喜。
夏の空は高いと聞くが、冬の空もそんなに変わらない様に映るのは俺の目が曇っているのだろうか、雲だけに。
そんなつまらないことを考えていても足は動く、慣れとはいい物なのかよく分からないな。
初詣だろうと特に行く所もないので走る、走ってる間は無心になれて気持ちがよかったのだが最近は色々考えてしまう。それでも足取りが軽いのは俺が少しでもワクワクしているからだろうか、あっちの世界に帰れない怖さはあるがそれでもいつか帰れたらなくらいの気持ちしかないのはお袋と親父に申し訳ない。
今日は新年かどうかは知らないが、俺の中では新年であり。あいつ等も同じ気持ちだとは思う。
がしかし新年と言ってもこの世界では特にないのだろうか?クリスマスはあったから普通にお雑煮や御節が出てきそうな物ではあるが、御節とは家庭により大きく異なり、中身も違う事も多々ある。
身体はしっかり休まったし、戦いにも馴れた。
オークの再復活を確認しに行こうと思っている、独りで行くつもりでは有るがあいつ等に一言くらいは言っておいてやろうと思う、死ぬことは考えていないが万が一ってのがあり、無闇に森に突っ込まれても困るしな。
-------------------------------------------------------------------
シャワーを浴びながら考える。
この時期に寒くないのは過ごし易い、が季節感がないのは違和感を覚える。
夏は暑く、冬は寒い。それでこそバランスが保たれているのだと実感するのである。
雪など降りそうにないが、ここから旅立ち色々な所へ行けば見れたりするのだろうか、今のところ出て行くつもりは毛頭ないが、この世界のことをもっと知りたい。自分の足で歩き、巡りたい気持ちが無きにしも非ず状態である。
真由花はまだしもルカは着いて着そうではある、だがあいつを二度と危険な目に合わせたくはない、みんなの前では元気に振舞っているが少なからず恐怖心は植えつけられたのだと思う、死ぬことへの。
もしもあいつがそれでも俺と旅をしたいというのなら全力で守りたいと思う。
ここら辺で住んでいるだけなら真由花もいるし、危険は少ないと考えている、まあすぐに出て行く訳ではないし、これから考える時間くらいはあると思いたいな。
現在時刻は六時三十分、マスターは起きているとしてルカは起きているのだろうか?最近のあいつはネボスケなので恐らく寝ていることだろう。この時間に起きる俺が年寄りみたいであってあいつの年くらいだとよく寝たほうが成長するのだろう。俺も変わらないが。
「おはよう」
いつも同じなのは味気ないとも思うがそこまでエンターティナーに長けている訳ではないので、現状に満足するしかないのが大変心苦しいのである。
まあただ何も思いつかないだけなんだけどね。
「おはよう、お疲れ様」
マスターもすっかり慣れてしまっていた様でいつもと同じ返しをしてくる、よくよく考えればマスターの名前知らねぇ...
てかまだあいつ起きてないのか。
「ああ、サンキュ。ルカはまだ寝ているみたいだな、起こしてこようか?」
「鍵はいつもの所に在るから、朝飯作るとするよ」
「ありがとう、じゃ起こしてくるよ」
ここ最近の俺の日課である、ルカの目覚まし。
もちろん本人に許可は取っているし、あいつから言い出したことなのだ。
俺が提案したわけでもマスターが勧めた訳でもない、あいつが朝御飯に起こしてくれとお願いしてきたのだ。
まあ条件は色々あるが、俺とマスターと真由花ならいいらしいのだ、ここの宿屋は稀ではあるが旅人も立ち寄る。
そんな事を言わなくとも見ず知らずの奴にお願いしたりするつもりもないし、いらない条件ではあったが念のためと言うことだそうだ。意外とマメな奴なのかもしれないな。
許可をされても俺も男だ、女子の部屋に入るのは抵抗が無い訳ではないが相手が意識してないのに俺が意識してるように思われるのも悔しいので普通に入室する。
一応ノックをし鍵を差込み、ノブを回す。
「おい、起きろ。」
初めは軽く起こしても見るがどのうち起きないので軽く身体を揺する。
「朝だぞ、起きないんならビンタするぞ」
本気でする気はつもりはないが、軽くならしてやってもいいかと考えるが大体これで起きてしまうので少し残念だ。
「う...うん..?おふぁよー」
「欠伸くらい手で隠すくらいの女子力は見せてみろ」
毎朝同じ事を言ってる気がしないでもないが、改善されるまで言い続けるつもりではあるが飽きたら辞めようと思うレベルでもある。
「はいはい、気をつけますよ。着替えるから出ていって」
朝っぱらから口が悪い奴だが寝起きなのでしょうがないと自己解釈して大人しくマスターの帰っていく。




