危機。
「なぁ、レイ達はどこへ行ったと思う?」
真由花とルカに返答を求めつつ、燃え続ける宿屋を背に辺りを眺める。
火の中へ探しに行ったはいいが、本来目的である二人の確保が完了していない。消し炭にはなっていなく、まだ生きている可能性が高いという収穫はあった。
だが此処に居ないとなると、どこへ行ったのか皆目見当もつかないが。
「うーん、他に安全な場所とか思いつかないなー。心当たりとかないの?」
珍しく真由花がお前が一番理解してるし仲がいいでしょと言わんばかりの顔を俺に向けてきた。
「そんな事言われても、昨日の今日だしな......真由花みたいにその辺に隠れてこそこそ見てたり......」
今思い浮かぶ最大の答えを出すが、真由花をからかいたかっただけだったりするくらいに思い当たらない。
「ちょっと、人聞きが悪い事言わないで!あれは怪しい人がどうか見定めるために仕方なく......」
慌てふためくところとかが少し可愛く、無邪気に思えた。
「まあ心当たりがないんじゃ、他に探す場所もないわけだし。その辺を散策するしかないわ。ばらけて探したほうが効率はいいけど、この場合は一緒の方が良さそうね」
俺達の住むところがなくなったっていうのに冷静なやつだとも見えたが、今はレイとフラ以外目に入らないらしい。
「誰が火をつけたかすらまだ分かっちゃいないしな、大よその検討はついているが。」
「そうね、でもどうして誰かが火をつけたと思うの?どっかの家から引火した火事かもしれないじゃない?」
真由花側、村の人間側であれば、一体どこの家から類焼したんだ?と最初は思うかもしれない、が多少の差があれど村全部が燃えるのは不自然だ、火事の時用になんらかの手段は用意してあるだろうに全部広がるまで黙ってみているはずがない。
あともう一つ不自然な点がある。
こんだけの火事だ、全員が被害者でヤジウマもクソもないが、ここら一体に俺達以外の人の姿を目撃できない。
ここから考えられる可能性は二つ程度は思いつく。
一つは、火の始末としては最悪の村を見捨てて全員で安全な場所へ避難した。
もう一つは、もう声を出す事や姿を見せることが出来ない状態。
前者の場合は、レイは村の人間ではないが一緒にフラがついている為、行動を同じくしている事だろう。
後者の場合、放っておけば死んでしまうだろう、しかし何も合図を出せない状態なれば発見する事は困難に等しい。
どちらにせよ村人を遠ざける事は可能であり、燃やす事も容易い。
何よりも、やはりタイミングが良過ぎるのだ。
これが誰かによる犯行だと思う理由である。
しかし目的がまだ分からない、なんらかの通信手段により俺達と戦って殺された事をあいつ等の仲間が知ったする、敵討ちや俺達を殺したいだけならば、寝ている時に行えば確実になるだろうに何故今、仲間が殺されてから直ぐに行ったのかが理解できない。
連中に最悪の場合を想定したプロセスなどがあるとは思い難いが、単独行動をしている奴は今までに居なかった。
組織的行動の可能性も浮上してきたのだ。
「まあ理由は色々とあるんだが、レイを狙っていると考えている。」
この言葉に根拠など存在しない、俺の勘がそう告げているような気がした。それだけだ。
「えぇ!?」
「ふうん。」
突然の俺の考えに驚いた様子を見せた真由花だったが、ルカは意外と落ち着いていた。
何故だかその理由が凄く気になったので軽い口調で質問をする。
「ルカ、お前も感じていたのか?」
「えぇ、まぁ......多少はね。」
先程は根拠などないと言ったが、根拠になるほどの理由が無かっただけであり、少しは思うところが無ければ狙われているという発言には至らないだろう。
最初に殺した三人には俺とルカの顔はばれているので、それをどのような手段かは知らないがあいつ等の仲間には知られていると推測する。あいつ等の目的がもし、レイの住んでいた村にいる可愛い、美人な娘じゃなく最初から"レイだった"と仮定しよう。
そしてあいつ等にとって"レイじゃなければだめ"という理由があったとしたら?
あいつは何かを隠している、色々と不明な部分が多い。
何よりもレイが大事であり、それはあいつ等の集団が存在したとしてそこの目的だとしたら。預かっていた仲間が殺され、奪われたとなればまず邪魔になるのは顔の知られている俺とルカが怪しく、洞窟の存在も知っているとなれば狙うのは当然だと言えよう。
ただこれは仮定であり、推測に過ぎない。ルカから聞いた俺とルカを探しているような口ぶりが無ければ想像も付かなかった。
こればっかりはあいつ等が墓穴を掘ったと言ってもいい、だが確実ではないがルカも同じ様な事を感じているのだろう。
「あいつらよりも先に出会わなければ色々まずいな、レイは直ぐ殺される事はないだろうがフラが危ない。」
迸る焦りを感じつつ、こいつ等と離れてはいけないという事も胸に刻み、命に換えても守ると誓った。




