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ふぁんたじーわーるど  作者: あっぽ
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ようやく。


「こ、この大きさならアンタも一緒に寝れるわ!し、仕方ないじゃない!?」


明らかに動揺している顔と照れ混じりな声で何をそんなに緊張してるか分からないが、所詮一緒に寝るくらいだろ何言ってんだ。ん?一緒に寝る?


「ああ、そうか。お前らがいいなら別に気にしないぞ」


 ルカからすれば大胆な事かもしれないが、毎朝起こしにいってる俺からすれば大差ない。むしろこいつらが嫌がると思って口に出さなかっただけであり、一人用を三人で使うのもどうかと思っただけだしな。


「私は全然おっけー。異性と初めて一緒に寝るんだよ?なんだかワクワクしない?」


緊張しているルカとは裏腹に真由花は楽しみなようだが、俺はすぐ寝たい人間なので、学生の修学旅行の夜のみたいな会話にはならないことだろう。やるならどうぞ二人でやっててくださいと言わんばかりの考えだ。


「ちゃんと体休めとけよ?そうと決まれば俺は寝るからな、おやすみ」


 口早に挨拶をし、早速寝てやろうと自分で張ったテントの布を持ち上げ中を確認したが、どうやって寝たらいいんだろうか。ホテルのベッドのような綺麗さがあるが、掛け布団や毛布の類は一切存在しない為、寝返りなどを打てばそのままあいつ等に触れてしまう。

俺自分の寝相がいいのか悪いのかも分からない。もし俺がよくてもどちらかが寝相が悪かったら朝が怖い、どちらに転んでも俺に得はないみたいなので諦めて今は休むことにした。


「なぁ、どうやって寝る?」


この場合男の俺が決めてもなんだかあれなので、一応訊ねる。



「き、奇遇ね?私もそう思っていたのよ......」


同じ気持ちを持つものがもう一人いて安心したが、もう一方の奴は既に答えは決まっているようであった



「一人用なのに意外とおっきいねー!私、てっきり誰かが誰かに乗らなきゃいけないのかと思っていたよ!」


 一人用にしてはでかいのは同意する、高い分余裕を持たせる設計になっているのだろう。

誰かを乗せて寝るという発想はなかったな、ありっちゃありだがその状態で寝れる奴は少ないだろう。幸いそうならなくてもいい造りだったことに感謝するばっかりだ。

何故なら誰かを乗せる役は恐らく俺になる予定だっただろうからな。真由花なんて喜んで飛び乗ってきそうだ、あとレイも。

あいつは、村の皆も今もどこかで逃げているのだろうか?急がなきゃないけないな。


二人に聴いても寝方は決まらなかったので適当に寝転がることにした。


再度布を引っ張り上げ、中へ寝転がった。


「俺もうここでいいや。あとは好きにしてくれ」



テントの右端っこにできるだけ幅を取らないよう、左腕を枕代わりにした。


「緊張感のないやつね......で隣はどうする真由花?」


寝ようと寝転がっている俺に飛び掛ってくる者がいた。



「ええ~もう寝ちゃうの?ねぇってば!」


その人物は何故か不満気に俺の体を揺さぶる。


「また明日にしてくれ......な?」



眠気からか軽く意識がまどろみの中へ誘われそうだった状況であり、完全に脱力していたので声に力を入れることなく、上手く呂律が回っていない奴みたいになってしまった。


「本当に眠そうだねー。じゃあもう寝よっか!邪魔してごめんね?」


悪気はないようですぐに謝ってくれたが別にどうとも思っていない。むしろこの状況で楽しませてやれなくてごめんと思ったまである。


その人物の真由花は俺の隣、つまり川の字である真ん中に決まったようだったので無駄な争いはなさそうでよかった、真由花ありがとう。


「ま、真由花?そこでいいのかしら?べ、別に嫌なら変わってあげてもいいわよ?」


真ん中で寝転がっている真由花へ向けた言葉だった。


お前の方が露骨に嫌そうじゃねーか、真由花を見習えと言いたくなったが真由花への一応の気遣いということにしておいてやろう。


「このままでいいよ、だって寒かったら抱きつけるもん。ほらっ」


 突然の背中への人間の温もりで体がびくっとしたが、まあ別に背中に抱きつかれるくらいはいいだろう。男に比べて女の子の大半は冷え性とも聞くし暖が取れるに越したことはないだろう。俺も基本寒がりなので暖かくてなんだか気持ちいいしな。


「分かった!分かったから離しなさい!カズサも何か言ってよ!」


何とも騒がしい奴だな、俺は寝るつってんのにお前は俺のカーチャンか。遠い昔に聞いた話によると、風呂に入らず寝たりすると色々五月蝿いらしい。基本家に一人だったので俺は何も言われた事すらないので実体験じゃないがな。


 左腕を枕にしている以上、右以外を向けないのでテントの布しか見えない。なんとも寂しい絵面なのだが寝るだけだし景観は別に気にならない。

逆に右腕を枕にしてしまうと右端にいる為、こいつ等の方を向くことになるのでそれはそれで面倒なことになりそうなので、やはりこの体勢しかない。そのままの姿勢で騒がしい奴へ言葉を掛けた。


「まあ、本人がいいなら俺は別に気にしない」


「アンタもそっち側なのね!?不健全よ!不健全!真由花やっぱりこっち来なさい!」


キーキー騒がしい奴だな、何をそんなに興奮してんだよ。お前は猿か。


「やーだーよー」


俺の背中から剥がそうとする一方、もう一人は離れまいとガッチリ俺の背中を掴む。そして俺は寝るのを邪魔される。


「何が不健全なんだよ!俺はこれから寝るだけつってんのにお前らが騒がしいお陰で全然眠れねぇんだよ!」


このくらい言っておけばもう静まるだろう。疲れた、寝よう。



「わ、悪かったわね、でもやっぱり真由花、寒いのなら私の背中に抱きつくといいわ」


よっぽど俺に抱きつかせるのが嫌なのか、真由花と俺の間に力ずくで割り込んでくる。


 俺と真由花の間へ入ってきた人物により俺の背中は、またもや人間の温もりを感じる。これで静かになるなら別にいいかとも思ったが、なんでこの狭いテントなのに右側にこんなに偏ってるんだよ!どんだけ右がすきなんだよお前ら。動くのが面倒なので端っこは譲れないがな。


「わ~暖かい。でもさっきよりは心地よさが減ったなぁ。やっぱりカズサがいい!」


威勢よく動き出し、俺の背中の闘争が勃発しようとされたが、ある人物の動きで未然に防がれた。


がしっと音を立てるようなくらい俺の背中に引っ張りつく奴が居た。


「諦めなさい!ここは私が占領したわ!」


俺の背中は別に領地じゃねーよ。それとなんで抱きつく事が解決に繋がると思ったんだよ。

先程よりは暖かさというか柔らかさのようなものが減った気がするが気のせいだろう。


「まあいっか~。これでも充分だしね。」



その人物の働きにより、真由花は大人しくルカの背中に留まったようだが何にも解決はしていない。

俺の背中に抱きつくルカの背中に掴まる真由花。つまり全員右向きで寝転がっているのだ。


どんなに仲のいい家族でも同じ方向を向いて寝る事なんてないだろうな。まあでも静かになったのはいい。落ち着いて意識を眠気に逆らわず、ゆっくりと眠りに付いた

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