冷たい色
数分後。
小岸刑事が公園へやってきた。どうやら電話は、小岸へかけたらしい。
小岸の後ろには、顔を真っ青にした皆崎勇人が立っていた。来美の死体を見て、気分が悪くなったのだろうか。
「彩島……これだから未成年の飲酒は……あれほど言ったのに」
小岸が怒りのこもった声で呟いた。小さなため息をつく。そして、普段の声で言った。
「ここへ来る途中、ビールの自動販売機を見かけた。おそらくそこで買ったのだろう。店だと、売ってくれないだろうからな。さぁこの事件は、自殺か事故か」
「それとも他殺か」
沙也の声が低く響いた。
小岸刑事は驚いた様子で沙也を見た。そして叫んだ。
「他殺のはずがない! だって、殺す人間は皆崎しかいないが、彼が殺したのなら真っ先に疑われるのは皆崎本人だ。そんな危険を冒してまで、皆崎が彩島を殺すメリットはどこにある?」
「どこにもありません」
沙也は冷ややかな笑みを浮かべた。
「メリットがないだと? だったら何故他殺だといえるんだ?」
「逆にお聞きしますが、何故自殺といえるのです?」
「何も自殺で決まりといったわけじゃない。事故の可能性だって充分にありえる」
「そうかもしれませんが、あなたは重大なことを見逃しています」
「え?」
小岸が怪訝な顔つきで沙也を見た。
「確かにこの来美さんの事件の犯人は--犯人がいるとしたら--皆崎さんではありません。しかしそれだけで、他殺でないと決め付けるのは早すぎる」
「どういうことだ?」
「犯人は別にいるという可能性が高いということです」
「それは誰だ」
「一般市民である私に、分かると思いますか」
沙也の瞳は、冷たい色をしていた。
美桜は怖くなった。
千里が死んでから、みんな変わってしまった。沙也も奈々(なな)も、そういえば詩織ちゃんも……あれから詩織ちゃん、すぐに死んでしまったけれど……
私も変わってしまったのかもしれないな。そんな考えが、遠くを見つめる美桜の頭をよぎった。
そして、もう一つの考えが、美桜の胸にじわりとひろがる。
……次に死ぬのは私かもしれない……
何故だか全然、怖くはなかった。




