打ち明ける。
いつまでも話を進めないのもどうかと思うし、そろそろ例の件の事を話すとしよう、剣だけに。
レイとの話に夢中になっているところ悪いが呼びかける。
「真由花。借りてた物を返したいんだが、今でいいか?」
真由花だけへ向けての発言だったのだが、その場の二人も振り向いた。
「私はいいけど、カズサはいいの?」
恐らくその言葉は俺を心配しての発言だったのだろうが、元より隠すのは事が終わるまでだったので全く構う事はない。どうせいつかはバレるだろうし特に隠す理由も見当たらない。
「ああ、別にいい」
そう言葉を返し、ストレージから真由花から借りた剣を取り出し返却した。
「うん、確かに受け取ったよ。で結果は....どうだったの....?」
「え?それが例の剣なの!?どうしてアンタが持ってるのよ?」
「レイ!?なんで私が出てきた......?」
人を斬り、汚してしまった事を話しても真由花は怒りはしないだろうが、しっかり謝るつもりだがそれは最後でもよいだろう。それよりも先にルカにも事情と伝えないと面倒臭いことになりそうなのでちゃっちゃと話しておく。
あと一人勘違いをしてる奴がいるが、放って置いてもよさそうなのであとで何かしらの反応をしてやろう。
「簡潔に言うとだな。あの山賊らしき奴等は俺が殺したその時に一応借りただけだ。」
「ちょっと待って、剣の理由ついでにとんでもない事を聞いた気がするんだけど聞き間違い...じゃないわよね?」
このような事でももったいぶるよりも、さらっと云ってしまった方が説明する手間も省けて楽だし、引っ張ると余計重い話にしてしまう気がしたしな。
「ああ、俺も言い間違えた覚えは無い。あともう一つついでに言うとだな、レイはそこで知り合った。」
「カズサは私を助けてくれた、救ってくれたんだよ....だから....」
レイの言いたい事は分かるがこいつらは責めるような奴等じゃない、そう分かっていても心のどこかでは少し怯えていたのかもしれない俺にレイの言葉は在り難かった、こいつは人を普通に殺せる奴なんだと思われる事を恐れていたのだ。
「そうなんだ。まあそんな気はしてたよ。色々含めて言うね。」
お疲れ様、そしてありがとう。
真由花に言われたその言葉は胸に染み、例え相手がどんな悪人でも人としてやってはならない事をしたとしても橘一颯、俺としては間違った事をしていなかった、これでよかったんだと思えたのだった。
「そうね、私は怒っているわ。けど同時に感謝もしているわ、私達二人で行ったとしても勝てるかどうか分からなかった所へ一人でなんて...なんでそんな事したのよ!!私は仲間じゃなかったの!?これじゃアンタが一人で罪を背負うだけじゃない...そのことが何より私は...わたしは..悲しいわ。」
ルカは涙ぐんで、今までで一番大きな声が工房にも俺の心にも響いたがこればっかりはどうしようもなかったし、こうなる事は覚悟していたが実際に面と向かって言われると込み上げてくるものがある。
今更遅いが謝ろうと俺は言葉を発した。
「す、すまなかっ....」
それに被せてルカも言葉を述べた。
「けど....けどね....ありがとう。」
いつもの高圧的な態度からは予想も出来ないほどの、真摯で本気な気持ちに俺は驚きもしたが、ここで謝るのも違うと考え別の言葉を使った。
「おう。気にすんな」
俺はルカの肩を軽く叩き、笑顔を作った。
その一言で済まされるとは到底思っていないが、今はそれでいい気がした。
静かに見物していたレイだったが、何故かルカは泣くまでには達していないのにレイがもらい泣きのような形で泣きじゃくっていた。
「う....うっ....いい話だねぇ....カズサぁ....私の為にありがとう....」
「今日は生まれてから一番お礼を言われた日だな、それと何でお前が泣いてるんだよ!」
話に感情移入しやすく、感情の起伏が激しい奴ではあるが俺やルカ、真由花の変わりに泣いてくれているのかもしれないな。
でも宥めるのは慣れていないのでどうしたらいいのか分からないのが、俺の他人との関わりの薄さを現してしまっているのかもしれない。
「うう....ぐすっ....カズサ頑張ったんだね。なんだか私も泣けてきちゃった。」
レイに釣られて真由花も泣き始めてしまい、二人の泣声がハモって物凄く煩いのだ。でも女が泣いてる時に煩いと言うのは逆効果だって本か何かで読んだのだが、その後の対処の仕方も記して欲しかったものである。
「何であんたたちが泣いてるのよぉ...私も涙が...出てきちゃったじゃない...ううっ...」
どんだけ釣られやすいんだよ。俺が言うのもなんだけどさ、もっと自我を持った方がいいよ?みんなで泣かれると収拾がつかない。
泣いていても顔が不細工に成らないところを見ると、可愛いってのは泣いてても継続されるんだなと思いました。
「うわっ、これは酷い。」
改めて現状を確認する。
女が三人で女泣きし、工房はまさに阿鼻叫喚。いまお客さんが入ってきたりしたら俺が何かしたのかと思われるので早く宥めてやりたいのだが術が思いつかないので、自然と時間に任せて俺は大人しく座って待っているとしよう。
「やれやれ、どうしたもんかな。」
椅子に座り俺は頭を抱えたのだった。




