捜査開始
美桜と沙也は、昨日と同じように、デパートアリアールについた。
日曜日なので、人手も多い。にぎわっている、という言葉がぴったりだ。
「沙也姉ちゃん、これから、何をするの?」
「詩織ちゃんの家に行ってみるの」
「何で?」
「千里ちゃんの死亡推定時刻の7時半ころは、まだ、デパートアリアールは開いてないのよ。だから、外部の人間ではないと思うの。きくところによると、詩織ちゃんのお父さんは、休日は家にいるらしいから、デパートアリアールで働いている人を教えてもらうの」
沙也はひといきで言うと、ふぅっとためいきをついた。
デパートアリアールの正面から左に回って、道を一本わたる。すぐそこが坂井家だ。
ピンポーン
沙也がチャイムを押した。
インターホンがピッとなった。
「はーい」
詩織の声だった。
「あっ、美桜ちゃんと沙也さん。今行きます」
インターホンが切れ、すぐに詩織が、玄関のドアを開けた。
「こんにちは」
詩織が愛想笑いをして言った。
沙也はにっこり笑うと、言った。
「昨日は、すぐに帰ってしまってごめんね。しかも、今日いきなりおしかけてしまって。詩織ちゃんのお父さんに、お伺いしたいことがあるの。お願いできる?」
詩織はこっくりとうなずいて、家の奥に入っていった。
しばらくすると、詩織が来て、言った。
「入ってきてください。父の部屋まで案内しますから」
美桜は、沙也が中に入ったのを確かめて、玄関のドアをそうっと閉めた。
二人は、詩織につれられて、坂井家の広い廊下を、どんどん進んでいった。
廊下のつきあたりの大きなドアの前で、詩織は立ち止まった。
コンコン
「お父さん、詩織です。お客様を連れてきました」
詩織がノックをして、言った。
「入りなさい」
低いがよく通る声が、ドアの向こう側から聞こえた。
詩織がドアを開けたので、美桜と沙也はお辞儀をして、「失礼します」と言った。
中に入って、詩織の案内で、二人は大きなソファーに座った。
数十秒の間の後、沙也が口を開いた。
「こんにちは。いきなりおしかけてしまってすみません。わたしは、こういう者です」
沙也は、いつ用意したのか、ポケットから名刺を取り出して坂井氏に渡した。
<私立探偵 大川沙也>
名刺には、それだけ書いてあったようだ。
坂井氏はていねいに名刺をしまうと、口を開いた。
「これはどうも。わたしは、坂井涼一郎と申す者です。今日は、何のご用件で?」
「わたし、昨日の、デパートアリアールでの事件の被害者の森上千里さんの、友人のこの子の依頼で・・・」
沙也は美桜を坂井氏に寄せてみながら、言った。
「今回の事件を調査しているのです」
美桜は、ちらりとドアに目をやった。詩織は、どこかへ行ってしまっている。
しばらくドアを眺め、美桜は沙也たちに視線を戻した。
いつの間にか、話が進んでしまっている。
「そうですか。わたしどもの店で働いている人といいますと・・・」
坂井氏はそういって、事務机の上においてあるノートパソコンをたちあげた。何回かマウスをカチカチやって、キーボードのキーを一つ、ぽんっと押す。ウィィィン。すぐに、パソコンの隣においてあるコピー機のような機械から、一枚の紙が出てきた。
「こちらの紙に印刷されてあるとおりです」
沙也は紙を受け取ると、
「どうもありがとうございます」
とお礼を言った。
そして、用紙を眺め始めた。




