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ふぁんたじーわーるど  作者: あっぽ
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疲れ。

「まだ耳が痛い......泣くなとは言わないけどさ、もうちょっと静かに泣いてくれよ..」


 十分程で泣き止んで頂けたのは有り難いのだが、周りにも家があるこの地域でこんな大声で泣いたら近所迷惑もいいところである。それに何事かと飛び入ってくる輩もそのうち現れそうなので泣くのだったら歯を食いしばって泣いて貰いたいものだ。

でもよく考えてみると、歯を食いしばりながら泣かれるのも顔が酷い有様になり、みんなが泣いている時に俺が笑うという奇妙な事が起きる可能性も捨てきれないので、やっぱり泣くのはよくないと思います。


「悪かったわよ、よく考えたら何で泣いてたのかしら私。」


「私も分からない....うーん......」


「うーん......あ!カズサの事じゃない?」


三人が三人唸っていた所で真由花が不意に俺の名前を出した。


「そうね!カズサのせいだわ!」


「うん..私もそう思う!」


 真由花の発言にルカとレイが同調し、お陰で何故だか俺が泣かせたみたいになっているが、まあ間違ってもいないので適当に謝っておく。



「はいはい、俺が悪かったですよーっと。」


 謝る気の毛頭ないやつの台詞と言っても過言ではないが、こういう場合の時は形だけでも謝っておけば流れで大体許される。何故なら相手はそこまで俺が悪いとは思っていなくても、泣いた事が恥ずかしいから誰かの所為にしておけば気持ち的に楽になるのだろう。それくらいで済まされるのなら安いものである。



「おいルカ、剣見せても貰うんじゃなかったのか?」


 やっぱり大事な物の様で、奥の部屋へ片付けに行こうと既に動き出している。

大事ならばストレージに仕舞えばいいのじゃないかとも思うが、鍛冶屋とは色々持ち物が多かったりするのだろう。作ったものを一々ストレージに保存していたらいくつあっても足りないだろう、あと凄いゴチャゴチャしそうなので分けているのかもしれない。


「ああ、そうだったわ。真由花~待ってちょうだい。」


真由花は、ルカの呼び声で歩いていた足を止めた。


「うん?どうかした?」


若干食い気味にルカが話を続けた。


「その剣!カズサの持ってた奴見せて欲しい!」


「ああ、これ?そんないい物じゃないけど...別にいいよ!」


 謙遜をしているが、ドゥリンダナと同格かそれ以上の代物だ。両手剣を使っているルカだが、恐らくそのデカイ物を振るよりも強いんだと分かったら欲しいと思うのが誰しもなのだが、生憎お金もそんなに持ち合わせてないルカは眺めているだけで満足そうだ。

もう一本ドュリンダナがドロップすればな。プレゼントできるし断られても、捨てるからいらないと問えば満面の笑みで受け取ってくれるだろう。実際ドロップを狙って一人でよくゴブリンと戦っているのだが落ちる気がしない。お金も増えるし、経験値が増えるから全然いいのだがこれといったレアな武器は手に入っていない。

 ここで一つの疑問があるのだが、いつも武器武器言ってる俺達だがRPGで考えるのならば、防具も重要だと思うのだ。何よりも防御力とかがあるのだとしたら痛みが軽減されそうな気がするので是非とも手に入れたい。攻撃を受けるのに慣れたら麻酔いらずの手術など出来ちゃうんじゃないか?どっちみち痛いのは勘弁して欲しいから試したいとは思わないけど。



「本当に綺麗ね。艶というか光沢というか煌びやかさが半端じゃないわね。あれ....でもここに何か汚れが....」


 ルカは剣に付着している、いかにも鉄臭い匂いがしそうなどす黒い液体に触れた。


「これ....血っ....?」


そう言い放ち、俺の顔を覗いた。


 げっ、拭き残しが有ったのか...綺麗な刀身だから汚れはすぐ分かってたんだけど、柄の部分に乾燥してこびり付いていたのが残っていたみたいだ。



「わ、悪いな....斬れ味が落ちちゃうから結構念入りにチェックしたんだけどそこは見落としていた。」


あははと作り笑いと浮かべ真由花に謝罪した。


「そこの部分は見落としがちだよね。あとで私が拭いとくから気にしなくていいよ。」


「私もここまでの剣とは言わないけど、カズサぐらいのが欲しいわね。」



「真由花ありがとう。おい、ぐらいで悪かったな、ぐらいで。」


 ルカの皮肉も適当にリアクションしつつ、改めて真由花はなんていい奴なんだと改めて実感したのだった。


「いえ、私はアンタの剣も好きよ?見た目的には真由花の奴の方が上なだけよ、なんていうかこう透明感のような可憐さを感じる。」


 確かに女が好きそうなデザインである事は間違いない、だが俺はドュリンダナの方が好みだ。でも剣に対して透明感とかそんな感想を言い出してる辺り相当剣が好きになっているのだろうし、ちょっと危ない人になりかけている気がしないでもない。


「そりゃどーも。そろそろお前にももうちょっといい奴が欲しいよなぁ。さすがにスライムで手に入る奴は厳しくなってきたよな。とは言ってもこの辺りで手に入るのか分からないしな。真由花何か知らないか?」


 今のところ剣技を使えるのはこの中では俺だけだが、真由花は非戦闘員だから必要ないとしても戦闘に対して旺盛なルカは相当欲しがっていると思うのだ。これに関しても入手法は分からないのでどうにも出来ない問題ではあるんだけどな。

ここまで話していて違和感を感じた、何か静かだな....いつもと表現するのもおかしいのだが擦り寄ってくる奴が無言だ。というより寝息のようなものが聞こえる気がする。


「おいレイ......?って....寝てるじゃねーか。」


 他人の家に来てよく眠れるものだ。というよりいつの間に寝てたんだ?

気配を消すのは上手いようだな...だがこんな時に役立てられても困る。寝起きがいいのか悪いのか分からないので怖い部分はあるが放っておくわけにいくまい。


「起きろレイ。」


という俺の言葉に対し


「いいんじゃない?まだこんな時間だからお昼寝させてあげれば」


「そうね、色々疲れていたみたいだし。休ませてあげましょ。」


真由花とルカが小声で呟いた。


「そうだな......今日くらいはゆっくり休め」


綺麗な色をしている髪の毛を静かに撫でた。

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