奈々の異変
翌日。水曜日。
美桜は一人で奈々の家へと向かった。
奈々に会いたい。あの弱気な奈々が、今では強い心の支えになっていた。
ガチャ。
「すいませ~ん。おじゃましまぁす」
インターホンを押すこともなしに、美桜は宮園家のドアを開いた。
すぐに、奈々の母親が顔を出す。
「あれっ美桜ちゃん? 奈々は美桜ちゃんのところに行ってるんじゃなかったの?」
「いえ、違いますが」
「変ねぇ。そういえばこのところ、あの子の様子が変なのよ」
奈々の母親は首をかしげ、呟いた。そして、美桜に向かって、語り始めた。
ことの始まりは、千里の葬式の日。葬式が終わるはずの9時ごろに、奈々は帰ってこなかったのだという。帰ってきたのは、それから約1時間半後の、10時半頃だったそうだ。
それから昨日。学校から勝手に、日曜までの休みをもらってきたのだという。
そして今日。千里を殺した犯人を捜すため、美桜の家へ行くといって出かけたそうだ。もちろん、美桜の家に奈々は来ていない。
…………
まさか。美桜の頭に、嫌な考えがよぎった。
千里を殺した犯人は、奈々ではないだろうか。
いや、違う。奈々は千里を殺せない。デパートアリアールに入れない。奈々の様子がおかしくなったのだって、千里が死んだ後だったし。それに……千里は……友達だもん。あの優しい奈々が、千里を殺すはずない。
美桜は心の中でそう思いながら、しっかりとうなずいた。
そして、奈々の母親に別れを告げ、家へ向かって歩き出した。
「……あれ?」
美桜の瞳に影がよぎる。その瞳は、さっき目の前を通り過ぎて行った、信じられないようなものを、いまだ残像として映し出している。
「奈々……何してるの」
そう、美桜の目の前を通り過ぎていったのは、少し青白い顔をしながら走っていく奈々の姿だった。
「きっと、帰るところなんだよね……」
美桜は自分に言い聞かせるようにそう呟くと、家へ向かって、駆け出した。




