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ふぁんたじーわーるど  作者: あっぽ
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変化。

 「ほら......起きろレイ。起きないと頬っぺをつねるぞ」


耳元で軽く囁く。


 あれから数時間が経ったのだが、真由花は何をしているのか見ても分からないが恐らく剣関連の事をしているのだろう。

ルカは先に帰ったが、大人しく宿に帰ってもすることが見当たらないので恐らく狩りでもしてるんじゃないか?調子に乗ってオークとかに行ってなきゃいいんだけどな。


レイに関しては呼びかけても返答がないので頬を引っ張ってやるとする。


「起きないお前が悪いんだからなー、あとで文句言うなよ」


気持ちよさそうに眠っている奴を起こすのは気が引けるが、このまま背負って帰るわけにも行かないので柔らかそうな頬っぺたを人差し指と親指で握ってやる。


 まあ正直あれ起きるとはてんで思っちゃいないが、時間をたっぷり掛けて起こすなんて凄く面倒くさいし、こいつに仕える執事でもないので手っ取り早い方法が好みだ。


「うっ......んっ....あさぁ....?」


 頬っぺたをつねるくらいでは目は覚めないみたいだ、そこまで力強くやっていないからかもしれないが、起こすだけなのに流石にそれは可哀想なので、遊びで引っ張る程度でもちゃんと起きてくれて助かった。女の子顔に痕や傷を残すのもどうかと思うし。

あれからこいつを真由花のベッドに移動させたのだが、その時は全く起きる気配など感じられなかったんだけどな。



「朝じゃないけどお目覚めの時間だぞ、寝床も決まってないのに悠長な奴だな。」


 下手したら野宿という発想が無いのか、それとも最低でも俺の部屋があると思っているのかは知らないが、危機感を持っていただきたいものだ。


「おきた....起きた....おやすみ......」


「いやいや、寝るな!肩くらいは貸してやるからほら宿屋へ帰るぞ」


 甘えさせるのもどうかと思うが、また寝られるよりはマシなので多少の苦労は仕方あるまい。


「わーい。カズサの匂いだー....暖かい......」


肩というより身体を貸しているくらいの体重を掛けてくるので、帰りまでとなると結構な重労働になりそうだ。


「そりゃそうだろ。冷たかったら俺は死んでるよ」


「それもそうだね....ちゃんと生きてる......」


 真由花はレイが起きた事に気づかないくらい作業に没頭しているみたいだ、このまま帰るのも考えたが真由花に悪いし、失礼になるので一応声は掛けていくことにした。


「レイが起きたから俺達は帰るよ、遅くまで悪かったな。また顔出すよ」


奥の部屋で何かしらをしていた真由花に呼びかけると、慌しく移動する音が聞こえ顔を覗かせた。


「ありがとねー。またね!」


「またね真由花....こっちこそありがとう....これからも宜しくね....」


 俺が何故お礼を言われたのか、むしろ俺がお礼を言いにきた立場なのだが、そういう物なのだろうと解釈し、空いてる方の腕と手を共に振り返事をした。

レイはまだ寝惚けているようで声に元気を感じられないが、本人の気分は朝と変わらないのだろう。朝っぱらから元気な奴は寝る前とかににんにくでも食ってんのかな。口臭がやばい事になので効果があったとしても実践は出来なさそうだ。


「カズサ~....暖かいよ....すごく....」


 何がそんなにいいのか分からないが、俺は暑くなってきたので俺の右腕をそろそろ開放して頂きたい。いま何者かにでも襲われたら対処が遅れるのは間違いないのでいつもより気をつけて歩きたいが、宿までそこまでの距離でもないのでたまには肩の力を抜いて歩くのもいいかもしれない。寄り掛かられているから肩の力は抜けないけどな。


「そうかい、それはよかったな。もう少し自分の力で歩いて欲しいんだが」


 俺の腕を引きちぎらんばかりにぎゅっと握り締めてくるので、ちょっとばかし痛い。

プロレス技を決められているみたいだ。実際には間接など決まっていたらこの程度ではすまないのだからある意味易しい?のかもしれない。

本人にその気はなく良かれと思っていると思うけど、まるで腕に機関銃でも付けられたような重みを感じる。見た目は華奢で身体もその通りなのだろうが、人間の重みというか筋肉は重いんだなと実感した。


「重いな......」


不意に考えていた事が口に出る。


「重い....?酷くない....!?私太ってるかな......?」


 余計な事を考えていると口に出てしまう事がしばしばあり、こういうことになり兼ねないので今後は気をつけたいと思う。

今更思っても遅いといえば遅いが、今後の教訓がまた一つ増えたというプラス思考で考えていこう。いつかこれで女心を書きました!ってデビューできるかもしれないし。

そんな先のことよりも目先のフォローが大事だ。


あ、これもそのエッセイ本に載せられそうだな。


「いやいや全然軽いと思うぞ?男や女で考えずに筋肉って観点から考えてたらつい口走っちゃったんだ。」


「え....?カズサって人のことを筋肉とか内臓とかそんな目で見てるの....?」


 俺の発言にドン引きしている顔をしているが、それでも離れないところを見ると相当居心地がいいらしい。俺もいつかは味わってみたい物だが、自分の腕にしがみつくのは身体の構造上厳しいし、自分にしがみつくってのもどうかと思う。


「そんなわけ無いだろ。お前の事はもちろん可愛い女の子として見ているぞ。ルカや真由花も同様にな。」


 そんな勘違いを覚えられたままだと俺がおかしい奴のままなので、一応訂正しておく。


「ならよかった....後半はちょっとあれだけど....いまはちゃんと人が好きってことで許してあげる......」



「誤解が解けてよかった、そうだな。俺は普通の人が好きだ、お姫様でもなくお嬢様でもない普通の人が。」


こういうところからちょっとずつ変えていけたらいい、そう決めたじゃないか。

後半のあれという部分がよく分からないが、まだまだ覚えるべき乙女心が多そうである。

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