居場所。
遅くなってすいません!毎日確認とは言いませんが時々確認して頂けるとありがたいです!
「こんな感じか?」
真由花が慣れた手つきでトレード申請を表示してくる。
【trade】 【yes】【no】と見た回数は少ないが見慣れたとも言えるウィンドウだ。
でも本当にあったんだな。疑ってた訳ではないが自分には出来ないことをされるってのは新鮮だな。
現状ではどんな事をしても俺には出せない訳だしな、この世界ならである。
画面に表示されたのは9つのウィンドウとアイテムストレージ。
使った事はなくてもアイテムストレージが開いたという事はドラッグするか選択すれば自動的に交換ウィンドウに入るのだろう。
交換ウィンドウにポイントぜニーの表示があるので今回はそちらを使う事になりそうだ。
ポイントぜニーをタップすればパソコンのテンキーの様な数字を入力する為の画面が表示れた。
先程真由花に提示された額を入力し、【ok】を押す。
真由花の表情から察するに上手くいったようだな、アイテムストレージの金を見るが確かに減っている。
「これは便利だし、楽だな。使えると色々便利そうだ。」
鍛冶屋の娘は黒髪のポニーテールを揺らしながら笑顔を浮かべた
「まいどあり!もうこんな時間だし明日でいいかな?今日はもう店閉めたいなーって」
その言葉を聞き時間を確認する。
【19:35】
「悪いな、もうこんな時間か。特に期限を設けるつもりはないし時間があった時でいい」
欲を言えば今すぐにでも欲しいが、本来の営業時間は過ぎてる訳だし、無理をいうわけにはいかない。金を払ったにせよお願いしてる立場だしな。
到底そんな事をするとは思ってないが、完全に信用するにはまだ時間が浅い。
このまま真由花が夜逃げなどをしても剣は渡していないし、金ならまた貯めれば良いだけの話だ。
「わ!もうこんな時間まで御免なさいね。真由花、また明日来ても良いかしら?どうせ此奴も来るんでしょう?」
「いいよー、どうせ暇してるしね、話し相手がいると楽しいしね!」
「へいへい、じゃあ真由花、また明日な、お休み」
ルカにも視線を飛ばし、俺はウィンドウを操作し机の上に置かれていた愛剣をストレージに収納した。
「ありがとう。また明日ね、おやすみなさい。」
真由花を尻目にルカと同時に歩き出し、男の俺がずっしりとした扉を開いた。
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扉を出た所でルカに対し疑問を投げかける
「そういえばお前何処に住んでんの?」
するとルカは大きく目を開き、口を大きく開いた、簡単に言えば驚いた顔だ。
「住む?アンタ可笑しな事いうのね、真由花みたいな強運は未だしも、いきなりここの世界にきて住むところなんてある訳ないじゃない。」
それもそうなのだ、いきなり知らない世界にきて住んでる奴の方が少ない。そんな事は当たり前なのだ、でも俺は違った、宿屋金髪によればおっさんが運んでくれたというのだ、そのおっさんは何故俺を見つけ宿屋に運んだのだろうか。
この世界に来て宿屋から前の記憶がない。つまり俺は自分が何処で拾われたかすら知らない。
「それも…そうだな…じゃあどうしてたんだ?」
「どうしてたも何も、この世界に来てまだ二日目だもの、一日目はスライムと闘っていたら明けたわ。」
驚いた、こいつは初日から闘って夜を過ごしたのか…ワイルド過ぎるだろう 、何処ぞのサバイバーでも此処までタフにはなれないんじゃないか?
ましてや女だ。女だからという否定はするつもりはないが、それでも男に比べたら力も体力もない程華奢なのだ。
「そいつは寝てなくて、さぞ眠たい事だろう。そうだな…」
「お前、俺の住んでるところに来るか?」
「へぇーここがあんたの住んでる所かー、まさに宿屋って感じの雰囲気があるわね。」
俺を泊めて貰っている宿屋のドアの前、特に住むところもなく野宿しかないようなこいつを気遣ってやった、一応女だしな。
誘ったはいいが空いてる部屋はあるのだろうか?俺の部屋は二人くらいなら休める程広い。まあ俺も年頃の男だ、俺は別に気にしないが、こいつが意識してしまうだろうから同じ部屋というのは憚られる。
「そうだな、改めてドアの外から眺めたことはなかったが今見ると古民家って感じはあるな」
まあ家の外見は古民家って感じではあるが、中にいるのは金髪の外人だからな...それも和食を作る、中々面白い組み合わせだな。
「ここにいても寒いし、中に入ろうぜ」
「ええ、そうね。そんなに寒いというほどではないけれど、肌寒いわね。」
何度か開け閉めしたドアに手を触れ、鍛冶屋とは違い、軽く、楽に開けれるドアを手前に引っ張り、見慣れた景色に足を踏み入れた。
「ただいま。客を連れてきたぞ」
「おかえり、客?知り合いいたの?」
この金髪はまだ会って間もないくせに失礼なやつだな、確かに友達はいねーけどな...
ルカは明らかに外国人のやつが日本語を流暢に話す姿をみて驚いている、俺も初対面は面食らったがすぐ馴れたな、こいつは金髪同士仲良くなれるんじゃないか?知らねぇけど。
「ああ、こっちはルカって言うんだ泊まるところないらしいから連れて来た」
背中に隠れていたルカの肩を叩く
「こんばんは、片淵瑠香っていいます。住む所がなくてですね、でもさすがに野宿はなーっって思ってたところで誘われたのでお訪ねしました!」
「へぇ、こいつと違って礼儀正しいじゃない。部屋は空いてるし何泊でもするといいわよ。一泊夜飯付で二百pzよ。」
改めて思うと安いよな、よく経営が成り立ってるなと思うが土地代とかがどうなっているのかとかは分からないし、何とも言えない。
「安いですねー、それなら昨日稼いだ分でなんとかなりそうです」
口ぶり的に持ち合わせが少ないのだろう、そんなに戦わずオークまで行くとはやるな、それともあの謎の土地勘なののお陰なのかエンカウントが少なかったのだろうか?まあでも少しは戦えていた剣を持ちオークと剣で戦っていたのだからな、俺が言うのも何だが筋がいいのかもしれないな。
「よし、決まったな。宜しくなルカ。夜飯にしてくれマスター」
「はいはい。宜しくねルカちゃん、女の子は大歓迎よ。夜ご飯付といったけど朝ごはんと昼ごはんも言ってくれればサービスで作るわ。」
「此方こそ、宜しくお願いします。そんなにしてもらっちゃ悪いですよ。」
あの値段で全食付は美味しいよな、しかも和食だから食べ慣れてて安心だし。
「暖めるから椅子に掛けて待ってな、この時間だし残り物でごめんな」
「気にするな、冷めててもいいくらいだ、冷えててもうまいからな」
申し訳なさそうな顔をするマスターにフォローを入れる、マスターは何も悪くないし、むしろ俺達が遅かったからなマスターにそんな顔はして欲しくない。
「私も同じです、お腹減ってるので何でも構いません」
「悪いね、まあ明日は気合入れて作るから期待しててくれ。なんといっても明日はクリスマスだからな!!」
「え?」
「え?」
二人の声が初めて重なった瞬間であった。




