突然。
「静かだな…いや、静かすぎるような」
嵐前の静けさという言葉もあるからな、何か起こる気がしてならない。
「一応、剣を装備しとくか。」
俺はアイテムストレージを開いて右手で、ウィンドウをタップし、
「装備しますか?」「yes no」
yesをタップした。
装備した瞬間、手の中にずっしりした重さの剣が出現する。
やっぱり、これを持ちながら歩くのはきついぞ…
早いところ、肩に掛けれるようにしないと歩くのが憚られるな。
文句をいいながらも、いそいそ歩い三3kmに達しようとしていた瞬間
雷鳴のような爆音、凄まじい轟音が響いた。
「な、なんだ?何が起こったんだ?」
俺は動揺しながらも、周囲を警戒しつつ見回したが、何もない。
「いや、遠くに何か視える…!?」
海岸の方に、遠くてあまり見えないが、
全長四メートルほどあり、漆黒に染まった馬の様な物が見える。
あいつは敵なのだろうか?
こんな貧弱な武器しかなく、まともに戦える術もない。
勝てる気は全くしないが、気になるから行きたい気持ちもある。
十五歳の好奇心に勝るものはなく、俺は行ってみることにした。
あいつは海岸から動かないが、防波堤などの障害物がない為、迂闊に近付けば此方に気付かれる可能性が高い。
道の傍らに寄って木々に紛れながら観察すれば見つかる可能性は低いだろう。
馬の頭の辺りに何か見える。
なんだろう?あれは?もうちょっと近付けば見えそうなんだが…
「グキッ」
「え?」
太めの枝を踏んでしまい、大きな音を立ててしまった。
慌てて馬を確認するが、
「いない…?」
周辺を見回す。
いた!こっちに向かって歩いている、まずい…このままじゃ気付かれる!
木に掛けていた剣を持ち直し、近くの茂みに息を潜める。
デカイ図体をしている馬は徐々に近づいてくる。
だがしかし、いま走り出したりすれば逆に気付かれて殺される。
それに筋肉痛の所為で走れないしな。
逃げるなら田舎より都会の方が見つかりにくいのと同じで、大勢に囲まれていた方が分かりにくいのだ。
フンフンと息を鳴らしながら歩いてくる、どデカイ馬にドキドキしながら必死で見つからない様に普段は全く信仰していない神に祈った。こんな時だけ都合がいい奴だなと自分でも実感する。
馬が目の前を通過する、頭の上に見えてた物が分かった。
名前、あとレベル50というのも見えた。
この世界にレベルがあるのか?
だがスライムやゴブリンには見えなかった。
俺自身、スライムやゴブリンに見えないからない物だと思い込み、確認すらしていなかった。
ネトゲとかだとよくある、ネームドモンスターってやつなのか?それともボスなのだろうか?
ボスにしてはいきなり出てきたし、条件が必要としても俺は眺めてただけで、何もしていない。
それとも俺という別世界の人間が来たせいなのか?
見えた名前は フォールンライダー
ライダーか、誰かが乗るのだろうか?
分からないが、とりあえずいまは戦うべきではないことは分かる。
レベルが存在したのにも驚かされた。
「確認してみるか…」
レベル と頭の中で想像する。
いつもの光の板がでてきた。
レベル2 総経験値1214 次のレベルまで980
1214…この数字何処かで…
ああ、所持金か。
スライムは桁は違えど、金と経験値は同じ感じなのか。
スライムだしそんなもんだろう。雑魚モンスターだし、ショボいのは仕方ない。
あんだけ狩ってまだ2レベルなのか、50レベルのあいつに挑むのは大分先になりそうだ。
あいつのお陰でレベルの存在が分かったし、遠くに消えた怪物さんには感謝しなきゃな。
「武器を仕舞って戻るか」
装備ウィンドウを開き、
「装備を外しますか?」「yes no」
yesをタップし身軽になり、疲労感を覚えながら足早に歩きだした…