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ふぁんたじーわーるど  作者: あっぽ
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映る目。

――急がないとルカが危ない


草陰から勢いよく走り出し、一心不乱に駆ける。

右手に握られた愛剣は月明かりを反射し、刀身がきらりと輝く。


 それは他の奴らでも同じであるが、自分の剣が一際輝いているように思えた。それほどまでにドュリンダナは綺麗な刀身をしている。

ゴブリンがドロップしたとは到底思えないような代物だ。


「間に合ってくれ......」


 俺の目は暗闇でもよく見える程までに、この環境に順応したのか成長したのか分からないが先程の争いの光景は遠くからでもよく見えた。

遠くから見ていたお陰でで安全ではあったが、距離が離れていたということになるのだ。

二人目の輩が戦闘に参加したことで戦況は大幅に相手側に傾き、今は何とか保っているがいずれ崩されるくらいまでに押されていた。

俺も二対一にされたら同じ状況に陥るはずだ、対人経験が豊富という俺じゃないがルカよりは豊富のつもりだ。初対人とは思えないほど善戦をしており、俺も加われば勝つことは難しい相手ではないはずだ。


戦法はまだ思いついていないが、考えている間にもう目の前まで来ていた。


 木々が生い茂っており、辺りも薄暗いからか相手は俺には気づいていない様子だがのんびり不意打ちなどを狙っている余裕は無い。

一刻も早く戦闘に加わる事だけを意識し、ほんの少し息を整え広々とした場所へ突撃した。


 

 ルカが二方向から攻撃されて回避や、防御に徹しているところを擁護するのが先決かと思ったが急に出て行ってはルカが俺に気づかず、俺まで攻撃されてしまう可能性があったので先に啖呵を切っておくとしよう。


「おい!どこの誰か知らねーが、俺の女に手を出す覚悟があってのことだろうな?」


突然現れた俺の言葉に男二人とルカも動きを止め、此方を凝視した。


 ルカからもしてみれば俺の女にされた気も、俺からすれば俺の女にした気も全くと言っていいほどないがここは注目させなければ意味がなく、その言葉でルカは俺だと気づいてくれるだろう。それにこういう時くらいはキザな台詞を使いたかったという俺の願望も少し含まれている。


キザな台詞のお陰か、声のお陰か分からないがルカは俺だと気づいたようだ。


「だれだァ?お前は?俺の女って言ったな?ってこたァお前の仲間かァ~?」


男の一人が胴間声を上げ、もう一人の男も言葉を発した。


「ハハッ!そりゃいい!獲物が増えたが......男はいらん!殺してしまえ!!」


ルカよりも力のありそうな男の俺から殺すつもりなのか、二人同時に攻撃を仕掛けようと行動を移していた。

そこらへんで拾ったのかと思わせるような輝きは少なく、刀身もぼろぼろの剣を握っており、こんな剣では相手のたかが知れるというものだが相手は一人ではなく二人だ。人を同時に二人相手にしたことはなく、どうすればいいのか分からないがいつも通り感じたままやればなんとかなる相手ではありそうだ。


 初撃は、大きな体に似合わない細い剣を持っている男だったがそれくらいなら対処できるだろう。いくら力があるといっても武器が武器だ、ここで大きな斧でも使っていたのなら力負けしたかもしれないが剣同士ならば俺の方が有利だ。

いくつもの死線を越えたといえば大げさではあるが、斧にも対処できるくらいの腕前には達している。


「フンッ!」


目に見えない程の速さで振り下ろされた相手の剣だが、それくらいならば味わった事があり精々目に見えない程なのだ。

見えないのなら速さを感じればいい、そういった技術を習得しつつあった――


パチンと低い音を奏でながら相手の剣を振り途中で擦り落とした。


「な、なに!?」


相手は呆気に取られ、そんな馬鹿なという顔を浮かべていた。


 相手に殺す気があったとしても、動けないくらいで許してあげてもいいと思う人も居るかもしれない。だがこういう奴等は何度でも繰り返すだろう、今後の為を考えて他に手段はない。


 もう一人が攻撃を始める前に終わらせようと手加減はせず、心臓を目掛け一刺し。

ブツリという鈍い音と共に、大量の出血と吐血をし意識が朦朧としたのか心臓が止まったのか分からないが音を立ててその場に崩れ落ちた。


「まだやるか?」


その言葉に震えなどなく、ただ冷静に落ち着いた声で発した。


 仲間を殺されたからか、俺に躊躇いが感じられなかったからなのかもう一人の男は立ち尽くしていた。戦う意思があるかどうか一応の確認はしたものの、なんて答えが帰ってこようとも結果は同じにする予定だ。

 最初から相手はルカを捕まえる気でいたのかもしれない、もしも俺が間に合っていなかったら捕まっていたのかもしれない。その後のことを考えると、とてもじゃないが許してあげられるに気持ちにはなれなかった。死よりも苦しい事が待っているかもしれない、死にたい気持ちになるかもしれない。それでもあいつ等は許すのだろうか?それと同じだ......

同じ事を考えるということは、俺はあいつ等と同じ人種なのかもしれないが、それでも......仲間を助けたいと思える気持ちは存在していた。



「ほら、仲間なんだろ?敵討ちしたほうがいいんじゃないか?」


生きている男に向かい、精一杯の煽りを入れた。


今の俺は、ルカの目にどのようにして映っているのだろうか?頭の狂った殺人者?それともピンチに駆けつけてくれた仲間くらいには思ってくれているのだろうか?

どちらにせよ、今後とも表面上くらいでは仲良くして欲しいな......もう過去には戻れないのだから。



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