次の日。
「いてて・・・。」
朝起きると全身が痛い。痛いってレベルじゃないものすごい痛い。
ああ、昨日の剣を振り回したせいか。
やっぱこの世界に来たのは夢じゃなかったな。
でも意外と順応性はびっくりするくらい高いと感じる。それどころかこの世界にくるために毎日トレーニングをしてたとも思うくらいだ。
いや、さすがにそれは考えすぎか。
「今日はランニングは無理だな。」
体が痛いのもあるが、走るルートがない。適当に走って迷子になるのも嫌だしな。今日のところは村をじっくり回るとしよう。ついでにいいルートが見つかるといいな。
「ご主人おはよう」
「おお、おはよう。こんな朝早くからどうした?」
「なんていうか習慣?のようなものだ。ここに来る前は、毎朝この時間に起きていたらからな。」
さすがにこの世界に来る前とは言えないな。なにいってんだこいつ頭ラリッってんのか?とか言われて追い出されたら悲しいしな、まあそこまでは言わないと思うが。
「そうか。まあ、はやく起きるのはいいことだしな。これからも続けるといい。」
「ああ、それで聞きたいことがあるんだが、いいランニングコースを知らないか?毎朝続けてた日課だから是非とも続けたいと思ってる。」
「そうだなぁ、ちょうどいい道があるぞ。7km位行った先に海がある。よく人が通る道だから歩きやすくはなってるし、この時間なら人はあんまりいないと思うぞ」
「ありがとう、今日は筋肉痛が痛くてとてもじゃないが走れないから、歩いて景色でも拝みに行ってくるよ。」
「そうか、のんびり行くといい。朝飯はどうする?すぐ帰ってくるなら用意しとくが」
厳ついこの女が料理できんのか?昨日の夜は、飯食う余裕もなく寝てしまったからな。死ぬほど腹が減ってるので、飯食わせてくれるのはありがたい。
「マスター、あんた料理できるのか?できるなら行く前に食べさせて貰いたいんだが」
「おい、お前馬鹿にしてんだろ?料理も仕事のうちだっつーの。今から作るから待ってろ。」
待てよ。飯は宿代に含まれるのか?含まれないなら持ち合わせが、そこまで多いわけでもないし。一応聞いておくか。
「飯代は宿代に含まれるのか?含まれないなら値段も教えてくれるとありがたい。あいにく昨日稼いだ分しかないんでな。」
「夜飯は含まれている。だが、朝と昼は含まれていない。サービスのようなもんだ気にしなくていい、それに私好みのかわいい顔をしてるしな。」
「なるほど。お前がいいやつだってことは分かったが、急に告白されても困るな。俺はまだ十五だから人を養うような余裕はない」
夜飯だけだったとしても一日200pzという格安だ。スライム10匹狩れば溜まる。
いま12140pzあるし。1週間分まとめて払うのもいいかもな。毎日払うのは面倒くさいし。
「どうも、ありがとうよ。十五のやつは普通そんな反応はしねーよ。年上のお姉さんにからかわれて照れるくらいを期待したんだけどね。飯できたぞ、素朴もここの売りなんでね」
焼き鮭とご飯と目玉焼きというごく一般的な朝食だった。
「すまないな、昔からよく愛想のないやつだと言われてたからな、今度から気をつけてみることにするよ。それじゃ有難く頂くよ。それとあとで話がある。」
「いただきます」
予想以上にうまい。元から期待してなかった分余計にそう感じるのだろうか?俺の舌はそこまで肥えていないがいままで食べた料理で1番美味しいと思うレベル。
「予想以上の美味しさだった、疑って悪かったな。これなら俺の嫁になっても大丈夫だな。」
「楽しみにしとくよ。それで話があるんだろ?」
「あぁ、昨日と今日も含めて一週間の宿代纏めて払うよ。」
「そうか。なんとなくそんな気はしていたけどな。1週間纏めてなら1400pzを1000pzにまけとくよ」
飯のこともあるが、それに明日になれば狩りにいける。まだ売ってない装備とかあるし、まけてくれるのはありがたいが、ここは断ろう。そんなに儲かってないだろうしな。
「いや、飯のこともあるし2000のままでいい。昨日張り切ったからな。これからもよろしく頼む」
「そうかい。此方としてはどちらでもかまわないぞ。1週間はよろしくな」
「腹ごしらえも済んだし、俺は海までちょっくらいってくる」
先に武器屋にも行って手持ちの装備減らそうかな。持てる数が50個くらいしかないし、なにがあるかわからないから枠は常に空けときたいしな。
「それは構わないが何か武器は持っているのか?昨日は素手でスライム狩りにいったぽいが。海まで距離もあるし何が出てくるかわからないからな」
「大丈夫、スライムから一本だけドロップした少し重いが、両手で持てばなんとかなる剣がある。」
刃先がない剣は五本はあるけど、こいつは売れるのだろうか?売れないなら捨てようかなと思ってる。使い道ないしな。スライムから泥するものなんてこんなもんだろうな。両手剣ぽいの落としたのはラッキーだった。
「なら大丈夫だな。そんな強いモンスターはこの辺りにはいないし、適当に振り回しとけば倒せるだろう。」
「そうか。じゃあ夜までには帰ってくることにする」
そう言い残してドアを開けた。今日もいい天気だ。