表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェル・アルム刻記  作者: 大気杜弥
第二部 “濁流”
61/111

第三章 中枢、動く (一)

一.


 時はやや遡る。

 七月一日。一年の後半期の始まりであるこの日は、物忌みの日とされ、冠婚葬祭全てが禁じられている。

 人々が忌み嫌うこの日、事件は起きた。


 アヴィザノを中心とした南部域に住む全ての人々が、それまでとはまったく別の言語をしゃべるようになったのだ。今まで使っていた言葉とは相容れない奇妙な音が、突如言葉として認識されるようになった。

 古事に長じている者は口々に、

[この言葉は、神君が世界を統一する前に我々が用いていた、失われた言葉だ]

 と語った。

 しかし、なぜ今の我々が突然その言葉を使えるようになったのか、との問いには、彼らも答えられなかった。

 頻繁に出没するようになった化け物。そして失われし言語の突然の復活。今までの常識が次々と破られたことで、人々の精神は大きく揺さぶられた。この日一日だけでどれほど多くの者が精神に異状をきたしたか、定かではない。

 ともあれ、フェル・アルム南部域は突如混乱に陥った。


 ほどなく、ある噂がどこからともなく流れるようになった。

「フェル・アルムに妬みを持ち続けているニーヴルの亡霊達が、世界を混乱におとしめるため、自らの忌まわしい力を解き放ったのだ」

「ニーヴルの残党どもが、怨霊達の力を手に入れ、世界に復讐しようとしている」

 などなど、それらの噂は、何かしらニーヴルと結びついたものであった。

 なぜ? どうして? と答えを求めて苦しんでいる人々は、一斉にこの根も葉もない噂を信じ、翌日にはニーヴルが全ての元凶である、との考えが人々の間に浸透していった。これが唯一の常識、疑うこともない真実であるかのように。

 本当の原因などどうでもよかった。自分達の置かれた状況を正当化する口実が欲しかったのだ。底知れぬ不安を少しでも取り除くために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