守る。
「おいおい、いきなり物騒な奴等だな」
こいつ等の素性は分からないが、まあ大方予想通りの奴等だろう。
偶々知ってる道に来て当たりとはな。運が良かったのか悪かったのか考え物だが、時間の問題だっただろうし面倒事は早めに済ませて
おくに限り、精神衛生情的に。
敵は見たところ五人、背景にはまだ何人かいるようだが今のところは参戦してくる気配は感じられない。俺達如きならと高を括っているのかそれともただ休ませているだけなのかは定かではないが、手加減されているようで少々の苛立ちを覚えたが、五人に抑えたくれた事を感謝する他ならない。
それぞれの握っている獲物はどれも見たことが無いような剣ばかりだ、まあ剣など二の次であり腕前や剣技の有無に左右されるだろう。その二つが同等の時は武器の能力次第だろうが俺の剣や真由花クラスの奴は中々お目にかかれないと、鍛冶屋で真由花が言ってたので然う然うあるものじゃないだろう。
剣技に関しては危惧しなければならないが、使えるのか使えないのかは相手に聞かないと分からないし、持っていると分かったところでどんな物なのか分かるはずもない。考えるだけ無駄というものだ。
相手が何をしてこようと関係ない、勝てばいい。それで俺は彼女等を守れるのだから。
そう胸に宿していた。
初手だけでいえば圧倒的に有利な技を俺は持っている。だがこれを出せば一人はやれる。
だがあと四人、いやバックにもまだいる。これが通用するのは最初の一回のみだ。一度見れば発動の仕方が独特なのですぐにばれてしまい、ただの無防備な格好になるのだろう。相手が飛び道具などを所持していればあっさりとやられるまである。
自然に、ごく自然に攻撃に混ぜられるクロスブレードの方がばれにくいだろう、スレッドは奥の手で残しておくとしてこの場は何とか凌ぎ切るしかない。
そう考えが纏まったところで、息を吐き肩の力を抜き、跳ねるようにして左斜めのに狙いを確立した。
「なっ」
突然間合いを詰めたことにより悲鳴のようなあっと驚いた声があがった。
だが相手も素人ではなく、それくらいで俺へと向けられた刃は留まる事はしなかったが、人を殺すのにそこまで慣れているような感じではしなかった。
心臓や首を狙うのではなく胸から足に掛けての縦の斬り下ろしであった。
やはりな、まだ戦い慣れていないようだ。恐らくは下っ端かなんかで普段は見張りなどをやらされているような奴だろう。こんな遅い振りではゴブリンと変わらない。
ゴブリンが剣を持っただけだ。間合いが少し広がったくらいを意識しろ。
想像力だけを働かせるように目を瞑り、意識を想像に集中させた。
前からやっていたオークへのイメージトレーニングが生んだ賜物なのか、想像はし易かった。そして間合いも完璧に掴んだ。
勢いよくダッシュで距離を狭めようとした俺に他の回避方法はなかった。
地面を蹴った左足に力を込め地面を蹴り、体をぐるりと翻した。
体を翻した事により右肩が地面すれすれで土を掠るが、日頃のランニングのお陰なのかバランスを崩す事はなく、右足だけでバランスを保りつつ右手に握っていた愛剣を一層固く握り締め、決して軽いとはいえないが振りなれ手にしっくり馴染んでいる。殺傷力は充分にあるその武器を、片足での勢いの使い方を体に刻まれたいたかのような華麗な流れ作業で行われた。
その剣が目指す場所へ、低い体制からも一直線で心臓への軌道を描いていた。
下段からの斬り上げ、剣先は脇腹へ斜めに突き刺さった。
心臓へは達せず、相手の懐からは血が溢れていた。
まさかというかここまでのダメージを受けるのは初めてなのだろうか、その顔には焦りが感じられ、上手く呼吸も出来ていなく、こひゅーこひゅーと吐くだけの作業をこなしていた。
その行動は一秒にも満たなかったが、相手も馬鹿ではなく回復をしようとポーションらしき物を手に握っている。
一撃でやれなく、痛い思いをさせてしまったのは少し悪い気がしたが、悠長に回復しきってあげるまで待ってあげられる余裕も此方にはなく、現状をどう切り抜けようかといっぱいいっぱいなのであり、相手からも慈悲はなく、此方からも慈悲はない。
そんな座り込んでしまった相手の前へしっかりと両足で立ち、体に怪我はなく、未だに右手握られている剣の柄。
最後に一言。
「ごめんな。」
そいつに聞こえるくらいの声量でそう言い残し、肘を肩甲骨で背中に引き寄せ、勢いを乗せて上半身を斬りおとした。
亡骸になる寸前のこいつを眺めているほどの余裕は無く、すぐさま別の敵へ目線を動かしたが殆どの奴が俺を敵と認識し、ヘイトを集めたかと思うくらいの釘付けぶりだったが、その中の一人は俺へ見向きもせず剣も持たず、驚きを隠せない真由花を一番倒しやすいと思ったのだろうか真由花とルカを先に片付けようとする者がいた。
また俺が人を目の前で殺した事にショックを隠せないのか、呆然としていたルカへ声を掛ける。
「ルカ!」
その言葉で我に返ったようで俺が授けた重たい両手剣を引き抜き、応戦しようとした。




