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ふぁんたじーわーるど  作者: あっぽ
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二人。

ルカが必死で真由花を守りながら、二人を相手に戦っていた。


左腕を落とされ、痛みで意識が朦朧とするが奥歯をぎゅっと噛み締め、素早い手つきで剣を鞘へ仕舞い、ストレージから回復ポーションを取り出した。

右手に握られた物を飲み干す時間すら惜しい程に、ルカは防戦一方だった。


助けるべく、ぐいっとひと飲みし、左腕は存在を復活して痛みも和らいだ。


その瞬間――





叫びたくなるような、衝撃的な光景を目撃してしまった。



防戦一方だったルカの陣営は瓦解(がかい)を避けられない、ルカの横腹には一本の、一筋の刃が突き刺さっていた。




そこからは血溜まりが出来るんじゃないかと思うほどの出血をしており、このままでは死んでしまう。


そう考えると全身から血の気が引き、崩れそうにもなるが必死で足腰に力を入れ、空に手を伸ばし神様に救いを求めた。



「何もしない自分が嫌で、守るって決めたのに......」


ぽつりと呟く、青ざめた顔が一気に血の気を戻した。


 躊躇っている暇なんてない、いまなら間に合う。そう信じた。

倒れているルカや、抵抗できない真由花に向かい金属の剣を突き立てている連中を殺さなければ、この怒りは静まりそうにない。


「ルカや真由花が悪いんじゃない、最初から使えばよかった物を出し惜しみなんてするからだ......」


自分に対する怒り、敵への怒りも全てぶつけるように鞘から剣は抜かず、柄を握り締めて、五メートルしか離れていないその場所へ駆けた。



俺の足音に気づいた奴等は早く止めを刺すべく、再び剣を振り下ろされたが――



剣がルカや真由花に届くよりも早く、という焦りがスレッドを発動させてしまった。

スレッドの射程距離を考えると二倍合っても足りない、全くの的外れで終わった......と誰もが思っただろう、俺の移動速度に補正が掛かったように敵との距離が縮まり、剣技は届いたのだった。


そう、スレッドは進化を遂げていた。いつかは分からないがレベルアップをしており、クロスブレードのように新しく効果が追加されたのだ、この場合は飛距離が届かない相手への対策のような形で強化されていたのだろう。


剣を振り途中だった相手の腕はスレッドにより、斬り落とされた。


「うわぁぁああああ!痛てぇ、痛てぇよおぉ」


情けない声を上げ、涙を流していた。隣の奴も攻撃を中断し俺へと剣を構えた。


「お前が......?まあいい。殺せと言われているんだ、右腕くらいでうだうだ言うな!こいつを先にやるぞ!」


泣き叫んでいた男の闘志に火をつけるかの如く、言葉を掛けていた。



ルカはまだ息があるようだが、一刻も早く回復させないと危ない。


 普段戦うことがなく、こんな事になるとは思ってないからか、真由花は回復などのアイテムは持っていなさそうだ。

となると、ルカと俺しかこの場では所持していないだろう、敵も持っている可能性があるが、よこせと言ってくれる訳でもないだろうし、もしくれるとしても一々出すのを待っていたら仲間が回復するだろう、ルカが俺にしてくれたみたいに今度は俺がルカを治療してやるというのが妥当な手段だといえる。


しかし時間は一秒でも惜しい、こんな奴等の為に時間を割く必要など感じられない。


二人は身体毎こちらへ向け、剣を構えようとしている。そんなのを待ってる暇もなく、目の前の敵を殺すべく働いている身体。


先に狙いをつけたのは俺が右腕を落とした男だ、満足に武器を握る事すらままなっていなく、利き腕ではないみたいなのだ、力の使い方も上手くできなくこちらの剣を返す事もできないだろう。そんな相手でも容赦はしない。


俺は再びカチャンという音を立て、鞘へ剣を忍ばせたが相手はまだ先程のことに気づいていないようで、無防備になったと勘違いしてくれると有り難いのだが、何らかの攻撃が来ると予想はしているみたいだが打つ手が無いだろう。


スレッドのスピードとパワーを弾けるのだとしたら、こいつ等と戦っている間にルカは助からない。賭けでもあったがそんなのは杞憂だろう。相手がスレッドを使ってきたらと思うと、とてもじゃないが無傷で凌ぐ事は厳しいだろう。

射程距離が広がった事を意識し、スレッドを発動させる。



「スレッド......」


発動させるのを意識しすぎて思わず口に出してしまった。


言葉を発して使うやり方は絶妙なタイミングで行う事が可能なのだが、剣技を知らない相手にばれる可能性が高まるというリスクもある。


「お、おい!今こいつ何か喋ったぞ!スレッなんと――」



聴かれてしまったみたいだが、今更関係ない。

俺の言葉と同時に発動した剣技はもう、右腕の無い男の脳天を抉るべく動き始めている。



持てる最大の力も込めたが、男は不意に頭を剣で守る形を取った事により弾き飛ばして留まった。



「お、おい!ガース助けてくれ!」


剣が無くなった男は、もう一人の男をガースと呼び、助けを乞うていた。


その姿はとても憐れで、何も持っていないその身体へ、心臓へ剣をぶすりと渾身の力を入れ手前へ引き抜いた。


抜いた穴から大量に血を流血している。


「あ......ぁ」


最後に言い残し、ばたりと倒れた。



ガースと呼ばれる男は仲間の死へ目もくれず、俺へ質問をした。


「お前、今何をした?」


恐らく剣技のことだろう、教えてやる義理はないので無視を決め込み、今度はスレッドを発動させようとはせず純粋な剣で斬ろうと試みた。


「ははっ!中々やるじゃねーか!だがその程度ならっ!」


唯の純粋な力比べでは大人へは及ばないようだ、それにルカが心配だった。


「クロスブレード......」


小さく呟いたが目の前にいたようで聴こえていたようだ。


「今度はなんだ!?」


攻撃を弾くべく相手は剣を縦に構えていた。


クロスブレードの1撃目は左から右へ目にも見えない速さで斬る攻撃だ、相手は運よく剣で受ける事が出来たようだが先程の俺の力とは比べ物にならないくらいの力と速さに驚きを隠せないようだった。

一撃目を受け、相手の身体は剣ごと右への勢いに持っていかれ身体は無防備を晒していた。


ニ撃目は軽く飛び、上段からの振り下ろしだ。


一撃目で弾かれた身体へまともに攻撃を受けたように見えたが、少し顔を掠っただけで血を少し流す程度に済んだようだ。

だがクロスブレードはこれだけでは終わらない。


残る三撃目――。


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