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ふぁんたじーわーるど  作者: あっぽ
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場所。

人の手を借りる、それは誰もが経験する事であり、助け合って生きるのが人間というものである。


俺は一人でも生きてる、人の助けなどいらないと言う者もいるだろう。

しかし、周りから目を逸らし過度な馴れ合いをうざかるかもしれない。そんな奴でもいつしか寂しくなり孤独を拒むことだろう。

そして誰かと触れ合いたい、コミュニケーションを取りたいと思い知り合いを模索するが誰も見つからない。


その感情は寂しいのではなく、哀しいのだ。


 


「もう真っ暗だな」


俺達三人は海沿いの道を歩いていたが、特にこれといったものは見つからない。


時間だけが過ぎ、空は漆黒に包まれたかのような黒さを醸し出していた。


「そうね。でもどうするのよ?キャンプ道具なんて持っていないわよ。」


 普段夜明かしまでどこかへ泊まり込みなどの狩りを想定していなければ、そんな物は持っていないだろう。しかし俺に抜かりは無かった。


「それなら俺が持っているぞ、一人用だけどな」

 

いつかこれで旅にでも出ようかという男の浪漫溢れるグッズ、それがテントなのだ。

 

 毎日こつこつ狩っていたら所持金が十五万程貯まっていたので、適当にあの何でも屋的なところで買った。あそこは品揃えがよく値段もぼちぼちという良心的なお店なのだ。

あの村にあった唯一の見所といっても過言ではなかったが、今となっては消し炭と思うと少し悲しくなった。あそこ暇つぶしによかったんだけどなぁ。


問題は一人用というところだが、成人男性一人分と考えれば女の子二人くらいなら多少は狭いだろうが、詰めれば眠れるだろう。



「一人用......じゃあそれはカズサが使って?いいよねルカ?」



「ええ、それは元々アンタのだし、持ち主が使うのがいいと思うわ」


真由花は遠慮し、俺が使うように勧める。ルカもそれに同意した。


 なんていい奴らなんだと目頭が少し熱くなるが、それだとこいつ等はどうするという話になる。勿論休息は大事だが、俺にとってはそんな事よりもこいつらの方が大事だったので、俺は断固拒否する事に決めたのだった。



「いや、これはお前ら二人で使え。お前らなら頑張れば二人で寝れるだろ」


そう言い、ストレージから九万三千pzで購入した質感のいいテントを近くの森の中へ入り、良さ気な場所を散策し一分程でその場に建てた。

 

 この世界の物だからなのか、これが特殊なのかは分からないが、このテントは俺達が目にする従来のとは大きく違う、テントを張るという作業が必要ないという優れものだ。

使い方は、まずテントを出来るだけ平らな地面に置き袋に記載された上下をちゃんと守る。付属のリモコンがありそれを押す事で、まるで木が根を張るように地面にテントの位置が固定されるのだ。

その段階からもう一度別の操作を行えば、縮まっているテントの下腹部が膨らみ、どんな場所でも変わらない寝心地にする機能を使う事ができる。ある意味空中に浮いてる感覚なので初めてはなんだかワクワクするらしい。らしいというのはまだ説明書を読んで試しに設置までしか経験が無いため、あそこの店の人が言っていた言葉を思い出しただけだ。

固定し、寝具を膨らませたらあとはもう残りのボタンを押せばピシっとしたテントが張られる。

つまり平らな場所へ置きボタンを三回押すそれだけだ。どんなに疲れていたとしても、うわぁ面倒くさいとならない仕様になっているのだが値段は少しお高めだ。それに見合った価値はあると思う。


「うわー!凄い!こんな便利なものがあるんだね!」


真由花は初めて見るらしく凄く興奮していたが、それ以上にルカも感嘆の声をあげていた。


「なんて便利なものがあるの!?私知らなかったわ。アンタこんな物よく持ってたわね?」


二人が嬉しそうで何よりなのだが、俺はどうしようと密かに心の中で思っていた。


 さすがになぁ、こんなゴブリンも出てきそうなところで地べたに寝るというのもどうかと思う。あのテントには野生の獣防止のための特殊な加工が施してあるようなので、こんな場所でのキャンプでも安心だ。まあ相手が人となれば意味はないのだが。

まあその辺ぶらぶらして危ない奴に襲われないか見守ってやるとするか。


「じゃ、おやすみ。ちゃんと寝ろよ」


と俺は背中を抜けたまま、手を振って離れようとした。がその手は何者かにより引きとめられたのだった。


「ちょっと!アンタはどうすんのよ。これ私達に渡しちゃったらアンタ寝るところないでしょ。」


ズバリ言い当てられ、少し尻込んだ返しになる。


「い、いやぁ?俺はもう一個持ってるし......?」


咄嗟にありもない嘘をついてしまい、もっと颯爽と去ればよかったなぁと深く思った。


「じゃあ出してみなさいよ!」


「そうだよ!あるなら出して!」


二人に同時攻撃を受け、俺のライフは更に減ったのだった。


「......」


もちろん持ってなどいないので俯くしかなかったのだが、それが答えだとばれたらしい。



「やっぱりないんじゃない!そうね、仕方ないわ。真由花もいいわよね?」


なにやら真由花へまた同意を求めているようだが、俺には見当も付かない。何がいいのか悪いのかそんな事分からねーよ!主語をくれ主語!


「うん!わたしは全然いいよ!なんだか楽しみ!」


口を合わせてたんじゃないかと疑うほどの即答ぶり、何を楽しみにしてるか分からないが何があろうと俺に拒否権はなさそうだ。


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