新生活
アレックスが旅立ち1週間後、先生と双葉は、新たな生活の場所としてグロリアの家のすぐ横に4人で暮らしたコンテナハウスをそのまま移動させていた。
一度空にした家の中にはほとんど物がなく、何かとグロリアの世話になっている状況だ。
もちろん、わざわざ引っ越すことなく、スイレンの畑の傍で暮らし続けることもできた。
だが、新しい関係、新しい生活を望む二人にとって、あそこには4人の思いが詰まった場所、あそこに居続けたのではいつまでたっても、前に進めない。
その為の移住、グロリアの家のすぐ近くに引っ越してきたのは先生の希望だ。
「、、、、、、何をしている?」
先生とこれからの事について話をするため家を離れていたグロリアが、家に戻ってくると当たり前のようにキッチンで料理をするスイレンに対して悪態をつく
「料理よ、見ればわかるでしょ。」
「そうではなくてここで、なんでそんな事をしているのかと聞いているんだ」
グロリアはなにかと世話を焼きたがる言葉の通じない強引なスイレンの干渉にうんざりしており、明らかに嫌な顔をし、彼女を見る
「あなた好意でお世話になっている以上、これくらいはさせてもらうわ。
それにまだ私たちの家、ほとんど物がないし、ちゃんと料理をしようと思ったから、ここを借りるしかないでしょ。何怒ってんの、カルシウム足りないんじゃないの、まぁ、今日はスイレンちゃん特製の牛乳たっぷり、シチューだからちゃんと食べてね」
「ちゃんて、自分でちゃん付けして呼ぶような年じゃないだろ、それに僕は牛乳は嫌いなんだ。あれは小牛のためのものだ。成人した人間が飲むものじゃない。」
「あなたが怒ってたから、和ませててあげようとしただけじゃない、」
「僕は馬鹿にされているのかと思ったよ」
「それは見解の相違ね。」
「、、、僕は誰かに干渉されるのが嫌いなんだ。出て行ってくれ、
確かに君たちの居住を許可して、自由に出入りしても良いといったが、これは予想外だ。
設備に不備があるのなら、今すぐにでも手配しよう。」
「別にいいわよ。ここ隣だし、私も、あなたの事は嫌いだからお互い様よ。」
「お互い嫌いなんだ。互いに不干渉、それでいいじゃないか、」
「あなたの事は嫌いだけど、あなたの事が心配なのよ、それに私、3人分つくるのがなれているの」
「君は双葉君が来てからは4人分作っていただろ、、、」
「、、、、まぁとにかく、食べましょ。グロリアさん好き嫌いないでしょ。」
人の話を聞きそうにないスイレン。
「分かった、僕の分は置いてくれていれば、後で食べておくよ。」
「ダメよ。ご飯は暖かいうちにみんなで食べる物なの。
それはあなたもよく分かってるでしょ。まったく、あなたは偉そうに言う割にはそんなに他人のお世話になるのが嫌いなの」
「当たり前だ。僕は誰の世話にもならない。」
「それがよくないの、そうやってずっと一人でいるからあなたはずっとカリカリしてるのよ。いい、人から世話を焼かれるのにも慣れなさい。」
「、、、、、無駄な事を、、、」
「無駄かどうか、決めるのは早いわよ。さ、まずは食べましょう。あ、それから私、先生の彼女なんだから手を出したら駄目だからね。」
「誰が、、、というか君、彼女という割には先生という言い方はないんじゃないか?
彼にはアルベルトという立派な名前があるんだ」
「え!なにそれ、私知らないわよ。そんな名前、先生!私、先生の名前聞いてない!」
「おい待て、、、まったく、火も消さずに、何を考えている、、、、、意外とおいしいじゃないか、」
グロリアはスイレンの作った料理をつまみ食いする
「まぁ、いい、どうせすぐに嫌になってでていく。それまでは楽しませてもらおうか。」




