訪れ。
「俺はこの後真由花の所へ行くけど、お前らはどうする?」
朝御飯を食べ終え、歯磨きを済ました俺達はのんびりくつろいでいた。
「昨日の続きの話をするんじゃないの?アンタが腹減ったから引き上げたじゃない、それに剣も見せてもらう予定だし!」
ああ、そういえばそんな事も言ってた気がするな。
特に腹は減っていなかったのだが早く帰るための口実を用意したかったので、腹が痛いや頭痛がするでも構わなかったのだが余計な心配を掛けないに越した事はないので無難な腹減りを使用しただけなのである。
実際事はもう終わってしまったので話し合う内容など無いのだが、ここでルカにも説明して真由花にも話すのは二度手間なので、二人が一緒の場所へ集まってくれるのは楽でいい。
剣は今俺が所持しているのだが、まあ事情を説明してから真由花に返してからついでに見せて貰えると思うぜ。
「レイはどうする?出来れば一緒に来て欲しいが」
これから共に過ごす仲間には早めに溶け込んで貰いたいし、特に行くところもないだろうと思い誘った。
「うん、行く。ここら辺の事全然分かんないし......」
俺も人に説明できるほど分かっちゃいないので、後々真由花にでもお願いするとしよう。
「よしじゃあ行くか、腹ごしらえは済んだしな。じゃあフラちょっと出掛けてくるよ」
宿屋に休日という二文字はなく、いつでも誰でもお迎えできる状態でありフラがどこかへ行くのは昨日のような時だけだ。
「友達のところ行くだけなら危なくないだろうけど、一応は気をつけなさいよ」
まるで親のような話し方で親と話す機会の少なかった俺としては感慨深い物があるのだが、こんなデカイ子供がいる歳じゃなかろうに。
苦労してるんだなぁと改めて感じたので、いつかは何かお返しが出来たらなとも思うが、欲しい物も分からなければ実用性のある物を持ってすらいないがルカとでも相談するとしよう。
「ありがとう、気をつけていくよ。」
「なんだか気味が悪い、いつもはそんな事言わないのに急にどうしたんだ?何か起こりそうで怖いぞ」
「ただの気まぐれだ、気にしないでくれ」
この時俺は、何かが起こるならそんな事を言わなければよかったと本気で思ったのであった――。
「レイ、これから行くところは俺達の仲間がいるところだ。よかったら仲良くしてやってくれ」
宿を出て工房に向かい俺達はゆったり歩いていた。
「うん。友達は増えるの嬉しいよ。でもまた女の子だったりするのかな...?」
女だったら女同士の方が話しが弾むって物じゃないのか?それなら気にするところじゃないと思うんだが、まあ女の子には色々あるのだろう。男の俺には理解できない事が。
「またって言ってもな。ルカくらいしかいなかったと思うけど」
レイと二人並んで歩いている後ろから、声が聞こえた。
「私達友達が少ないっていうか知り合う機会が少ないのが問題ね。この村の人達とも顔合わせることが無いとは言わないけど無いに等しいのよ。」
この村に住んでいても土地を持ったり、家を持ったりしていなくただのお客に過ぎない俺とルカだ。向こうからもその内出て行くだろうと思われている所為なのか干渉してこない、家も仕事も持っている真由花なら知り合いは多いのかもしれないが、同年代は俺達くらいなのでどんな事を普段村の人たちと話しているのかはちょっと気になったりする。
「じゃあしょうがないんだね、ごめんね?カズサは女の子の友達しか作らないのかと思っちゃった...」
友達が異性しかいないというのは寂しいと思うし、俺も男の友達が欲しいと最近は思うようになったが出来る気配などなく、最近はこのままでも居心地は悪くないとも感じるようにもなってきたのだ。
「俺が一番気にしてるからな。その内できる予定だ。そう遠くない未来に。」
「でも将来の旦那さんがモテモテってのもなんか嬉しいかも!あ、もしかしてここ?」
話して込んでいるうちに気づいたら着いていたようだ、ルカが俺達に続き少し遅れて着いた。
「食後の軽い運動ってところかしらね。毎回来るたび入り口だけを見ると、どんなおっさんが作業してるのかと思っちゃうわ。」
「分からんでもないが、いい加減慣れようぜ」
俺とルカは最初に入ろうとした時はちょっとびびったりしたが、前情報がルカの時よりも多いからなのか全然気にしてなどいない様子で、むしろ自分で戸を開けた。
「こんにちは~」
レイの挨拶に骨髄反射的に返すが、その後少し驚いた様子だった。
「あれ?珍しいお客さんだね、いらっしゃい。私は楓真由花よろしくね」
真由花は初めての奴にはまず名乗るらしい、俺には真似出来ない商売意識の高さなのかもしれないな。そんな真由花に対してレイは...
「私はリスポカ=レイアシスです、むーカズサの言ったとおり可愛い人だ....胸もそれなりにあるし....でも私も負けてないんだから!」
「え?何カズサの知り合いだったの!?それに可愛っ!?本当にそんな事言ってたのっ!?」
俺とルカを置いて先に入っていったレイだが、真由花の声が外まで聞こえるくらい声が大きかったので近所迷惑にならない内に落ち着かせよう。
「おい外まで聞こえてんぞ、可愛いくらいで慌てる事はねぇだろ。そんなに喜んで貰えるなら何十回、何百回でも言ってやるよ」
「うーん、それはそれでいいと思うんだけど。普段そんな事言わないからこそ言ったという事に価値があるような...」
誰にでも言うわけじゃないが、どんな容姿であったとしても仕草や行動で可愛いと思う事はあると思う。そんな時に可愛いと言える奴が人付き合いが上手い奴なのかもしれないが、言う相手すらいない場合は例外だ。悲しい体験談である。




