セカイノハカイシャ
アレックス達が惑星を離れ、3年
ただまっすぐまっすぐに地球を探し航海を続けていた。
だが、いまだに手がかりさえも見つけられず、この何もない宇宙をさまよっている。
景色は変わらず。トラブルもなく、ただ計器だけが時間と距離を刻み続ける。。
「アレックスさん!大変です!」
「どう、した?何か、トラ、ブル?」
「高重力下で筋トレしてる場合じゃないです!スイレンたちからの通信が入りました!」
二人が惑星を離れてから、スイレンは最低でも週1は通信を行っていた。
だが1年前から距離が離れすぎ、距離と時間の影響を受けにくい亜空間量子通信ですら、タイムラグどころかほとんど通信が届かない状況となっていた。
そんな中、久しぶりにメッセージを受信できた。
「送信履歴は1年半前、今航行速度を落として、受信ガがジェットを展開して受信中です。」
「でも、かなり久しぶりだね。もう届かないものだと思ってたよ。」
「理由は分かりません。今までの航行中、トラブルも何もなしです。
逆に言えば通信が悪くなる理由もなければ、よくなる理由もありません。」
「ま、何にせよ、久しぶりに二人の声が聴けるのは何よりだ。」
「よし、これで、イケるはずデス!」
双葉が欠損した部分を修復し、ノイズ混じりだが、再生が始まった。
「えっと久しぶり、半年ぶりかな、ごめんね、今までこっちでバタバタしてて、連絡がつけられなくて、今日は、というか最近は私たちキャンプにはまってて、それで外からの通信になるけど、私たちは元気です。
ごめんね、たぶんまたしばらく通信が出来なくなるし、
まだ届く距離にいるかどうか分からないけど、
私たちの事は心配しないで、二人は、真っ直ぐ地球だけを目指して、頑張って、
私、二人なら、地球に行けるって信じてるから、、、、、、
それじゃ、また連絡するね。」
スイレンからの通信は短く、今までの通信とは明らかに雰囲気が違っていてとても元気とは思えなかった。
「、、、、どう思う。」
「どうって、それは変な感じでしたね。スイレンさんの表情もなんだか、すごく疲れて無理してるって感じだったですし、何より、なんか遺言みたいなそんな印象です。」
「、、、、、」
考え込むアレックスと、不安がる双葉の前に、続けて別の映像が再生し始める。
「、、、、これでいいのか、今朝少し改造させてもらったけどで、僕の考えではこれで
今君たちのいるところまで通信が飛んでいるはずだけど、実証を取れていない僕の頭の中の理論に基づいていじらせてもらって通信しているから、何とも言えないな。
全く物理法則に従っていない代物は僕は好きじゃないな。
でも、ま、僕がやっているんだ。きっとうまくいっているはずさ。
さっき、スイレン君が通信を送ったと思うけど、勘のいいアレックス君なら違和感に気付いているはずだ。
端的に言おう、僕たちは今窮地に立たされている。
君たちの存在が政府にバレた。
僕は政府に一切君たちの事を口外していないし、技術一つ彼らには引き渡していない。
つまりは僕の独断で君たちに特権を与え、僕の個人的興味で、君たちを観察していたに過ぎない。
だが、どうやら、先生君並みの頭脳を持ち、
僕以上に勘のいい存在が政府の側に現れたようだ。
僕の隠ぺい工作は完璧さ、おそらく君たちに関する情報を同じ不適合者の塵芥とある無価値な情報とも言いたくない個人の私的分文書の中から君たちの変化に気付いたんだろう。
君たちは最後の方は結構派手に動いていたからね。
そんなわけで君たちの事の存在に気づき、セキュリティーを突破し、情報を奪われた。
もちろん、すぐに対応したから、重要な技術は奪われていないが、僕は一切の特権を剥奪され、追われる立場になった。
このままだと遅かれ早かれ、僕たちは、殺される。
