くりすます。
あれから床に着いたが色々考えて中々寝付けなかった、だって今日クリスマスなんだぜ、という事は昨日はイブだったと言う事だ。
前の世界にいた時はもちろんクリスマスというイベントはあったのは知ってるし、うちの両親は共働きで日本にいないため特にこれといって何かをやった記憶はない。
そのため後何日後にクリスマスだーとかは考えていなかった。それにこの世界に来た事によりそれどころではなかったし、いつもと変わらず何もせず過ぎていくものだと考えていたしな。
現在朝の五時、いつもより三十分くらいは早く目覚めてしまったようだ。僅かな誤差ではあるが、やったことのないクリスマスというのに少し心が躍っているのかもしれないな。
いつも通り熱めのシャワーを浴びて脳を覚醒させる。
いつもと同じ服に着替える。
今日朝早めなので、ルカは寝てるだろうし起こしちゃ悪いので、出来るだけ音を立てずに大広間に向かう。
誰かが動いてる、というよりこんな朝早いからマスターだろう。いつもより30分は早いはずなんだけどな、いつも何時に起きてるのだろうか?朝早くやることもなさそうな物だが、意識して起きてないとしたらあの見た目で老人のような生活を送っているのだろうか。
静かに歩いていても一定距離近づくと足音に気づいたようだ。
「ん?」
「おはようマスター、早いな」
「ああ、あんたか、おはよう。ルカはまだ寝ているみたいだよ」
あいつは明らかに寝起きが悪いタイプだろうな、真由花のとこに行くのも昼くらいからでいいだろう、ゆっくり寝かせておいてやろう。
「まあ、昨日はいろいろあったし寝かせておいてやってくれ」
「分かったよ、あんたは走るのかい?」
「まあな、日課だし特に休む理由もないな。」
クリスマスといえば冬で寒い、俺の住んでいたところでは滅多に雪は降らなかったが、何年かに一度くらいは降ったものだ。
それでもいつもよりちょっと厚着をして走った、まあ靴は水を吸いとてつもなく重く、指先の感覚はなかったな。
この世界では冬というものをそこまで感じない、寒いといっても肌寒い程度だ。夏の夜くらいの気温でしかない。走るならもってこいの世界、全国のランナー歓喜だな。
「そうか、気をつけて行ってきな」
「ああ、帰ったら飯食べたいな」
軽いストレッチをし、ドアを開いた
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「はぁはぁ...」
左胸に手を当てると鼓動が早くなっているのが分かる。
ランニングの最後の一kmは全力で翔けるためどんなに体力をつけようと肩で息をしてしまう。
普段からマラソンばかりしているといざという時に走れなくなってしまうからな、それに足を早くしたいなら遠距離より短距離っていうしな。
軽いダウンを済まし、宿屋の扉を開こうとしたところで何か聞こえる。
扉に耳を当て声を窺う。
どうやらマスターとルカが話しているようだ、現在の時刻は【6:10】だ。
ルカのやつは意外と目覚めがいいらしい、俺の予想は外れたようだ。
盗聴する趣味もないので、中に入る。
「ただいま、あとおはようルカ」
汗だくで匂いが気になるんじゃないかと思い、返答は待たず自分の部屋に戻る。
自分の部屋にあるいうならばプライベートシャワー、とあるテーマパークにちなんで名づけてスプラッシュシャワーだな。
さっき着ていた服は洗濯行きだな、新しいのに着替えよう。
腹減ったな、大広間に戻るか。
金髪同士仲良く会話しているらしい、仲睦まじいのはいい事だな。
「おう、メリークリスマスだな」
「やっときたわね、あたしもうお腹ぺこぺこだわ、待ってたんだから感謝しなさい!」
「感謝しなさい!」
「マスターまで口調真似するな、あの短時間で仲良くなりすぎだろ。はいはいありがとうございましたー」
呆れつつも待っててくれるとはいい奴等だな、と関心しながらもメリークリスマスをスルーされた事にちょっとへこんだりしたが、いつもより豪華というほど食してはいないが、夜ご飯じゃないかと思うぐらい豪華な朝ごはんだ。
「おお、さすがクリスマスだな?うまそうだ」
「せーの」
「え?なに?」
「「めりーくりすます」」
ちゃんと言うならもっと早く言って欲しかったな、俺一人なんかフライングしたみたいじゃん。




