついてくるメルロの願いをネロは拒めなくなっていたのだ。

「あぶないところでした……もう、一週間も飲んでいなかったもので。飢餓状態に浴びる陽光の強さを侮っていました」

「いや、どうということはありませんよ」


 ネロはどうやら先ほどまで行ってしまっていた変態的行為は見逃されたものだと思い、安堵の溜息をついた。それどころか、この令嬢は自分に恩義を感じてくれているらしい。


「わたくしったら、ぜんぶ、飲み干してしまいましたのね」

 なんてはしたない、と耳まで朱に染めるメルロの可愛らしさにネロは魅了された。

「高価なものだったのでしょう?」

「いえっ、こんなもんは、そのっ、わたしの自作ですからっ」

「自作っ!」

 がばりっ、と突然俄然、メルロが食いついてきた。

「ではっ、ワイン農家の方っ?」

 きらきらきらっ、とへんな幻覚がネロの眼中に舞った。

「いやー、葡萄は自生のものを使ってますし……純粋醸造家……なんちゃって」

「専門の、ワイン専門の醸造家ッ!」

 あっ、あああっ、わたくし、わたくし、どうにかなってしまいそう、とさきほどのきらきらエフェクトをまき散らしながら、エビ反りにメルロが倒れ込む。


 法王庁が掲げるイクス正教では赤ワインは聖イクスの血液だとして扱われるし、上流階級では至高の液体としてワインを崇める風潮があるのだとネロは知っていた。

 だから、メルロがそのワインを手ずから生み出す醸造家に向ける憧憬の眼差しを、ネロは理解できた。芸術家が受ける尊敬とそれは同じものなのだ。

 ネロは倒れ込むメルロをすんでで受け止めた。


 歌劇みたいだった。たぶん、ちょっと筋立てのおかしい。


「もしかして、工房には……まだまだ、いまみたいなのがありますのっ?」

「はあ、まあ、たぶん、五年前のヤツもまだ残っていたような」

 達する直前のようにメルロは身を捩らせ、呼吸を荒くしていた。


「あのっ、初対面で大変ぶしつけなのですが——その工房を、見せてはいただけませんこと? それに、あのっ、このっ、命を助けていただいたお礼を是非にともしなければ、いえっ、ぜひっ、ぜひっ、させてくださいませ!」

 申し遅れました、わたくし、メルロテルマと申しますとこのとき初めてネロはメルロの名を知ったのだ。


「ネロ・ダーヴォラ、と申します。レディ・メルロテルマ」

「メルロと呼んでくださいまし」

 いま考えればこのときのメルロは相当にネコをかぶっていたのだな、とネロは思う。

 いや、それはネロのほうも同じだった。

「立てますか?」

 ネロの問いに、あっ、とよろめいてメルロはすがりついてきた。


 さきほどまで、エビ反っていたりしていたのだが?


 だが、ネロもまたメルロを横抱き——いわゆるお姫さま抱っこにして立ち上がった。

 従士隊の訓練が、いまここで役に立った。

「あの」と抱きかかえられ、ネロの首筋に顔を埋めながらメルロが囁いた。

 ぽしょぽしょ、と恥ずかしそうに。

「なんでしょう、メルロ」

「お礼をさしあげたい、と申しましたのに、わたくし、さしあげるべきものを持っておりませんの——」

「そんな、礼など」と言いかけたネロより早く、メルロは言った。


「わたくし自身以外」


 えっ、となかば期待し、いやそれはオレのダメな感じのセクシャル・ファンタジーだ、それこそロマンスの読みすぎだと暴走しかける衝動や下半身やらとせめぎ合っていたネロの理性が、続くメルロのセリフでぶちり、と切れた。


「なにぶん初めてで、不慣れですが、一生懸命ご奉仕しますから——わたくしで贖えますでしょうか?」


 ほとんど泣きながら、申し訳なさそうに囁くメルロの可愛らしさに、ネロは思わず抱く手に力を込めてしまった。

 洗い立ての毛布とシーツを準備していたことに、ネロはこれほど感謝したことはなかった。


「充分——充分すぎるお礼です」

「ほんとうですか——うれしい。ネロさまが満足されるまで、メルロを……お使いくださいましね。どんな、どんなご要望でも、メルロ……あの……がんばりますから」

 もちろん、工房を見せていただいたお礼は、別でさせていただきます、と馬鹿な男のファンタジーそのままのセリフをメルロが言うにおよんで、ネロのなけなしの理性は泥酔したあげく、荒くれ馬に乗せられ翻弄される鞍上の羊飼いみたいになっていた。


 おまけに、その馬が悪夢ナイトメアだと気がつきもせずに、ネロはいたのだ。

 




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