僕はいいすべては覚悟の上だ。望んだ僕の結果だ、後悔もないにもない。
だが、先生君とスイレン君は違う。
彼らには未来がある、これからが彼らの本当の幸せだ。
最近、スイレン君は僕以上に人間味を持ち合わせたようで、結婚なんて法的拘束契約に憧れを抱く程だ。
だから彼らには僕を放っておくように言った。でも彼らはいう事を聞いてくれなかった。
全く不快な存在だよ、こっちの善意も、意図も全部無視して。
だから、二人の事は君に頼む。
無理は承知だ、かなわぬ願いだとわかっているが、あいにく僕は祈る神様はいないから君に願わせてくれ、二人を助けてやってくれ。
あの二人には何も罪はない。
僕が世界を壊そうとしてやった、世界を開放しようとした結果だ。
僕に、あの二人を助けすすべはないし、本気になった政府に相手にあの二人を守れる存在も知らない。だから頼む。二人を助けてやってくれ」
「グロリアさん、、、が本気で頭を下げるなんて」
「変わったんだな、彼も、、、変えたのは二人か、、」
「アレックスさん、どうしますかこの通信が送られたのは1年半前、少なくとも今現在それだけの時間が経過し、ここからどんなに急いでも戻るには3年かかります。
つまり、このメッセージから4年半です。
しかもこちらは光速に近い時間で移動しています。時間差はそれ以上です。」
「4年半か、、、無事を期待して、戻るには遅すぎるな。」
「でも、、、、」
「あのさ、スイレンからもらった手紙に、僕の帰る場所はこの惑星だから必ず戻って着てって、書いてあったんだ。
でも俺にとってあの惑星が帰る場所なんかじゃない、スイレンと、先生がいる場所が俺の帰る場所なんだ。
失うのは怖くないだって、怖いに決まっている、俺にとって二人は、特別な存在だ。
無駄だとわかっていても、それでも僕は行かずにはいられない。ごめん、双葉。」
「構いません。やれることをやりましょう!」
「あぁ、双葉、約束守るの少し遅れるけど、ごめん。二人とも無事でいてくれ、今すぐ全速力で全力で戻るから!双葉、すぐにショートワープの準備を、」
「いいえ、ショートワープは使いません。超長距離ワープを使います。それであれば大幅な時間の短縮が可能です。」
「でも、超長距離ワープは今の船の出力じゃ無理だ。前にも一度試したじゃないか」
「私がいれば問題はありませんよ。」
「ダメだ。それじゃ、双葉は、」
「全力でやるといったはずです。大丈夫、この程度の距離耐えられます!最速で、でしょ」
双葉の動力を使えば超長距離ワープを使う事は出来るだがそれは、純粋に双葉の命を削る事。
本来のこの船の性能を生かす事が出来るが、それは最初から選べない選択肢だった。
それでも双葉は問題ないと、自分から万が一に備え先生に作ってもらった特別動力室に向い、自分自身の体を宇宙船につなぐ、その姿は普段から想像できず、彼女が機械である事を思い出される。
「本当にいいのか双葉」
双葉のその姿に心を痛めながら、アレックスがモニタ越しに尋ねる。
もちろん、それはありのままの双葉なのだが、
その姿が、彼女の命を削るという意味を視覚として表わしているように思えた。
「はい、いいですか私の事は気にせず、全力でやってください。
無理だったら私から言います。だから、それまでは一切緩めないでください。
それから超長距離ワープは今までと異なり、ワープ空間を認識できるかと思います。
ワープ空間ではとにかくまっすぐ、ナビゲーションに従って進んでください。
その際、ダイレクトリンクで、帰れる場所をイメージしてください。
亜光速航行同様にアレックスさんに負荷がかかる可能性があります。
危ないと思う前に必ず中止してください。
それでも、超長距離ワープであれば、ダイレクトリンクを使用した方がより直接目的地への距離が縮まりますし、その方が、ナビの精度が上がると思います。」
