仲間。
「日本人なのか...?」
「ええ、そうよ!何か問題でも?」
この世界の人種がどうなっているのかは知らないが、まず日本人が多いという事はないだろう。宿屋のマスターといい、老人といい、明らかに日本人顔ではなく彫りが深いので俺のようなアジア人は珍しいのだ。
先程の発言を受けてからこいつの顔をよく見ると鼻は低く目の色は茶色がかった黒だ、じっくり見れば日本人だと分かる。
しかし俺は金髪のせいでこいつは俺からしたら外人だと、そう思うくらいに自然な綺麗なブロンドだったのだ。
「いや問題は無いんだけどな、人に名乗らせる前に自分が名乗るのが筋じゃないのか?」
「そうね、まあ減るもんでもないし、いいわ。私はルカ。片淵瑠香よ!覚えておきなさい!」
「はいはい、ルカね?俺はカズサ、橘一颯だ!よろしくなルカルカ!」
「いきなり馴れ馴れしいのよ!まあいいわ。カズサ、貴方は私と同じ日本人よね?」
「ああ、間違ってない。あとお前の勇者な!」
「はいはい、勇者様ありがとうございました。それよりも大切な事を聞きたいんだけどあんたは、いやカズサはここの国、いやこの世界で生まれたの?」
こいつは"この世界"以外の世界を知ってると言っているようなもんだ、それを踏まえて考えればこいつも俺と同じ感じでこの世界に来たのだろう、仲間になってくれそうだしこいつに嘘をつく理由はないな。
「いや、違う。気づいたら、朝起きたらこの世界にいたんだ。お前はどうなんだ?」
「やっぱり、何故かそんな気がしたんだよね。私もよ、気づいたらこの世界にいた。」
「そうか、その言葉を聞くのはお前で2人目だな、俺にそんな能力は無い。それは気のせいだしウッドエレメンタルだ、このセリフも2回目だ」
「え?そんな事を言った人がいるの!?どんな奴?私達と同じ違う世界からきた人?」
「そう質問を重ねるな、ここからすぐ行った村の鍛冶屋をやっている黒髪の少女だ、聞いてはいないが名前からしても恐らく俺達と同じだろう」
「何で聞いとかないのよ!大事なことでしょ!」
キイキイ煩い奴だな、まあこれから仲良くやっていくかも知れないし多少は仕方ない...か。
「悪かったな、まあさして興味も無かったわけでもないがいきなり聞くのは気が引けたんでな、じゃあ今から聞きに行くか?いまから行けばぎりぎり間に合うと思う」
タイムで時間を表示させ、【16:14】を確認し、ルカの反応を窺う。
「そうね、行くところもないし行って上げてもいいわ、色々話しながら行きましょ」
「そうだな、俺は誰かさんのお陰で今日はもう疲れたしのんびり歩こう」
ドゥリンダナを装備から外し、ストレージから両手剣を肩に掛け、来た道を確認し、間違えないよう木の傷を確認しながら帰路についた。
「ねぇあんたのあの綺麗な剣はどこで手に入ったの?」
「ドュリンダナの事か?あいつは確かゴブリンからドロップしたかな、正確にはゴブリン3匹同時に狩った時かな」
「あの剣、ドュリンダナって名前なのね、発音しにくいわ。ゴブリン?あそこの森にはそんなのもいるの?しかも3匹同時!?あんた凄いわね。」
「俺よりもお前の方がすげーよ、ゴブリンに出会わずあんな奥まで行けたのかよ」
名前に関しては俺がつけた分けじゃないし、俺に言ってどうしろっていうんだよ、名前付けるのか?剣の名前とかどんな感じで付ければいいか分からねーよ。チョコとかイチゴとかでいいのか?さすがにだせーだろ。
「ま、まあね!私の力があればあんなもんよ!あ、ここ左ね。」
「え?真っ直ぐのはずだけど」
「いいのよ、こっちの方が近いのよ。ここまでは見慣れた景色だし。」
おいおい、こいつ何言っちゃてんの?ここはお前の庭か!こいつは意外と地理に詳しいというかそういう物に対して強いのかもしれない。
こいついれば傷とかそんな地味な事しないでよかったのか、意外と使えそうだな。
「そうか、ならお前に任せる。あんまり信用してないが一応着いていく」
「まっかせなさーい♪泥舟に乗った気分でいなさい!」
いまのはこいつなりにボケたつもりなのだろうか?そんな使い古された物じゃ俺は超えられそうにないな。それとも本気で言ってるんだとしたらこいつは馬鹿か天然なだけだな。まあどっちも意味は同じようなものだが。
「まぁ、頑張ってくれ...」
森の入り口に向かい、軽いステップを踏むやつに静かに着いていった。




