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秋雨  作者: アレックス
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1-8 本社での仕事

 木曜日の朝に大阪の本社から緊急の電話が林のところに入った。上海の工場で品質問題が発生して緊急のテレビ電話をしなければいけないが、同時通訳が足りなくて林のところに応援を頼みに来た。林はすぐさまに電車を乗って本社に向かった。本社に着いたとき、テレビ電話がすでに始まっていた。

 佐々木常務と佐野中国総括部長をはじめ、中国事業部の社員など会議室の中に十人以上いて、中国の現地社員とテレビ会議をしていた。佐々木常務と佐野部長の横に専属通訳、女性の王さんがいた。王さんが林の先輩、典型的なキャリアーウーマンで素早く同時通訳をこなしていた。入社してから何度か会ったことがあって彼女から色々とアドバイスをしてくれた。中国事業部の日本人社員の横に通訳が付いていて、みんな緊張した面目で会議をしている。一方、国内営業部の木村部長と国内営業1課の中川課長がじっと資料を見ていただけで、会議の議論に参加していない。

 林は木村部長の横に呼ばれ、席についた。

 「林君、よく来た。早速通訳してくれ」木村部長が林の到着が待ち遠しかった。

国内営業部の社員の説明を聞いてやっと状況を理解した。S社のある飲料が、日本では低温輸送が常識になっていたが、中国ではまだ常温で輸送されたせいで、中身のある成分が中国法律に決められた含有量より多く検査された。その理由が製造段階にあるのか、それとも常温輸送のせいか、まだはっきり分かっていない。

説明を聞いたあと、林がすぐに同時通訳に取り組んだ。林の日本語能力がもともと堪能なので、まもなく木村部長が会議に参加ができるようになった。会議が昼間でいったん終了し、その後は対策のための資料制作に入った。その日、林が帰宅したのが十時回っていた。

 翌日も林は直接に本社に行き、テレビ会議で木村部長の同時通訳を担当した。この日の会議は2時間で終了した。品質の問題は中国での生産に使われた原水が日本の原水と異なった成分が含まれたことによるようだ。品質問題の原因が突き止められてみんなひと安心した。その後のことは品質管理部に回った。その日の資料作成を完了したのが午後五時ぐらいだった。

 「仕事がなければ職場に戻りたいです」林が木村部長に丁重に言った。

 「そうか、君のお陰様で仕事がうまく運んだ。ありがとう。今度また頼むよ」木村部長が目を細めて林を褒めた。

 「それでは、お先に失礼します」林は木村部長とその他の社員にそれぞれ一礼して本社を後にした。

林が職場に戻ったとき、すでに7時前だった。職場には社員がほとんどいなかった。林もメールを確認し、ちょっとした雑務をこなしてからすぐ帰ることにした。長雨がその日も降り続けていた。

 林が日本語飛び抜けた能力をもっていたとはいえ、同時通訳が想像以上に神経を削る仕事だった。行き着きの喫茶店で夕飯を食べた後はもう足も動きたくないほど疲れていた。アパートに帰り、シャワーを浴びた後、寝る以外何もできなかった。

 

 なお、この小説は著者自身のホームページにも載せています。是非、ご覧ください。http://alexlin.web.fc2.com/ 

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