「了解した。それじゃ、行くぞ」
「はい」
アレックスは意識を集中し、ワープ空間に突入する。
気分が悪くなる感覚がずっと続き、景色は見えないが、その感覚がワープ空間なのだと理解できた。
だが、今は気分が悪と、そんなことを言っている場合じゃない。
ただひたすらに、スイレンの居る場所へ、スイレンを助けたい。
無事でいてくれ、待っていてくれ。ただそれだけをお願い続ける。
そんなアレックスに声が聞こえてくる。それは双葉の声、2人の無事を願う双葉の声、、
「そうか、この船とつながっているのは僕だけじゃないのか、」
双葉の痛みが伝わってくる。体を軋む、それでも双葉はずっと我慢をしている。
ここで手を緩めることもできる、でも、双葉は限界がいたら自分で言うと、
だから、アレックスはその双葉の覚悟を受けて何も言わず、ただひたすらに願う。
スイレンの無事を、スイレンの事を、ただそれだけ、ひたすらにそれだけを、、、
そして上も下も、自分も宇宙船も何もかもが分からなくなる空間の先に光を、
スイレンの笑顔を思い浮かべ、そしてほどなくワープ空間を抜けた。
映像が復旧した目の前には自分の居た惑星が見えるそれほどまでの距離まで近づいていた。
設定していた超長距離ワープは1回でこの星につけるものではない、ただ方向を示しただけだ、なのにただ一回で、こんなに近距離にたどり着いた。
「ついた!時間は、いやそれより、スイレンと先生のデバイスの反応は、、、、
あった!まだ生きてる!双葉!」
「、、、、、」
双葉に呼びかけるが返事がない、モニタも死んでしまって映らない。
「双葉!双葉!」
「、、、すみません、流石に少し疲れたみたいで、、、ちょっと休ませ寝てもらいます。
アレックスさんは早くお二人の所へ、第3格納庫にダイレクトリンクで操縦できる人型フレームの兵器があります。あれであれば大気圏の突入脱出もできますし、戦闘にも向いています、状況次第で必要になるかと、それを使ってください。」
「でも、」
「いいから急いで」
アレックスは躊躇は時間の無駄と、双葉の言葉に従い走り出す。
「、、、ヤバいなこれ、、、うまく制御できないや、、どうしよう、、、とりあえず、何とか、出力の制御をしないと、、、このままじゃ、この部屋から出られないよ」
双葉の体は熱を帯び髪の毛も全身も赤熱化している。
昔の彼女自身あればすぐに出力を下げて通常通りに戻ることが出来たが、
機能不全に陥っている彼女の体はうまく自分自身を制御することが出来ない。
主力が下げられず、体の構造にも修復不可のダメージが蓄積されていく。
「どうしよう本当にまずいな、お願い、何とか、、、何とか。」
双葉は自分自身に絶対零度の冷気を浴びせ何とか温度を下げようとするが下がらない。
仕方がないと、自分の体に手を入れ、力場を発生させ、無理矢理、動力炉を力でねじ伏せようとする。力だ力を捻じ伏せる、それも自分自身の体の中で、
防音扉越しに聞こえるほどの悲鳴が宇宙船に響き渡る。それでも、このままでは、この宇宙船さえも壊しかねない。何としても、それだけは、、、たとえ死ぬ事になっても、、
一方、アレックスは、デバイスの反応を頼りに、スイレンたちの元に向かう。
向った先は自然保護地区それもグロリアのいた場所からは遠い。
大気圏に近い高所にいるアレックスには下方の雲の隙間に見た事もない艦隊が見える。
それはどう見て政府の船であろうが、この時代に戦艦がある事も、重力下で運用可能な技術がある事も知らなかった。
彼らの目的地もスイレンたちであろう、3人の人間相手に向ける戦力ではないが、
グロリアから政府を知ったアレックスからすれば、それも納得できる。
