Cave。
「それでなんだけど、あったわね...」
「ああ、あったな...」
俺が遠目で見た通り、やはり洞窟は存在していた。
「どうする?行く?私はまだ余裕があるけど。アンタの疲労もあるし無理にとは言わないわよ」
先程の戦いで多少疲れたのは確かではあるが、初めてのあの時とは違うし何よりも好奇心を抑えられそうにない。
「行くに決まってんだろ、また来てもどうせあいつを倒さなきゃダメだろうからいつでも同じだと思うしな」
「アンタがそう言うなら別にいいわ、私も興味はあるしね」
未知の領域というのは凄くドキドキすると同時にワクワクもするのが人間の性という気がする、人によって違うだろうから一概には言えないが。
「アンタ凄いわね、結構距離あるわよ、よく裸眼で見えたものね」
「まあな、俺はこの黒い瞳の中にも若干青みが入っていてな、そこに特殊能力が含まれているからな」
「えっ!?うそ!?見せてみなさいよ」
ルカはそう言い放ち、俺の瞳を覗く様に顔を近づけてきた。
「どこにも特殊能力どころか青みすらないじゃない!嘘をついたわね!」
「いや、普通信じるか?大体そんな能力があったら最初から言ってるつーの。」
流石の俺もコレを信じるとは思わなかったので少しだけ申し訳ない気持ちになってしまった、どんだけ純粋なんだよ。お前は人を疑わない小学一年生か。
「それもそうね!何かあったら私に言いなさい!」
「いや、お前は俺のオカンか」
仲間の現在の状況を知っておくのは必要な事だとも思うが、どんだけ親しい相手にも隠し事をしないというのは難しい、そんな事を出来るやつがこの世界に何人いるだろうか?
人はそれぞれ何かを隠して生きているとも思っているがそれは人間だから仕方のない事ということでお互いに目をつぶっていると思う。
俺たちの場合は"今迄の事"というよりも"これから"が重要なのだ、今ここで過去を告白したところで何も変わりはしないし、仲間が減る可能性も否めない。
そんな事を考えているから俺には友達がいなかったんだろうし、仲間をそんな風に扱う俺は仲間と呼べる物ではないかもしれないが、同じような境遇で出合った、僅かながらに縁という物を感じずに入られなかった。
「立ち話もなんだし、行こうぜ」
ここから洞窟までは結構距離がある、先程の戦いで思いの外時間を消費してしまったので時間を大事にしていきたい。
「そのなんって場所が喫茶店とかじゃなく洞窟ってがなんとも言えないわね。」
文句を垂れながらもこの歩きにくい草が生い茂った森の中でも黙々歩いてくれる、足が痛いとか疲れたから帰ろうとか言わない分、こいつも中々に大人びているのかもしれないな。さっきは小学生とか言ってごめんな。
--------------------------------------------------------------------
「案外すぐ着いたわね」
「そうか?見た目通りだと思うが」
オークの場所から歩いて5分くらい、まあ見えるくらいなので真直ぐ道で距離もそんなにはなかった。
俺達の目の前には、高さおよそ10m横20mくらいだが作りはとてもしっかりしていて崩れる可能性もなさそうで岩、石に隙間などは無く、老朽化もも感じられなかった。
ただの石でできた自然の物のはずで周りには何もいなく、中も暗くてよく見えないがその風貌は堂々たるモノで思わず息を飲む程には神秘的な何かを感じた。
「なんかあれだねー真由花も連れてこればよかったかなー?」
ルカも同じように神秘的なものを感じたのかもしれないが、真由花は連れて来ないほうがよかった、ここには何かを感じるのだ。元来から戦う事が得意というよりは敬遠、苦手意識を持っている真由花は何かあった場合、はぐれたりした時非常に危険なのである。
「いやあいつここまでくるのはしんどいだろ、オークいるし、それにあいつはそんな柄じゃないだろ滝とか見て興奮するよりは剣作ってたほうが楽しいんじゃないか?」
「あー!なんか分かるけど、アンタ馬鹿にしてない?いくら真由花とはいえ女の子よ?さすがに剣を作ったりするよりはそういう煌びやかなものが好きなんじゃない?」
「いくらって言ってる時点でお前も変わらないだろ、この話本人が聞いたら怒るぞ、ここだけの俺達だけの秘密な」
女というのは二人だけの秘密とかに弱いらしい、昔誰かが言ってたか何かで読んだ記憶がある、実際に試すのは今回が初なので真偽は定かではないがまあ言いふらされても困る事ではないのでそこまで気にしないがな。
「そんな約束しなくても言わないわよ!まあ友達と秘密を共有できるってのは何か仲間って感じがしていいけどね」
こいつも友達がいなかったんだろうか...まあそんな事を聞くのはまだ先でいいだろう、いまは洞窟が優先だ。
「何が起こるか分からないから気をつけろよ」
いつまでもここで話している時間も惜しいので洞窟の中へ向けて足を動かしはじめた。
「そうね、慎重にいきましょ。暗くて夜になったら何も見えなくなるかもしれないし」
慎重かつ早くってのは難しいが長そうであったなら途中で帰るという手もある。
「ああ。」
近づくに連れ、先が見えるようになったところで俺達は洞窟の中へ入ったのだった。
洞窟の中は外より気温が低く涼しいが、それでも元から気温の差が少ないこの辺りではそこまで変わるとは思わなかったが奥に進むにつれ肌で感じるほど涼しくなっていった。




