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フェル・アルム刻記  作者: 大気杜弥
第一部 “遠雷”
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第四章 真実の断片 (二)

二.


『親愛なる ディドル様、ナッシュ家の皆様


 この突然の旅立ちをお許しください。

 私ことティアー・ハーンのみならず、あなたがたのご子息ともいえる存在のルード君を連れて行くことをお許しください。

 あまりに勝手な行動であることは重々承知しておりますが、いずれは私達は旅立つつもりでいたのです。数日前起きた、例の神隠し事件に始まる一連の出来事の謎を解き明かすために。

 旅立つということは、以前にルード君とともに決断していました。ルード君の強い願望だったのです。

 ではなぜ、このように唐突に旅立たねばならなかったというと、あの事件の謎を付け狙う人間がいる、ということにほかなりません。ことはあまりにも大きかったのです。

 それがために、あの事件の核となっている人物、つまりルード君とライカさんの所在を知られないようにしておかねばならない、それも急がなければと思い、別れを告げずに立ち去らざるをえないかたちとなったのです。

 その人物はもうすでに近くまで来ています。

 まことに勝手きわまりなく、またあまりに説明が足りないとは思いますが、ルード君とともに旅立ちます。


 皆様の健康を祈って


      ティアー・ハーン


 追伸 まもなく、この高原に旅商の身なりをした男がやってくるでしょう。中背で無精髭をはやした、気さくそうな人物です。しかし、ルード君のことを訊かれても、何も答えないでください。どうかお願いいたします。』






[勝手なことを!]

 と憤慨している父親からハーンの手紙を受け取って、ミューティースは自分の部屋でそれを繰り返し読んでいた。ぱさり、と手紙を机の上に置き、ひとりごちた。

「あたしは信じてみるよ、ルード……。君って、昔からどこか不思議な感じのする子だったから。それに、君自身が災難を起こしたのとは違うってこともね。行かなきゃならないところがあるのが分かったから出かけたんだって……信じてる。でも……ちゃんと帰ってきてよ……」

 ルードにとって姉のような存在であるミューティースは、ルードの考えに任せることにしてみた。

 ルードは彼自身の道を歩もうとしているのだ。

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