気づかれていない状況では不意打ちが出来るが、今は彼らに見つかり無駄な時間をかける訳にはいかない。アレックスは高度さらに上げ、索敵される可能性がなくなると、動力炉がオーバーロードのギリギリまで、加速し、彼らを引き離す。
10分後、高度を落としたアレックスが、デバイスの反応地点をカメラの望遠で確認できる距離に迫ると、そこに見えたのは、広範囲火の手と軍用のロボットだ。
「見えた!」
アレックスは、加速したまま長距離から、ダイレクトリンクでロックオンし、軍用ロボットを狙撃し、勢いそのままに特攻しスイレンたちの居場所に落ちそうになる敵の残骸を吹き飛ばす。
「スイレン!先生!」
スピーカー越しに生身にきつめの大声で呼びかける。
「その声、アレックスなの!なんで!」
「助けに来た!無事で何より、」
アレックスは二人の無事を見て安心し、ゆっくりと二人の近くに着地する。
「再会の挨拶はいいが、急げ、すぐに次が来る。」
グロリアが緊張感が緩んだアレックスに喝を入れる。
アレックスは搭乗機の掌に二人を乗せる。
「グロリアも早く!一緒に行こう!」
先生とスイレンはグロリアに手を差し伸べる。
だが、グロリアは笑いその手を掴むことなく、その場から離れようとする。
「僕が行くわけないだろ、さ、早く行くといい」
「何言ってんだ早く!」
「僕は君たちさえ、いなければ何とでもなるんだ。
それに僕はこの歪、違和感にあふれたこの世界が好きなんだ。ここで僕は生まれた。
そして今の状況、この変革もまた僕が望んだ結果だ。」
「何馬鹿のこと言ってるのよ、死んだら何にもならいんだよ!」
「死ぬ気なんてないさ、死にたいのなら自分で勝手に死ねばいいだけの話、
これが僕の望んだ世界、誰の意思でもない、僕の意思だ。」
「本当にいいのか?」
「アレックス!」
「あぁ、ご苦労だったね。二人を引き取りに来てくれた事、礼を言うよ、」
「そうか、分かった。ありがとう、このことを教えてくれて。」
「アレックス!見捨てるつもりか!」
「先生、そういう事ではないんだよ。邪魔をするな、それだけの事。
通信の件は、利害が一致しただけの事さ、、、最後に聞いておきたい、スイレン君、先生君。
僕の事を恨んでいるかい?」
「、、、恨んでなんかいないわよ。でも、自分の命を粗末にしたら許さないから」
「僕は今でも、君の事を一番の親友だと思っているからな!だから」
「でも、だよ。先生君。不思議に思うだろう、僕は何の後悔もしていない、そして今僕は生まれて初めて満たされている。自らの意思で行動した結果、何気にすることはない。さぁ、行きたまえ、君たち4人そろえばこの宇宙から出られるはずさ。
思いを一つに、願いは時も次元も超えていく。
君たちの旅の無事を祈っておくよ。」
アレックスは二人をコックピットに導くと、急ぎ宇宙船へと向かう。
双葉が容態も気になるし、この状況では宇宙船をこの星の周りに止めておくのも危険だ。
「、、、、行ったか。」
グロリアは見えなくなった。先生たちの向かった空を見上げる。
空を眺めて30分ほどすると視界を遮る巨大戦艦の艦隊が現れる。
「全く、人間一人相手に大仰な事だ。」
「、、、やぁ、君がグロリアかい?」
旗艦と思われる船から声が聞こえる
「、、、顔くらい見せたらどうだ、君が僕の後任か?」
「そうだよ、君のような出来損ないとは違う、この星の真の支配者
全く、紛い物の人間なんかに影響を受けて、堕落するとは。」
「影響を受ける?この僕が?笑わせてくれる。
紛い物でなんであれ、僕は僕の興味のある存在だけにしか興味がない。
先生君も、双葉君も君よりずっとそういう存在だった。
だから僕は興味を持ったそれだけだよ。
君の語る人であろうがなかろうが、だからなんだっていうんだい。
君の言う人であれば僕を楽しませてくれるのかい?
