ふと。
「ここにも居なかったな……彼奴らが襲って来たという事は近付いてるとも取れるが、たまたま出逢った可能性もあるからなぁ……」
この海岸からの道は来た道を引き返すルートと、どこに繋がっているのかも分からない道だ。
どちらにせよ来た道を戻るという考えはないが、このまま進んでもいい物なのかとは思ってしまう。
俺もだが少し体を休めたと言えるかは定かではない、ルカはまだ余裕がある様にも伺えるが、先程の事があり真由花の疲労は色々蓄積されているだろうから休ませてやりたいが、休める場所などはなく時間が経過すればする程辺りは明かりを失い、更に危険になる。
真由花の顔をちらりと覗く。
「?どうしたの?」
疑問符を頭に浮かべているかのような不思議な顔をしていた。
幸いまだ元気はあるみたいだが、無理をしている可能性は高いだろう。しかし強がれる内はまだ動けないという事は無さそうなのだ。終わりはいつ来るのか分からない、そんな中での疲労は相当の物になると思うが、こいつら二人を置いてなど行けない、行ってはならないと俺の中の何者かが働いたのだった。
「そろそろ動こうと思ってな、何時までも此処にいても何も進まないし。あっちの道へ行こう」
すっかり元通りになった左腕で方向を指す。
「ええ……そうね。私はまだ元気よ、それに膝枕で休ませて貰ったお陰だわ。ありがとう真由花」
俺の考えを汲み取ったのか、やる気を満々アピールをしている。具体的には真由花の方へ顔を向けているので、伝えられないのだが。
「じゃ、行こっか!」
一番疲れているだろう真由花が真っ先に立ち上がり、ルカの手を引っ張って起こしていた。
ルカが起こされたところで、俺も足腰に力を入れ、自然と地面に手を突いて立ち上がったのだ。
普段俺は座っていても、立ち上がる際に地面に手はつけない。
手が汚れるというのも一つの理由なのだが、手など使わなくともどんな姿勢から立ち上がる事は余裕だし、考えなくても自然とそう身体が動く様になっていた筈だ。
普段はそんな細かいことを意識などしないが、何故だかこの時は気になった。
「まあ、唯の気まぐれだよな。」
それ程気にする事もないだろうと、特に気にせず前方の二人に追いつくべく早足で歩いた。




