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君の選択、僕の決断(後)

今日は旅立ちの日。天気は雨。

予告されない想定外の自然発生した雨が、宇宙港にも降り注ぐ。

激しい雨で軌道エレベーターが止まる事はないが、この珍しい雨のおかげで、せいかで、いつもは人であふれる宇宙港の人はまばらで、静寂の中、機械音と雨の音があたりを満たす。

スイレンは突然の雨でぬれながら、約束の時刻に遅れて現れ、開口一番

「アレックス、双葉、ごめん、、、、私行けないや、、」

笑顔で唐突にそう告げた。

「スイレン何を?」

「いきなりってわけじゃないの、でも言えなかった。こんなギリギリのタイミングになっちゃった。ごめんね」

突然の言葉にアレックスも双葉も反応することが出来ない。

その表情を見てスイレンは明るく笑うことをやめた。

「、、、、、私、先生と一緒に残る、、、私に地球は遠すぎる。

それにね、分かったの、私はアレックスみたいにはなれないって、いつだって暗闇に、自分を信じて前に進めるわけじゃない。私ね、やっぱりこの世界が大好きなんだ。

嫌な事や納得できない事はあるけれど、それでもここを離れてたどり着けるかもわからない旅をする事なんてできない。」

ひきつった表情でつらそうに笑う。そして沈黙の後に、エレベーターの出発10分前を告げるアナウンスが終わると、アレックスも笑い口を開く

「、、、自分で考えた結論なんだよね」

アレックスの言葉にスイレンの頭の中に、先生の顔がよぎる

「うん、」

「、、、、、そうか分かった。」

アレックスは笑顔で了承する。

「、、、一緒に来いっては言ってくれないんだ?」

感知型のアレックスでさえ、雨と機械音で聞こえない程小さな声で、スイレンがつぶやく。

「ん?」

「ううんなんでもない。」

スイレンもなにかが吹っ切れたように、本当の笑顔で答える

「私を必要としてくれる人の傍でなんでもない日常を過ごしたい。そう思ったの、

私ね、先生と一緒にしばらくグロリアさんの所で暮らそうって思うんだ。

これからどうするかは、二人でゆっくり考えようって。」

「そうか、」

スイレンは寂しそうな目で、アレックスを見つめ、そしてもう一度笑う。

「最後にこれ手紙、、もし通信が届かない場所にまで行ってしまったら読んで」

「あぁ、分かった。」

「体には気を付けて」

「うん、」

「じゃあね。今までありがとう」

「僕の方こそありがとう」

アレックスは笑顔で見送るスイレンを残し、軌道エレベーターの個室に乗り込む。

「アレックスさん、スイレンさんたぶんアレックスさんの事」

「あぁ、好きでいてくれたんだよね。分かっているよ。そういう感情、与えられてなくても分かるんだ。これが好きだってことなんだった。」

「好きって事、、じゃあアレックスさんも、スイレンさんの事を、だったらなんで!」

「好きな人を危険な事には巻き込みたくない。一緒に来い、なんていないよ」

「さっきのスイレンの言葉聞こえていたんだんですか!今からでも遅くありません!アレックスさんも残るべきです!地球へは私一人で行けます、行ってみせます。」

「嘘ばっかり、暗闇で一人っきりは嫌だろ。それに僕は大切な人と一緒にいるより、自分の夢を選んだ。スイレンには僕よりふさわしい人がいるだろ」

「そんな、そんなの辛すぎます。」

「それでも僕が選んだ事なんだ。僕は宇宙に行く。星の海を、外の世界を、僕は仕方がなくそうしてるんじゃない、それしかできないんじゃない。

僕は選んだそういう事だよ」

双葉の説得むなしく、アレックスは全く揺るがず、強い意志であり続けた。まるで双葉見えないかのように、必死の言葉がBGMであるかの様に、アレックスは宇宙船に乗り込むと機械の様に振り返る事もなく、ためらう事もなく

ただひたすらに先生が示した一番可能性の高い方向に向かって進んでいく。

その様子に双葉も時間の無駄だと、アレックスに『馬鹿』と言い残し、操舵室から離れる。

一人残されたアレックスは、双葉がいなくなったことを確認すると、懐から手紙を取り出す。それは通信が届かなくなってから読むように言われた手紙。

スイレンとの約束を破るのはこれが初めてだ、そして手紙をもらう事も、

手紙に書かれていたは、スイレンの気持ちだった。

『あなたがこれを読んでいる頃、もう私たちとは違う時間を生きている事かと思います。

どれだけの時間が経ちましたか?

これを読んでいるという事はきっと一緒に来いとは言ってくれなかった事だと思います。

もし、そう言ってくれたのなら、私は私を待つ先生を裏切って、あなたについていくつもりであなたにお別れを言いに行きました。でも、そうはならなかった。

私は先生と一緒にこの星で生きていきます。

私の事を必要としてくれる人の傍で、私は生きていたいと思います。

それが今の本当の気持ち。

でも、あなたが好きだという気持ちも本当の気持ちです。

ねぇ、アレックス、私ね、あなたの事を男の人としてずっと前から好きだった。

変よね。私たちにはそんな感情あるわけないのに、

でも、それでも私の本当の気持ちだって思うんだ。

そんな私の気持ちなんか少しも知らないで、アレックスはどこまで、暗闇を進んでいく。

それでいいの、それがアレックスだもの、

そんなあなただから私は好きになった。

絶望の中でも、どんな状況でも、前にだけ進んでいく。

だからね、アレックス、何十年たっても、いつか地球を見つけて、宇宙を旅して、満足したら、ここに戻ってきて、双葉さんにとって、地球が帰る場所なら、

この星がアレックスの帰る場所だから、必ず帰ってきて

それまでにね、私には叶えたい夢があるの、いつかの未来、遠い遠い先の未来、

私たちの後に生まれる命の為に、私は花でこの星をいっぱいにしたいの、

アレックスが戻ってくる頃には難しい話はよく分からないけど、時間の流れが違うから、わたしは生きてはいないかもしれないけど、あなたに見せたい世界はきっと続いていると思うの、だから、ね、私は私の一歩を踏み出します。私はこの星を変える。

それが私の夢。だから必ず、帰ってきてください。約束だよ。』

アレックスは、何度も、何度も繰り返しスイレンの手紙を読む。

「あの、アレックスさん。そろそろ、夕方です、夕食何がいいですか?、、、どうしたんです慌てて」

集中して、双葉が操舵室に戻ってきた事にも気づかず、呼びかけられ、初めて気づき、慌てて手紙を隠す。

「なんでもない、それより、どうかしたしたの」

「、、、、夕食何にしますかってさっき言いましたけど、」

「ごめん、、、ポケッとしてて気づいてなかった」

「、、、、、、目、赤いですよ。」

「、、、、、人を好きになるってつらいね。」

双葉はアレックスが椅子と手の隙間に隠した手紙を見つける

「見たんですか手紙。」

「うん、気になって」

「はぁ、だから言ったんです。泣くくらいなら、自分の気持ちに素直になるべきです。

どうします。戻りますか?」

「戻らないよ、僕は進むよ。それで必ず地球を見つけて、必ず、帰るんだ。」

「本当にそれでいいんですか?」

「もちろん、僕は迷わないよ。行こう双葉、そして早く見つけよう君の帰る場所を、僕の夢の世界を。」


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