でも残念、僕は君には興味がない。君が真の支配者?違うね。機械にとって都合のいい、おもちゃの為のおもちゃだよ。でも、そんなおもちゃでも僕は一応魂はあると思うんだ、一寸の虫にも五分の魂、君のような存在でもそんな一寸の半分の一毛程度には魂はあるかもしれないだろ。僕は慈悲深いんだ。今すぐ消えれば、見逃してあげるよ。」
「見逃してやるだと、状況を見て言え」
「状況を見るのはそっちの方だ。僕が君たちにそこまでさせる知識を持ちながら何もしていないとでも思ったのかい、僕がこの世界の政府の中枢にアクセスできる立場で何もしていないと思ったのかい
全ては想定内、
唯一の想定外の制約がなくなった今、僕を縛る物は何もない。
君たちとの茶番は楽しかったけど、やっぱりそれでもこれが僕の本質さ」
グロリアが指を鳴らした瞬間、戦艦のコントロールを一瞬にして奪われ、空を飛ぶロボットたちは次々に機能を停止し、墜落していく。
「な、何なんだこれは?」
「簡単な事さ、すでに政府のシステムなど僕の手中にあるそれだけの事さ。
君の船を落とさないのは君への慈悲じゃない、それが落ちれば、川は汚れ、空気は汚染され、何より多くの花がその命を奪われ、動物たちの住む場所が奪われるだろう。
だからゆっくり死んでいくといいよ、その戦艦は間もなく、大気圏外に進路を向け、徐々に恒星向かって進んでいく。それは僕も想像できない体験さ。楽しむといい
ところで準備が遅いぞ、アイザック、トーマス」
「無茶を言わないでくださいよ。これでも急いだんですから、演出にこだわり過ぎです」
「それにこんなにぎりぎりになったのは、グロリアさんが二人に気を使ったからでしょ。」
「気を使ったわけじゃないさ、この光景を見ればあの二人はうるさいからね。
祖より全ては順調かい?」
「はい、現在、僕たち調生体のコミュニティーも、グロリアさんたちの同族のコミュニティーも順調に機能停止しています。後数時間で、政府という存在はこの世から復旧できず、消え去ります。
同時にグロリアさんの語る世界の真実(笑)も配信中です。既に7割以上の人間が釘ズケです。」
「笑いながら言うんじゃないよ。事実を知るというのは大切な事さ、痛みや怒りは必要さ、そして何より絶望が人間には必要なのさ」
「でも本当によかったんですか、人がかなり死にますよ。」
「だったらなんなんだい?弱いものは死ぬそれは自然では当たり前の事だよ。世界を維持するには常に変わり続けなければならない。
それを拒絶し、嘘で塗り固めた世界なんかつまらないだけだよ。」
「残酷なものいいですね。」
「残酷な物言い?なら君たちを不適合者と判断し、その才を殺し、ただ自分の都合のいい人形だけを増やす世界を君は是とするかい。」
「それは、拾ってくれた事には感謝してますけど、まぁやり過ぎだってことです。」
「1の犠牲に成り立つ100の繁栄など無価値だよ。それは完璧なシステムではなくもっとも醜く愚かな社会さ、止まった進化の針を進めるそれだけの事だよ。」
「とにかく、もうそろそろ、迎えがつきますから、しばらく大人しくしておいてくださいね。少なくともあなたはこの星始まって以来の極悪人だ。」
「な、何をしたグロリア、何をたくらんでいる!」
「今から死ぬあなたに話してもしょうがないでしょ。
こんなつまらない世界を変える、人の世はいつだって混沌だ。
既にこの世界の創世者はこの星になく、これからは僕たちが作る世界だよ。
老害の標はされ、傀儡の人形は燃え落ちろ。
人はいつだって絶望の中から強くなる。希望は最も苛烈な絶望を含みからこそ希望なのだ。
さぁ、始めよう。世界を変える戦いを、」
グロリアは辺り一面を火の海にして笑う。
これが彼の本質、決して変わる事のない彼の真価。
もはや彼を縛る鎖はない、彼を受け入れる安寧はない、
彼を思うものはない。それでも、それは彼が望む世界、これが彼の求めるべき世界なのだ。




