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ふぁんたじーわーるど  作者: あっぽ
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決意。

ふと思い返したように一言。


「......まずいかもしれないわ。戦いで精一杯で忘れかけていたんだけど、そいつ等が私に話しかけてきたのよ。」


暗闇で死体が分からない様子だが、大体の場所は把握しているようで少しだけ顔をぴくりと動かした。


「何がまずいんだ?早急に手を打たなければならない事態なら口早に説明してくれ。」


急かすような口調で説明を促した。


「そいつ等は私を見たとき最初にこう言ったのよ。"聞いた通りだな、もう一人の男はいないようだが"って。」


 

 ルカがまずいと言った理由は理解した、もう一人の男は恐らく俺の事だろう。

でも俺のルカのペア行動は別に珍しい事じゃない、村の人間でも見かけたことはある奴もいるかもしれない。


 問題は"聞いた通り"という部分である、こいつ等自身は見た事無く誰かから聞いた情報だという事だ。

そして誰かに恨みを買うような行動は一つしか思い当たらない。

 俺が殺した賊の仲間以外に思い当たる節は考えられないが、いつどこで恨みを買うなんて分かった物じゃない。今のところは、あまり村人とかにも干渉してないので問題はないだろう。


 俺はあいつ等は全員殺したと思っていたようだが、想像していたよりも仲間が多かったみたいだ。

洞窟の仲間内の話だけならまだいい、その日のうちに襲撃したが何人かは夜になってから出掛けてしまった可能性も考えられる。

しかし"もしかして"の場合もあるのだ、俺達が所持してない、または出来ない様な通信手段を用いられていた場合だ。

 あいつ等の組織自体が大きな物だったりしたら俺とルカの情報は知れ渡ってしまっているだろう、いつ何時狙われるのか分かった物じゃない。外もおちおち歩けた物じゃなく、今後の生活に支障を来たすのは間違いない。


「どうしたもんか......その程度ならある程度は覚悟していた。でも、別に今すぐに危ないって訳じゃないと思うが?」


ルカの突然の言葉に驚きもしたが、帰ってからでも遅くないだろという軽い口調で話した。


「それじゃ遅いかもしれないのよ!!!さっきの言葉には続きがあってね"男はいないようだが、近くの村に行くんだからどうせ出会うだろ、気にする事はないな"って私の目の前で余裕の表情でこれからの予定を告げて言ったのよ!!」


その口調には怒気が混じりながらも言い募った。


「それを先に言えっ!こんな所で話している場合じゃないっ!!」


動揺していた、心の中を掻きむしられるような激しい焦燥を感じる、掌にはじんわりと汗がにじんでいた。


 もちろんあいつ等の仲間はさっきの奴らが最後であり、他に仲間などいなかったという俺の懸念に過ぎるのなら大いに構わない。

可能性が万が一、億が一だとしても危険が迫っていると俺の第六感が告げている。



「疲れているなら歩いてきてもいいが、俺は先に戻るから気をつけてくれ。」


と捨て台詞を吐き、右手に握っていた剣を鞘に仕舞い一刻も早く戻るべく突っ走った。




 森の獣道などお構いなく、ルカに教えてもらったルートを頭で模索しながら走り進めた。

辺りは闇黒で状況など掴むのは難しいだろう、この道を使うのも一度や二度ではないのでルカまでとはいかないにしろ、ある程度の勘と運で乗り切ったその先に見た光、いや明かり・・・?






「村が......村が燃えている・・・・・・」



森の中からは全く想像も出来なかった茜色の空。



呆然と立ち尽くし、一分程の間、身じろぎ一つ出来なく打ちひしがれた。



まだ、全てが終わったわけじゃない。


 これだけ派手に燃え上がっていれば森の中でも気がつけたはずだ、まるで俺達の戦いが終わってから火をつけたようなそんな燃え広がり方だった。

戦いはまだ終わっていないらしい、まだ真由花やレイ、フラや村の人達が死んだと決まった訳じゃない。急げば間に合う。間に合ってくれ......


自らに言い聞かせ、心と体を奮い立たせた。


 

 ルカはまだ追いついていないようだ、待っている時間が惜しい。あいつには安全な場所で避難していて欲しいが燃やした奴が居るということはどこに居ても安全ではないのだろう。

 森を抜けてから村までおよそ五分、もしかしたら逃げているかもしれない。賊なんていなく、ただどっかの家が火事になって周りに広がっただけかもしれない。そう思いたい。




一番に向かったのは真由花の工房、非戦闘員という事もあるがここから一番近い。


 いつもならのんびり歩く道も、今は体力の許す限りの速さで駆けた。鳥のように翔けられたらどれだけ早かっただろうか。翼が欲しい、この時だけはそう強く願った。

願っただけでは翼なんて生えなく、自分の足で地面を蹴り続け工房に到着した。




 周りは火で囲まれており、呼吸が辛く汗も凄まじい。

周辺には人影のような物を感じられなかった、逃げ遅れたのかと思いドアを勢いよくバタンと開いた。




「真由......花......?おい、真由花!!」


必死に大声で叫ぶが、返事はない。


 今まで、さっきまで平和で小汚い部屋もあったが、作業場はしっかり掃除されていたあの場所はもうそこにはなかった。

柱は倒れ床も焦げ、天に向かい炎は揺れていた。



 中に居るんじゃないかと探そうとするが、火の燃焼で中々進むことが困難だ。

俺の腕や脚、命で真由花が助かるのなら安い物だと踏ん切りをつけた。



「待ってろよ、助けてやるからな!」


火の渦の中へ飛び込んだ。


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